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パーセル/しばしの間の音楽

Music for a while, Z. 583 no. 2
しばしの間の音楽

Music for a while
Shall all your cares beguile:
Wond'ring how your pains were eas'd
And disdaining to be pleas'd
Till Alecto free the dead
From their eternal bands,
Till the snakes drop from her head,
And the whip from out her hands.
 しばしの間の音楽が
 あなたのあらゆる心配事を紛らすでしょう、
 自分の苦痛がどうやって取り除かれたのか訝りつつ、
 喜ぶことを潔しとせずに、
 アーレークトー(復讐の女神)が死者を
 永遠の束縛から解放するときまで、
 蛇が彼女の頭から落ち、
 鞭が彼女の手から落ちるときまで。

詩:John Dryden (1631-1700) & Nathaniel Lee (1653?-1692)
曲:Henry Purcell (1659?-1695)

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パーセルの歌の中でもとりわけよく知られたこの曲は、もとはドライデンとリーの台本による悲劇「オイディプース王(Oedipus)」のための付随音楽(第3幕第1場)として書かれたものである。
その後「イギリスのオルペウス」という歌曲集の第2巻(Orpheus Britannicus, Vol. II)にも収められた。

落ち着いたゆったりとしたテンポで静かに歌われる音楽は魅力的だが、詩の内容をじっくり見てみると結構物騒なことを歌っている。
アーレークトーとは、エリーニュースという3人の復讐の女神のうちの1人で、頭髪が蛇で出来ていて、鞭で罪人を打ち殺すという。

劇の主役オイディプースは実の父をそれと知らずに殺し、王位についてからそれと知らずに実の母を娶り子供を授かった。
後に自分が父殺しの張本人であることを知り、自らの目をつぶして、放浪し、アテーナイで最期を迎えた。

ドライデンとリーの台本を見たわけではないので、上の詩がどの状況で歌われるのかは分からないが、おそらく最期を迎えた場面で歌われたのではないかと想像している。

パーセルの曲は、"eternal"(永遠の)という語を装飾しながら文字通り長く伸ばしたり、"drop"(落ちる)という語を休符をはさみながら何度も繰り返したりといった言葉に反応した歌のメロディが印象的である。

以下の2つの動画で魅力的な歌を味わうことが出来ます。

Philippe Jaroussky(Countertenor) Yoko Nakamura(Clavecin)
http://www.youtube.com/watch?v=JCrbTBEeiyQ

Sylvia McNair(S)(楽譜付き)
http://www.youtube.com/watch?v=WPdP4cDLomI

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参照:復讐の女神エリーニュースに関するwikipediaでの記述
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9

参照:オイディプースに関するwikipediaでの記述
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%97%E3%82%B9

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コメント

あ、それ知ってる。Drew Minter (シカゴのなんとかコンソートのカウンターテナー)でよく聞きました。Drop, drop, drop というところはほんとにぽたぽた落ちるみたいに歌っていておもしろかったです。頭に染みついた歌の一つです。
(あー、たまにまとも? なコメントが書けた!?)

投稿: Auty | 2009年4月 4日 (土曜日) 20時14分

Autyさん、こんばんは。
ご存知の曲で良かったです!
いつもコメント、有難く思っていますよ。
Autyさんはカウンターテナーをよく聞かれていますね。私はまだまだです。
確かにdropの繰り返しは歌手の聞かせどころで印象的ですね。

投稿: フランツ | 2009年4月 4日 (土曜日) 21時04分

フランツさん、今晩は。
パーセルの歌も好きです。
このカウンタテナーも良いですが、一昨年、近江楽堂で聴いた「ラ・スフェラ・ムシカーレ」というグループの演奏会で、パーセルの歌を7曲ほど取りあげてますが(ソプラノとカウンターテナーで交代に)マジッド・エル・プシュラというカウンターテナーの歌ったこの曲も、素敵でした。
その時のソプラノ、広瀬奈緒の対訳では「つかの間の音楽」というタイトルでした。(でも、何故か「アーレクトが死者を」の一行が割愛されているのです)先ほどCDを取り出して、もう一度聴いたところです。

投稿: Clara | 2009年4月 4日 (土曜日) 22時35分

Claraさん、こんばんは。
古楽にお詳しいClaraさんは私よりもきっとパーセルの歌を沢山聴いておられると思います。
近江楽堂、いつか聴いてみたいと思っているのですが、なかなかその機会がありません。古楽向きのホールなのでしょうね。マジッド・エル・プシュラという人は知りませんでした。名前、覚えておきますね。
「アーレクトが死者を」の一行がない版というのもあるのかもしれませんね。
古楽は演奏も版もバラエティに富んでいて、面白いですね。

