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今年もご愛顧有難うございました

ブログを立ち上げて3年以上が過ぎ、更新のペースは遅くなりながらも継続してこられたのは日頃ご訪問くださる皆様のお陰だと思います。
心からお礼申し上げます。
暗いニュースの多い昨今ですが、少しでも音楽を聴いて心に潤いを取り戻せたら素晴らしいことですね。

今年はヴォーン・ウィリアムズやリムスキー=コルサコフの記念年だったのですが、彼らの歌曲について記事で触れることが出来なかったのが心残りです。
またいずれ投稿できたらと思っています。
オーケストラ音楽のお好きな方にとってはカラヤンや朝比奈隆の記念年として存分に堪能されたのではないでしょうか。
そういえば同じく記念年のプッチーニ「蝶々夫人」をカラヤン指揮でフレーニらが歌ったDVDが安価で再発されていたので購入したのですが、まだ視聴していません。
買ったディスクはためないで早めに聴いていくことを来年の目標にでもしようかと思います。

来年は丑年。
ハイドン、メンデルスゾーンなどの記念年です。
かつてPHILIPSからLP3枚組で出て、抜粋の形でのみCD化されていたアーメリング&デームスのハイドン歌曲全集が、オランダのBrilliant Classicsでようやく全曲CD復活し、1月下旬には入手できるようです。
もちろん彼女たちだけでなく、オジェー&オルベルツ、白井&ヘル、シュライアー&デームス、F=ディースカウ&ムーア、ホルツマイア&クーパーなど案外多くの演奏家がハイドンの歌曲を録音しています。
それらの多くはすでに廃盤という状況なので、ハイドン・イヤーでの復活に期待したいものです。
来年はハイドン歌曲をじっくり聴きながら再発見していければと考えています。
そしてメンデルスゾーンの歌曲も・・・。

私は今日から新年4日頃までパソコンの前を離れますので、コメントなどをいただいた場合はそれ以降にご返事いたします。
あらかじめご了承ください。

それでは皆様にとって来年も素晴らしい年になりますように!

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ヘルマン・プライのシューベルト3大歌曲集録音リスト

没後10年の名バリトン、ヘルマン・プライ(Hermann Prey: 1929-1998)の偉業の1つとして、シューベルト歌曲への貢献が挙げられるだろう。
オーストリアやアメリカでシューベルティアーデを立ち上げ、知られざるシューベルト歌曲を積極的に歌ってきた。

彼は様々なピアニストたちと3大歌曲集を複数回録音している。
3作とも共演しているのは当時若手だったフランス人ピアニストのフィリップ・ビアンコニだけだという事実は興味深い。
各歌曲集に合ったピアニストをプライが熟慮して選択していることを示しているのではないか(レコード会社の意向もあるだろうが)。

それぞれの盤に思い出を刻んでいる方も多いだろう。
私は「白鳥の歌」の第1回録音(クリーンのピアノ)が特に印象深い。
まぶしいほどの情熱を全身から放射するプライの熱唱は忘れがたい。
また、「美しい水車屋の娘」の第1回録音(エンゲルのピアノ)は、この歌曲集の最高の演奏の1つだと思う。
「冬の旅」では全録音で第14曲「最後の希望」の歌詞をミュラーの原詩に戻して歌っているところにプライの強い主張を感じる。

これらの録音は、今後も聴き継がれていくことだろう。

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美しい水車屋の娘(Die schöne Müllerin) D795
1.TELDEC:1971年5月25-27日, Brienner Str. Theater, München:カール・エンゲル(Karl Engel)(P)
2.PHILIPS:1973年5月(または1971年10月?), München:レナード・ホカンソン(Leonard Hokanson)(P)
3.DENON:1985年8月5-6日, Grosse Saal der Hans Seidl Stiftung Wildbad-Kreut:フィリップ・ビアンコニ(Philippe Bianconi)(P)

