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ハイドン/牧歌

A Pastoral Song, Hob. XXVIa no. 27
 牧歌

My mother bids me bind my hair
With bands of rosy hue,
Tie up my sleeves with ribbons rare,
And lace my bodice blue.
 お母さんが私に言うのよ、
 バラ色のバンドで髪を束ねなさいって。
 袖を珍しいリボンで結んで、
 青い胴着(ボディス)のひもを締めなさいって。

For why, she cries, sit still and weep,
While others dance and play?
Alas! I scarce can go or creep,
While Lubin is away.
 どうして、とお母さんは叫ぶの、じっと座ってしくしく泣いているの、
 ほかの子たちが踊ったり遊んだりしているときに?
 ああ!私はほとんど出かけたりこっそり抜け出したりできないの、
 ルビンがいない間には。

'Tis sad to think the days are gone,
When those we love were near;
I sit upon this mossy stone,
And sigh when none can hear.
 あの日々が去ってしまったと思うと悲しいわ、
 愛する人々がそばにいた日々。
 私はこの苔むした石に座って
 溜息をつくの、誰にも聞かれないときに。

And while I spin my flaxen thread,
And sing my simple lay,
The village seems asleep, or dead,
Now Lubin is away.
 そして亜麻の糸を紡いで
 簡単な歌を歌うの。
 村は眠っているか死んでいるかのよう。
 いまはルビンがいないのだから。

詩:Anne Hunter (née Home: 1742-1821)
曲:Franz Joseph Haydn (1732-1809)

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アン・ハンターの英語詩による「6つのオリジナル・カンツォネッタ 第1集」の第3曲。
詩は、遠く離れた恋人ルビンを思う娘の気持ちを歌っている。
2詩節分を歌の1節とした全2節の有節形式。
この曲集の他の作品同様、ピアノの前奏は長く、歌が入っても歌と独立した動きをところどころで見せている。
イ長調の一見のどかな雰囲気の作品だが、各節最後の2行では歌声部がとぎれとぎれになり、心痛にあえぐ様をあらわしているかのようだ。
8分の6拍子、Allegretto。歌声部の最高音は2点ホ音、最低音は1点ホ音で音域が一オクターヴ内におさまっている。

オージェー(S)オルベルツ(P):BERLIN Classics:1980年録音:オージェーはゆっくりと噛みしめるように歌い、透明な美声が静かに悲しみを浮き立たせて素晴らしい。オルベルツも澄んだ音色で素敵なサポートを聞かせる。

アーメリング(S)デームス(P):PHILIPS:1980年録音:アーメリングはテキストに応じて細やかな表情を付けるが、最終行で淋しげに声を絞り込むところは絶妙。歌の表情とぴったり合わせたデームスも味がある。

ミルン(S)ヴィニョールズ(P):Hyperion:2001年録音:ミルンの声と表現は特にこの曲と合っているようで、しっとりとした情感がとても良かった。ヴィニョールズも丁寧な表現が美しい。

以下のサイトの3曲目の「試聴」マークをクリックすると、最初の1分ほどが聴けます(James Griffetという男声が女声の歌を歌っています)。
http://musico.jp/contents/contents_index.aspx?id=r6SYLC&afl=bsearch.goo.ne.jp

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コメント

ハイドンが英詩歌曲をいろいろ作曲しているとはよく知らずにいました。ヘンデルやハイドンなど英国とは縁深い作曲家も多いのではありましたが。
シューベルトの歌曲を再発見するのに確か英国の人が大きな役割を果たしたのでしたかしら、よく知りませんが。
お記事を拝読して、そうだボストリッジの「英国歌曲集」のCDもあったっけ、聴いてなかったぞ、と慌てて引っ張り出してきたりしました。まだちゃんと聞いていませんが。
でも、お蔭様で「竪琴を鳴らすオルフェウス」というシェイクスピアの詩を用いた曲があることをはじめて知りました。まことに面白いものです。まあ、一人で面白がっているのですが。
ダウランドなど、イギリスのリュートソングは昔から好きでショルのカウンターテナーも時折聴いております。イギリス歌曲にはカウンターテナーが昔から相応しいのでしょうか。LPで買ったものはもう失ってしまいましたが。
 ありがとうございました。

投稿: 辻乃森 | 2009年2月 7日 (土曜日) 18時29分

とても愛らしい詩ですね。
アン・ハンター、名前を覚えておきます!

投稿: Auty | 2009年2月 7日 (土曜日) 18時35分

辻乃森さん、こんばんは。
ハイドンはスコットランドやウェールズの民謡編曲を行っていますが、この依頼が少なからず英語の歌曲創作に刺激を与えたということもあるのかもしれませんね。
シューベルトの歌曲の再発見にイギリス人がどれほど関与しているのかは分かりませんが、歌曲の伴奏者にはイギリス人の伝統のようなものがあるように思います。例えばムーアやジョージ・リーヴズ、アーネスト・ラッシュからオーストラリア出身でイギリスを本拠にしたパーソンズ、現在のヴィニョールズ、マーティノー、グレアム・ジョンソン、ドレイクまで、歌曲の優れたピアニストを最も多く輩出している国の一つであることは注目すべきことだと思います。
ボストリッジはイギリス歌曲集を録音していますが、ドイツリートの影に隠れて今ひとつ注目されていないのが残念ですね。彼のドイツリートは外国人による一級の演奏だとは思いますが、やはり英語歌曲を聴くとよりのびのびと歌っているように感じます。
私はカウンターテナーの演奏はあまり聴いていないのですが、シューベルトなどを歌うよりはもっと古い時代の作品の方がより魅力的に聴こえるような印象をもっています。
こちらこそ有難うございました。

投稿: フランツ | 2009年2月 7日 (土曜日) 21時53分

Autyさん、こんばんは。
素朴で民謡調のこの詩は確かに愛らしい印象を受けますね。
このアン・ハンターという詩人は、外科医ジョン・ハンターの奥さんとのことですが、プレイエルという人のピアノ曲に自作の詩を合わせて歌ったりしていたそうです。

投稿: フランツ | 2009年2月 7日 (土曜日) 21時59分

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