投稿: フランツ | 2009年4月 4日 (土曜日) 23時46分

フランツさん、不正確な書き方をしてごめんなさい。
原詩は全く同じなんです。
歌唱にも、ちゃんと入っています。
ただ、対訳の中では、
"Till Alecto free the dead
From their eternal bands,"
この一行(2行ですね)が何故か訳されていないという意味でした。
日本語にしたときに、アレークト云々が、注釈を付けなければ伝わりにくいと言うことから、敢えて割愛したのか、あるいは曲が、最初の2行を繰り返しながら終わるので、歌い手としては、曲の流れに、詩を合わせたのか、その辺は解りませんが・・・。
「彼女の頭から蛇が落ちるまで/そして鞭も手から落ちるまで/つかの間の音楽よ/すべての不安をまぎらわせてください」という締めになっています。

投稿: Clara | 2009年4月 5日 (日曜日) 00時24分

Claraさん、補足してくださり有難うございます。
私が早とちりしただけですから気になさらないでくださいね。
訳者がうっかり訳し忘れたか、印刷業者のミスか、それとも意図的に訳者が省いたのか、いろいろ可能性はありそうですね。
ただ、対訳の場合、意図的に省くことは余程の理由がない限りしないかもしれないですね。

投稿: フランツ | 2009年4月 5日 (日曜日) 01時58分

私はパーセルの歌が好きなので、ただ歌が素晴らしいとだけ書けば良かったのに、自分の本意でない、余計なことを書いたような気がしています。
訳したのは、対訳の専門家ではなく、演奏者ですから、そちらの側から、何か考えがあってのことだと思います。
CDに入っている小さなブックレットに、原詩8行、訳詩8行で、左右に並べて入ってますから、訳詩そのものの方を重視する立場から見れば、すぐ解ること、印刷のレイアウトや量の問題はあったかも知れませんが、英語の堪能な方ですから、うっかり訳し忘れたとも、印刷ミスとも思われませんが、私は評論家ではありませんから、これ以上憶測で物をいう事は控えます。
でも、フランツさんのお陰で、アレクトという、復讐の女神について、良く理解出来たこと、感謝しています。
有り難うございました。

投稿: Clara | 2009年4月 5日 (日曜日) 08時58分

Claraさん、おはようございます。
私が憶測でコメントしてしまったこと、お詫びいたします。
実物を見てもいないのに推測でものを言ってしまいました。
今後は気をつけます。

投稿: フランツ | 2009年4月 5日 (日曜日) 11時11分

tujimoriです。コメント投稿の名前をツ・ジモリンにしてみました。
さて、ヘンリー・パーセルの音楽はちゃんと知らないのですが、ご紹介の youtube サイトで色々と聴いてみるよいチャンスになりました。ありがとうございます。個人的にはデーラーのカウンターテナーが懐かしくもありましたし、彼の ♪dropのリフレインの歌い方に聴き惚れた次第でした。
 ソポクレスの『オイディプス』も久しぶりにページを捲ってみたりもしました。 ドライデンらの台本では、どこで誰によって歌われていた曲なのでしょうね。何かdrop,drop…… と繰り返されるとtear drops のようにも聞こえてしまいますし、同時にオイディプスがわが目を刺して滴り落ちる血をも連想してしまいます。アンティゴネーが王に歌うのがよいようにも思いましたが、そんな詮索は無用ですね。
 ありがとうございました。楽しませていただきました。

投稿: tu-jimorin | 2009年4月 5日 (日曜日) 21時38分

tujimoriさん改めtu-jimorinさん、こんばんは。ちょっと変えただけで一気に親しみがわく呼び名になりましたね。
聴いてくださり、有難うございました。
ご紹介した甲斐があります。
とはいえ、私もパーセルの声楽曲はごくわずかしか知らず、どちらかというと、オペラや劇音楽からとられた歌を耳にすることが多く、純粋な歌曲はなかなか聴く機会に恵まれません。そんなわけでパーセル・シリーズはあと1回で打ち止めの予定です。
アルフレッド・デーラーの歌はDVDで歌う姿を見たことがありますが(この曲ではなかったですが)、カウンターテナーの先駆者的存在なのでしょうね。YouTubeでもあとで聞いてみます。
ドライデンらの台本ではどの場面でこの歌が歌われるのか私も気になるので、機会があれば調べてみたいと思います。
"drop"の箇所は本当にいろんな想像をかきたてられますね。

投稿: フランツ | 2009年4月 6日 (月曜日) 00時23分

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