Prey_engel_muellerin

←エンゲルとの「水車屋」第1回録音

Prey_schubert_philips

←ホカンソンとの「水車屋」、サヴァリシュとの「冬の旅」、ムーアとの「白鳥の歌」

Prey_bianconi_schubert←ビアンコニとの3大歌曲集録音

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冬の旅(Winterreise) D911
1.EMI:1961年10月, Evangelisches Gemeindehaus, Zehlendorf, Berlin:カール・エンゲル(Karl Engel)(P)
2.PHILIPS:1971年10月27-30日, Bavaria Studio, München:ヴォルフガング・サヴァリシュ(Wolfgang Sawallisch)(P)
3.ERMITAGE:1978年10月2日, Radio della Svizzera Italiana / Rete 2, Locarno (live):アーウィン・ゲイジ(Irwin Gage)(P)
4.DENON:1984年4月3-6日, Friedrich Ebert Halle, Hamburg:フィリップ・ビアンコニ(Philippe Bianconi)(P)
5.Orchestra Ensemble Kanazawa:1997年10月7日, Prinzregententheater, München (live):オーケストラアンサンブル金沢、岩城宏之(C):鈴木行一編曲版

Prey_engel_winterreise←エンゲルとの「冬の旅」第1回録音

Prey_gage_winterreise←ゲイジとの「冬の旅」イタリア・ライヴ

Prey_iwaki_winterreise

←鈴木行一編曲版の「冬の旅」ドイツ・ライヴ

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白鳥の歌(Schwanengesang) D957 & D965A
1.DECCA / LONDON:1962年, Sofiensaal, Wien:ヴァルター・クリーン(Walter Klien)(P)
2.PHILIPS:1971年11月6-10日, Bavaria Studio, München:ジェラルド・ムーア(Gerald Moore)(P)
3.Deutsche Grammophon:1978年6月21日, Palasthof, Hohenems (live):レナード・ホカンソン(Leonard Hokanson)(P)
4.DENON:1984年4月3-6日、1985年4月3-7日, Friedrich Ebert Halle, Hamburg (1984) & Grosse Saal der Hans Seidl Stiftung Wildbad-Kreut (1985):フィリップ・ビアンコニ(Philippe Bianconi)(P)(第7曲「別れ」と第8曲「アトラス」の間に「秋D945」が挿入されている)
5.PHILIPS / Unitel (DVD):1986年, Germany:レナード・ホカンソン(Leonard Hokanson)(P)(曲順は14,8-13,1-6,「秋D945」,7)

Prey_klien_schwanengesang←クリーンとの「白鳥の歌」第1回録音

Prey_hokanson_schwanengesang_dvd

←ホカンソンとの「白鳥の歌」映像作品(Franz Kabelka演出)

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オピッツ/ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全32曲演奏会(第8回)(2008年12月26日 東京オペラシティ コンサートホール)

ゲルハルト・オピッツ ベートーヴェン・ピアノソナタ全32曲演奏会(全8回)第8回

Oppitz_20082008年12月26日(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(1階3列6番)

ゲルハルト・オピッツ(Gerhard Oppitz)(P)

ベートーヴェン(Beethoven)作曲

ソナタ第30番ホ長調作品109
 1. Vivace, ma non troppo - Adagio espressivo
 2. Prestissimo
 3. Andante molto cantabile ed espressivo

ソナタ第31番変イ長調作品110
 1. Moderato cantabile molto espressivo
 2. Allegro molto
 3. Adagio ma non troppo - Fuga: Allegro ma non troppo

~休憩~

ソナタ第32番ハ短調作品111
 1. Maestoso - Allegro con brio ed appasionato
 2. Adagio molto semplice e cantabile

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今年ももう残りわずかである。
仕事納めの今日、今年最後となるであろうコンサートに出かけた。
ドイツのベテラン、ゲルハルト・オピッツによるベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲シリーズの最終回である。
とはいえ、オピッツのコンサートを生で聴くのは私にとって今回がはじめて。
かつてNHKのレッスンで名教師ぶりを披露していたゲルハルト・オピッツの実演をいつか聴いてみたいと思っていた。
当日券売り場に行くと、S席とA席が残っており(不況のせいか、オピッツほどの人でも完売にならないのは、聴き手にとっては券が入手しやすいので正直有難い)、せっかくなので前から3列目の席を購入。
オペラシティでこんなに前の席ははじめてである。
残り物には福があるとはこういうことか。
左の方の席なので、オピッツの姿を右後ろから見る形になるが、手の動きははっきりと見ることが出来たのが良かった。
バイブルにもたとえられるベートーヴェンのピアノソナタの中でもこの日に演奏されるのは最後のソナタ3曲。
演奏者はもちろん聴き手にも充分なエネルギーと集中力が要求される難曲である。

