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ヴィンガー&ハルトマン/ヴォルフ歌曲集

ヴォルフ/ケラー、ゲーテ、メーリケ他の詩による歌曲集
(Hugo Wolf / Lieder nach Texten von Keller, Goethe, Mörike und anderen)
Winger_hartmann_wolfTACET: TACET 162
録音:2007年, Hannover Congress Centrum

マレット・ヴィンガー(Marret Winger)(S)
シュテフェン・ハルトマン(Steffen Hartmann)(P)

ヴォルフ(1860-1903)作曲
1.お入り、立派な兵隊さん(Tretet ein, hoher Krieger)(ケラーによる「昔の調べ」No.1)
2.愛する人がアトリのように歌うというのなら(Singt mein Schatz wie ein Fink)(ケラーによる「昔の調べ」No.2)
3.ねえ、青っぽい坊や(Du milchjunger Knabe)(ケラーによる「昔の調べ」No.3)
4.朝露の中、歩いていると(Wandl' ich in dem Morgentau)(ケラーによる「昔の調べ」No.4)
5.炭焼き女が酔っ払って(Das Köhlerweib ist trunken)(ケラーによる「昔の調べ」No.5)
6.明るい月が、なんと冷たく遠くに輝いていることか(Wie glanzt der helle Mond)(ケラーによる「昔の調べ」No.6)
7.ミニョンⅠ(Mignon I)(ゲーテ歌曲集)
8.ミニョンⅡ(Mignon II)(ゲーテ歌曲集)
9.ミニョンⅢ(Mignon III)(ゲーテ歌曲集)
10.ミニョン「あの国をご存知ですか」(Mignon (Kennst du das Land))(ゲーテ歌曲集)
11.フィリーネ(Philine)(ゲーテ歌曲集)
12.心変わりした娘(Die Bekehrte)(ゲーテ歌曲集)
13.つれない娘(Die Spröde)(ゲーテ歌曲集)
14.アナクレオンの墓(Anakreons Grab)(ゲーテ歌曲集)
15.響け、響け、私のパンデーロ(Klinge, klinge mein Pandero)(スペイン歌曲集)
16.私の巻き髪の陰で(In dem Schatten meiner Locken)(スペイン歌曲集)
17.あなたは一本の糸で(Du denkst mit einem Fädchen)(イタリア歌曲集)
18.もうどんなに長いこと待ち焦がれていたことでしょう(Wie lange schon)(イタリア歌曲集)
19.妖精の歌(Elfenlied)(メーリケ歌曲集)
20.捨てられた娘(Das verlassene Mägdelein)(メーリケ歌曲集)
21.あの季節だ(Er ist's)(メーリケ歌曲集)

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全く名前も演奏も知らない演奏家との出会いは不安と期待が入り混じる。
意欲的なヴォルフ歌曲の選曲を見て、とにかく聴いてみようと購入したところ、大正解だった!
この若手歌手の歌唱は、シュヴァルツコプフや白井光子の方向を引き継いでいるかのようだ。
声も魅力的なら技術も確か、そして深みのある表現力、これは大物の予感だ。
ブックレットの解説によれば、マレット・ヴィンガーはマティスやシュヴァルツコプフに師事し、F=ディースカウ、アーメリング、ギーベルのマスタークラスに参加したとある。
それを裏付けるような稀に見るほどの安定感である。
ケラー歌曲の諧謔も、ゲーテ歌曲の深刻さも、スペイン&イタリア歌曲での庶民の直接的な感情も、メーリケ歌曲の多様性も、全く見事に対応して歌っている。

先日聴いたキルヒシュラーガーの録音が素直に旋律美を聴かせていたのに対して、このヴィンガーはテキストと音楽にぐっと踏み込んでエキスを抽出したかのような歌唱である。「ミニョン」歌曲群を聴けば、両者の資質の違いは明らかである。

ピアニストのシュテフェン・ハルトマンも実に積極的な踏み込みで歌と拮抗している。
時に若さが顔をのぞかせることはあっても、決して作品を逸脱せずに果敢に立ち向かう姿勢は頼もしい。
テクニックも確かで、音色のパレットも豊かなので、ヴォルフの多彩な色合いを表現するのに不足しない。
今後が楽しみなピアニストである。

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コメント

Marret Wingerの骨格のしっかりした歌、なかなか良いですよね。私もこのCDを聴いてすっかり気に入りました。レコード芸術でも褒められていました。
残念ながら、彼女の他の演奏がインターネットで放送される機会はあまり多くないのですが、それでも2度ほどありました。
おそらく近い将来、歌曲の分野で名前を聞くことが増えることでしょう。

投稿: さすらい人 | 2009年3月22日 (日曜日) 21時10分

さすらい人さん、こんばんは。
コメントを有難うございます。
さすらい人さんのお墨付きでしたら私の思い違いではなかったようですね。
表情の付け方が細やかで作品としっかり同化しているのが聴いていてとても気持ちよかったです。
ネットラジオでもすでに2回登場しているのですね。私も今後チェックしてみたいと思います。

投稿: フランツ | 2009年3月22日 (日曜日) 22時33分

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