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ワーグナー/オペラ「パルシファル」(2009年5月16日(土) サンパール荒川)

第一回ワーグナー音楽祭「あらかわバイロイト」
ワーグナー/オペラ「パルシファル」

2009年5月16日(土) 14:00開演(13:00開場) サンパール荒川

アムフォルタス 久岡昇(BR)
ティトゥレル 堀野浩史(BS)
グルネマンツ 若林勉(BS)
パルシファル 片寄純也(T)
クリングゾル 金努(BR)
クンドリー 池田香織(MS)
聖杯騎士1(合唱兼任) 柴田顕
聖杯騎士2(合唱兼任) 寺西丈志
小姓1 髙森ノリ子
小姓2 澤村翔子
小姓3(合唱兼任) 阿部修二
小姓4(合唱兼任) 飯沼友規
花娘Ⅰ-1 石井恵子
花娘Ⅰ-2 船津え莉
花娘Ⅰ-3 髙森ノリ子
花娘Ⅱ-1 丹藤麻砂美
花娘Ⅱ-2 柴田恵理子
花娘Ⅱ-3 澤村翔子
アルトの声 澤村翔子

管弦楽:TIAAフィルハーモニー管弦楽団
合唱:あらかわバイロイト合唱団
合唱指揮:佐藤一昭
指揮:珠川秀夫

演出: シュテフェン・ピオンテック(前ロストック国民劇場総監督)
公演監督: 田辺とおる
制作:片山孝調
美術・衣装: マイク・ハーネ(ロストック国民劇場主任美術家)

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とうとうヴァーグナーを聴いた。
普段2、3分で完結する歌曲に馴染んでいるせいか、長丁場のヴァーグナーをこれまで敬して遠ざけていた。
その長さにも増して、チケットの高額なことがますますヴァーグナーを私にとって縁の薄い存在にしていた。
しかし、「おらが街の小屋をめざす」という田辺とおる氏監督による「あらかわバイロイト」の公演はC席5000円という安価だったこともあり、チケットを購入して出かけてきた。

会場のサンパール荒川ははじめて行くホール。
雰囲気のある都電荒川線に乗り、「荒川区役所前」で下車して徒歩2分。

私の席は後ろから2列目だったが、会場自体がそれほど大きくないため、音響的にも視覚的にも問題なかった。
私のまわりは若干空席が目だったが、前の方の席はよく人が入っていたようだ。
第1幕1時間35分、第2幕と第3幕が各1時間だが、幕間の休憩は30分もあったので、意外と疲れずに聴くことが出来た(それでも第1幕の後半はうつらうつらしてしまったが。それにしても舞台上のクンドリは歌も重量級だが、眠っている演技をしている時間が多くて大変だなぁと思った)。

純粋無垢な愚者パルジファルが成長して、救済する存在になるというのがおおまかな筋。
「舞台神聖祝祭劇」と作曲家自身に名づけられたこの作品、宗教色が濃く、第1幕後の拍手はしないことが多いとのこと。
そのせいか、今日も第1幕後、しばらく間をおいてぱらぱらと拍手があったもののすぐに止み、幕が再び開いて出演者が勢揃いしているのを見て、ようやく客席全体から拍手が起こった。
ヴァーグナー最後の作品となった「パルジファル」は、バイロイトの劇場だけで上演されることを望んでいたそうだ。
パンフレットの解説に譜例も記されていて分かりやすかったが、やはりライトモティーフをあらかじめ知っておくと楽しめるんだろうなと思いながら聴いていた(客席は真っ暗でパンフレットを読むのは不可能だった)。
熱烈なワグネリアンだったフーゴ・ヴォルフはその影響を受けて半音階進行の目立つ歌曲を多く書いた。
しかし、「パルジファル」を聴いた感じでは思ったほどヴァーグナーの技法は半音階進行ばかりというわけでもなく、様々な手法の一手段として使用されているという印象を受けた。

歌手は、特に重要な役柄を歌った人は実力者を揃えていたように感じた。
何も外来の一流歌劇場に行かなくても、優れた歌唱を聴けるのだから素晴らしい。
なかでも老騎士グルネマンツを歌ったバスの若林勉は第1幕と第3幕でほぼ出ずっぱりながら、最後まで安定感を失わない素晴らしい声と表現力で最高に魅せられた。
この人の歌ったほかのオペラも今後聴いてみたいと思った。
同様に素晴らしかったのは、クンドリを歌った池田香織。
深みのある声と幅広い音域を通じてむらのない歌唱、美しいドイツ語の発音、それにほとんど演技のみの第3幕での圧倒的な存在感(もちろん第2幕での葛藤しながらもパルジファルを誘惑する演技力も)。
このオペラの成功の鍵を握る役柄と感じた。
アムフォルタスを歌った久岡昇も良く、声に込めた表情のきめの細かさは印象深い。
タイトルロールを歌った片寄純也はまだ若そうだが、後半に進むにつれて尻上がりに声に張りが出て素晴らしくなってきた。
今後が楽しみだ。
花娘たちは歌唱自体は声も良く出ていて良かったが、両腕を頭上でゆったり振る演技はパルジファルを誘惑するにしてはちょっとどうかなという印象。
これは演出の問題?
小さな役の歌手たちも、若手を積極的に起用して舞台経験を積ませようという田辺氏の思いが感じられ、歌手たちも精一杯つとめをまっとうしようとしていたのが好印象だった。
珠川秀夫指揮のTIAAフィルハーモニー管弦楽団はよく健闘したのではないか。
特に弦楽器群はしばしば美しいハーモニーを聴かせてくれた。

あまりにも奥の深いヴァーグナーの作品、まだまだ表面をなぞった程度の聴き方かもしれないが、これからも機会を見つけて聴いてみたいと思った。
でもやっぱり長かった!

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コメント

私も、池田香織さんのファンです。
クンドリにノックアウトされましたー。

投稿: operaview | 2009年5月17日 (日曜日) 01時42分

operaviewさん、はじめまして。
コメント、有難うございます!
池田さんのクンドリ、素晴らしかったですね。
歌手と女優の両立をほかのどの役よりも求められる難役だと思いますが、見事にこなしていて、感動しました。

投稿: フランツ | 2009年5月17日 (日曜日) 02時07分

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