ELT持田香織のソロ・プロジェクトとユニットCaocao
Every Little Thingの持田香織が昨年の11月にELTとしての活動と並行してソロ活動を本格的に開始すると公表した時には、そこそこ話題になったものだった。
そして今年に入り、1月28日にソロ名義で初のシングルがとうとうリリースされた。
「雨のワルツ」と題された3曲入りのシングルの内容は、
持田がリスペクトしているインストグループのSAKEROCKと組んだ「雨のワルツ」、
持田の歌唱をフィーチャーした「Drop」、
そしてすでに長年共演歴のあるおおはた雄一との「こころ」である。
「雨のワルツ」のまったりしたゆるい曲調はELTとは明らかに異なる音楽を意識して作られたことが感じられ、インストグループの管楽セクションがその曲調を助長する。
第2曲のサプリメントのCMにも起用された「Drop」は従来のELTの路線とあまり離れないところで、力みを除いた彼女の声の可能性が追求されており、薄い伴奏のうえで持田の多重録音がハーモニーの美しさを引き出している。
最後の「こころ」ははじめて韓国が公式に認めた日本語の歌として沢知恵(さわともえ)が歌った作品のカバーで、おおはたはコーラスではなく純粋にギター演奏で持田をサポートしている。
「雨のワルツ」だけでなく、「Drop」も雨と涙の雫であり、「こころ」も「わたしのこころは湖水です」と歌われ、3曲ともに「水」というテーマが共通項になっているのも単なる偶然ではないだろう。
個人的には「こころ」を歌うもっちーの優しい声と表現力が最も心にしみた。
なお、「雨のワルツ」と「Drop」は持田の作詞作曲である。
「雨のワルツ」発売の際はほとんど派手なプロモーションは行われず、テレビでの楽曲披露もなかったのは彼女の自信のあらわれだろうか。
その露出の少なさにもかかわらず1万枚を越す売り上げとなった。
そして、その後、映画の主題歌を依頼された持田は、オリジナル・ラヴの田島貴男に声をかけユニットを組む。
それが香織(カオリ)の「カオ」と貴男(タカオ)の「カオ」に由来するCaocao(カオカオ)である。
映画は4月18日公開の綾瀬はるか主演「おっぱいバレー」で、綾瀬演じる新任教師が弱小バレー部を奮い立たせるために、もし試合に一勝したらおっぱいを見せてほしいという生徒たちの要望を受け入れることからはじまる青春映画で、実話がもとになっているそうだ。
映画では懐かしいピンクレディーやユーミン、杏里、ツイストなどの歌謡曲が流れるようだが、主題歌としてCaocaoが歌うのもフィンガー5の「個人授業」のカバーである。
私が子供の頃、すでにフィンガー5は解散していたと思うが、この曲や「学園天国」などは何故かよく覚えている(懐メロ番組やものまね番組で聞いたのかもしれない)。
さて4月8日にリリースされたばかりのCaocaoの歌う「個人授業」であるが、この楽曲がピンクレディーなどであまたの名曲を送り出してきた阿久悠&都倉俊一コンビの作品だとはこれまで知らなかった。
そのメロディーの簡潔でありながら心にひっかかる音の選び方のすごさ、そして阿久悠の情景の浮かぶ言葉の力にあらためて驚かされた。
そして自画自賛している田島貴男のアレンジが、心憎いほど原曲の良さに新しい衣を着せることに成功している。
インストだけで聞いても成立するほどの楽しいアレンジである。
田島のパンチのきいた歌声は曲の性格に大いにマッチしているが、彼の助言を受け入れながら歌ったというもっちーの声の魅力にもあらためて聞き惚れた。
テレビやライヴなどでは時に声の不安定さを露呈してしまうこともある最近の彼女だが、スタジオ録音では彼女の最良の部分が掬い取られていて安心して聞くことが出来る。
プロモーションビデオはすでに多くのサイトで公開されていて、映画のような凝った楽しいつくりになっているのでまだ見ていない方はぜひ!
今年はELTとしての活動もすでに予定されているようで、精力的な彼女の活動から目が離せない。
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