東京・春・音楽祭/ハイドン《天地創造》(2009年3月29日 東京文化会館)
東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2009-
NHK交響楽団 ハイドン《天地創造》
2009年3月29日(日) 16:00 東京文化会館 大ホール(5階L1列22番)
天使ガブリエル、エヴァ(ソプラノ):タチアナ・リスニック(Tatiana Lisnic)
天使ウリエル(テノール):セミール・ピルギュ(Saimir Pirgu)
天使ラファエル、アダム(バス):アイン・アンガー(Ain Anger)
合唱:東京オペラシンガーズ(Tokyo Opera Singers)
合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ(Roberto Gabbiani)
管弦楽:NHK交響楽団(NHK Symphony Orchestra,Tokyo)
指揮:レオポルト・ハーガー(Leopold Hager)
ハイドン/オラトリオ《天地創造》(Die Schöpfung) Hob.XXI:2
第1部
第2部
第3部
(休憩なし)
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上野で開催されている「東京のオペラの森」も今年で5回目を迎えるという。
今回から「東京・春・音楽祭-東京のオペラの森-」と名称も若干変えてあらたな装いで再スタートということらしい。
今回の期間中(3月12日~4月16日)、オペラ公演は一度もなく、しいていえばオペラアリアが含まれるコンサートがあるぐらいである。
だが来年には「パルジファル」、再来年には「ローエングリン」が予定されているそうだ。
今回私が聴いてきたのは、ハイドンの3つのオラトリオのうち、最も人気の高い《天地創造》である。
私はミュンヒンガー指揮ヴィーン・フィルによるLONDONレーベルの録音を持っているのみで、実演でこの作品を聴くのははじめてなので楽しみだった。
台本は、第1部と第2部が旧約聖書の「創世記」に基づき、第3部がイギリスのミルトンの「失楽園」に基づき英語で書かれたのだが、さらにスヴィーテン男爵が独訳したものにハイドンは作曲した。
従って、登場人物は旧約聖書に基づく第1部と第2部がが3人の天使(ガブリエル、ウリエル、ラファエル)、そして「失楽園」に基づく第3部がアダムとエヴァ、それに天使ウリエルである。
ミュンヒンガーの録音のように5人の登場人物にそれぞれ別の歌手をあてる場合もあるが、今回の公演はガブリエルとイブをソプラノのリスニック、ラファエルとアダムをバスのアンガーが兼ねて歌っていた。
休憩なしの約2時間の公演は若干疲れたが、第1~2部の厳粛な内容と、第3部のある意味普遍的な愛の歌とでは雰囲気が異なり、その違いをはっきり実感することの出来た得がたい体験であった。
日曜午後の上野駅公園口あたりは人・人・人ですごかった。
東京文化会館の小ホールはたまに来るのだが、大ホールに入ったのは一体何年ぶりだろうか。
久しぶりにこのホールの階段を5階の席までのぼっていったが、さすが老舗のホールだけあって5階席でも音響は私には充分満足できるものだった。
ただ座席が狭くて窮屈なのはいつか改善してほしいし、上の方の席まで階段を登るのが難しい人のためにエレベーターかエスカレーターでもあるといいのだが(ひょっとしたらあったのかもしれないが気付かなかった)。
3人の歌手はいずれも粒が揃っていて、いい人選だったと感じた。
特にソプラノのタチアナ・リスニックは声に全くむらがなく、どの音域でも芯のある心地よい声で魅了された(桜の色のような鮮やかなピンクのドレスで登場した)。
テノールのセミール・ピルギュも発音や語りが美しく、劇性と叙情性を併せ持った素晴らしい歌だった。
バスのアイン・アンガーは最初のうち声が出きらない感はあったものの、すぐに持ち直してしっかりとした低音を聞かせてくれた。
N響はたまに不揃いになるところはあったものの、積極的な姿勢でハイドンの大作の魅力を伝えてくれたと思う。
指揮のレオポルト・ハーガーはモーツァルトのレコード録音などで馴染みのある名前だったが、実演を聴いたのは今回がはじめてだった。
年齢を感じさせないエネルギッシュな指揮ぶりで、生き生きとしたハイドンを聞かせてくれた。
普段あまり聖書と縁のない生活をしている私でも、ハイドンの情景描写と心理描写の巧みさに引き込まれて楽しく聴くことが出来た。
中でもそれぞれの歌手が歌うアリアは単独で聴いても美しいものが多く、さらに聴き込んでみたいと思った。
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