歌曲ピアニスト、三浦洋一逝去
日本歌曲や合唱曲を中心に活動したピアニストの三浦洋一(1933.3.24.名古屋-2009.1.22.名古屋)が亡くなった。
新聞をとっていない私は音楽雑誌の訃報欄を見てはじめて知ったのだが、ネット上では結構広く報道されていたようだ。
ビクターの膨大な日本歌曲アンソロジーで三浦洋一氏がほとんどのピアノパートを引き受けていたのではなかっただろうか。
私は柴田南雄歌曲集のLPを持っているのみだが、一昔前の日本の歌曲ピアニストの代表格の一人だった(今でいう塚田佳男氏のような存在だったのではないだろうか)。
変り種としてはペトコフの歌うロシア民謡集の録音でも共演している。
彼の実演を聴くことが出来なかったのは本当に残念だが、もう一つ心残りなことがある。
ジェラール・スゼーが1982年に来日した際に録音したブラームス歌曲集のLPを購入しなかったことである。
いつものボールドウィンではなく、どういういきさつかは分からないが、三浦氏がこの時の共演者をつとめていた。
未だにCD化もされず、幻のままの録音である。
いつか中古店でひょっこり見つけることが出来ればいいのだが・・・。
ジェラール・スゼー/ブラームス・リーダー
ユピテル工業: YUPITERU: 25CL-0004
録音:1982年6月2~14日
ジェラール・スゼー(BR)三浦洋一(P)
ブラームス/言伝て;サッフォー風の頌歌;ぼくの恋は緑色;秘め事;もはやきみの許へは行くまい;いまいましい、おまえはぼくをまた;わが妃よ、そなたはなんと……;とわの愛;
かいなきセレナーデ;墓地で;誓い;日曜日;森のしじまに;あの娘のもとに;五月の夜;むかしの恋;ブラームスの子守唄
声楽や器楽のアンサンブルに生涯を捧げたピアニストのご冥福をお祈りいたします。
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(2009年3月22日追記)
音楽資料室で上記のブラームス歌曲集をとうとう聴くことが出来た。三浦氏のピアノは日本歌曲だけでなくドイツ歌曲も完全に知り尽くした人にのみ可能な演奏だった。清潔な音色でよく歌い、緩急も自在、歌手とのやりとりも完璧で、詩と音楽を深く理解し共感した演奏と感じ、本当に素晴らしかった。スゼーはすでに声自体は盛期を過ぎてはいるものの、しばらく聴き続けるとその声から違和感は消え去り、なんとも深い味わいのある表現に心を揺さぶられた。続けて2回聴き続けてしまったほどブラームスの真髄をとらえた歌唱だったと思う。この名演がいずれ復活することを切に祈りたい。
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コメント
はじめまして。
三浦洋一氏の録音について検索しておりましたら、こちらのブログに行き着きました。
私は声楽家で東京を中心に活動しております。
生前、何度かパートナーのピアニストのレッスンに同行しレッスンを受けたことがあります。
三浦先生からバスティアニーニ、コレッリ・テバルディの伴奏をされたことはよく聞いておりました。
その中でスゼーと録音したことも聞いておりました。しかし、その録音を探すことができませんでした。
ピアニストも私もどうしてもこの録音が聴いてみたいのでどちらの資料室で聴かれたか教えていただけませんでしょうか?
突然の書き込み失礼いたしました。
よろしくお願いいたします。
投稿: H・F | 2010年4月 1日 (木曜日) 02時30分
H・Fさん、はじめまして。
ご返事が遅くなりましてすみません。
三浦さんと個人的にお知り合いだったとのこと、貴重なお話を有難うございます。
タリアヴィーニとのライヴは以前CD化されていたと思うのですが、テバルディやコレッリなどとも共演していたのですか。それだけ三浦氏の技量が信頼されていたということですね。
ところでご質問の件ですが、私が三浦氏とスゼーのブラームスのLPを聴いたのは、上野の東京文化会館の4階にある音楽資料室です。
http://www.t-bunka.jp/library/index.html
エレベーターで4階に行き、受付ではじめて利用する旨お伝えください。何年か有効の利用者カードを作るか、当日のみ利用するかを選べますが、住所を確認できるもの(免許証)を持っていった方がいいと思います。
無料ですので、ぜひ利用してみてください。
なお、月曜日は休館ですので、お気をつけください。
投稿: フランツ | 2010年4月 1日 (木曜日) 22時58分
お忙しいところご返信ありがとうございました。
東京文化会館ですか!!!
都内ですし、文化会館はよく行きますので
時間の空いている時にぜひ聴いてみたく思います。
こちらのブログ拝見させていただきました。
私にとってすごく参考になることを書いていらっしゃいますので今後も拝見させていただきます。
本当にありがとうございました。
投稿: H・F | 2010年4月 4日 (日曜日) 03時15分