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パーセル/ダイドーの嘆き

Dido's Lament, Z. 626, from the opera Dido and Aeneas, no. 37
 ダイドーの嘆き(歌劇「ダイドーとエネアス(ディドとアエネアース)」より)

Thy hand, Belinda, darkness shades me;
On thy bosom let me rest.
More I would, but death invades me:
Death is now a welcome guest.
 あなたの手を貸しておくれ、ベリンダよ、暗闇が私を隠しています。
 あなたの胸の上で私を休ませておくれ。
 もっと生きていたかった、だが死が私を侵蝕しています。
 死は今や歓迎すべき客なのです。

When I am laid in earth,
May my wrongs create
No trouble in thy breast.
Remember me, but ah! forget my fate.
 私が地中に寝かされるとき、
 私の過ちが
 あなたの胸に苦しみをうみ出さないことを願います。
 私のことを覚えていておくれ、だが、ああ!わが運命は忘れておくれ。

詩:Nahum Tate (1652-1715)
曲:Henry Purcell (1658/9-1695)

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Nahum Tateの台本にパーセルが作曲したオペラ「ダイドーとエネアス」は全3幕演奏しても1時間ほどの短い作品だが、この時代の重要な作品とみなされている。
カルタゴの女王ダイドーはトロイの王子エネアスと結婚して幸せになるはずが、魔女たちの策略でエネアスは船出することになり、それゆえに自らの命を絶つ。
その瀕死の状況で、彼女の侍女であり姉妹でもあるベリンダに支えられながら歌われるのがこの曲である(第3幕の終盤)。

このうえなく感動的なこの作品は誰が歌っても聴き手の心にしみこんでくる。
また悲しい気分を反映した下降する伴奏音型が胸にしみる。

私はアーメリングが80年代前半にクルト・マズア指揮ゲヴァントハウス管とPhilipsに録音したCDでのなんとも悲痛さのこもった歌声が忘れられない。

動画は以下のようなものが素晴らしかった。

Tatiana Troyanos:楽譜つき。とても感動的なトロヤノスの名唱!
http://www.youtube.com/watch?v=3FIRDl1OpC0

Janet Baker:英国の名アルト、ジャネット・ベイカーの若かりし頃の舞台での演技と非凡な歌唱が聴ける。
http://www.youtube.com/watch?v=D_50zj7J50U&feature=related

Emma Kirkby:古楽の女王健在!衰えを知らないカークビーの清楚な声で素直に曲の良さを伝えてくれる。
http://www.youtube.com/watch?v=iTV6F3lTU7o&feature=related

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wikipediaのDido and Æneasの記事
http://en.wikipedia.org/wiki/Dido_and_Aeneas

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コメント

興味深くご紹介の詩とyoutubeサイトを拝見いたしました。トロヤノスのじっくりと聴かせるドラマチックな歌唱、少し言葉が聞き取りにくくはありましたが、カークビーの対照的な歌唱。カークビーはおっしゃるように清楚さが特徴の歌手なのだと思います。
「歌」自体が訴えているのかもしれませんね、「Remember me ……」と。

投稿: Zu・Simolin | 2009年4月19日 (日曜日) 23時16分

Zu・Simolinさん、こんばんは。
今回も私の記事にお付き合いくださり、うれしく思っています。
この曲、単純ではあるのですが、それゆえにストレートに心にしみこんできますね。
トロヤノスが声に悲痛さをにじませて歌っているのは特に素晴らしかったと思います。
カークビーもおっしゃるようにトロヤノスとは全く異なる表現で、このアリアの別の可能性を引き出していると思います。
素敵な感想を有難うございました。

投稿: フランツ | 2009年4月19日 (日曜日) 23時56分

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