オピッツは1953年バイエルン州生まれというから今55歳。
まさに脂の乗った時期である。
ケンプにも師事している。
ブラームス、ベートーヴェンなどに続き、現在シューベルトのシリーズを録音中とのこと。
彼はヴァルトラウト・マイアーの共演者として「女の愛と生涯」やシューベルト、ブラームスの歌曲集も録音している。

登場したオピッツは思ったほど大きい人ではなく、手のサイズも普通ぐらいだった。
しかし、指回りは全く問題なく、大作3曲をいささかの弛緩もなく、見事に弾ききったのは素晴らしかった。
オピッツは例えば同じドイツ出身のペーター・レーゼルなどと比べると、技術の安定しているところは共通しているが、より感情表現が素直に外面にあらわれるタイプのようだ。
作りこんだ感じよりも即興的で自然な印象を与える演奏である。
テンポをゆらし、強弱の幅を大きくとりながらも、やりすぎることのないコントロールの妙があった。

ソナタ第31番は先日NHKでの放送が終了したマリア・ジョアン・ピレシュのワークショップ・シリーズで頻繁にピレシュの演奏が放送され、馴染んでいたので、ピレシュとの違いを感じながら、オピッツの演奏を楽しめた。
ピレシュの巨匠然としたどっしり感に対して、オピッツの演奏はより柔軟で自由さのある演奏だった。
もっとドイツ的ながっちりした構築感をイメージしていたのだが、先入観というのは音楽を聴くうえでは邪魔なだけであることがよく分かった。

ベートーヴェン最後のソナタである第32番は2つの楽章からなる30分ほどかかる大作である。
第1楽章は屹立した巨人とか、ごつごつした岩などがイメージされ、あたかも何か大きな力と戦っているような音楽である。
オピッツはただ力強いだけではない隅々まで目の行き届いた充実した演奏を聴かせた。
一方第2楽章は"Arietta"と題され、ひたすら内面に沈潜していき、表面的な耳あたりのよさを排除した渋みあふれる世界が繰り広げられる。
オピッツの弾くこの第2楽章を聴いて、ベートーヴェンの心の中に行き来する様々な思いの移り行きを次々披露されているような感じを受けた。
とりわけ高音域で繊細に奏でられる箇所では星のきらめきのような崇高さを感じた。
長いトリルのうえで静かに語られる締めのモノローグはオピッツのデリカシーにあふれた良さが最高の形で発揮されていたように思う。
こういう音楽を心を無にして聴き入ることの幸せを感じながら、ひたすら身をまかせていた。

聴衆の熱烈な拍手でオピッツは何度もステージに呼び戻されたが、穏やかな笑顔をたたえながら拍手に応え、アンコールは弾かなかった。
ベートーヴェンの全ソナタ・シリーズをやり遂げ、満足だったことだろう。
来年はブラームスのコンチェルトを弾きに再来日するようだ。
都合があえばまた聴いてみたいピアニストである。

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コルネーリウス/クリスマスツリー

Christbaum, Op. 8 Nr. 1 (aus "Weihnachtslieder")
 クリスマスツリー(歌曲集「クリスマスの歌」Op. 8より第1曲)

Wie schön geschmückt der festliche Raum!
Die Lichter funkeln am Weihnachtsbaum!
O fröhliche Zeit! o seliger Traum!
 パーティの部屋はなんてきれいに飾りつけてあるのでしょう!
 クリスマスツリーの灯りがきらきらしているよ!
 ああ楽しい時間!ああ幸せな夢!

Die Mutter sitzt in der Kinder Kreis;
Nun schweiget alles auf ihr Geheiß:
Sie singet des Christkinds Lob und Preis.
 お母さんが子供たちの輪の中に座ります。
 今お母さんに言われてみんなは黙ります。
 お母さんは幼児キリストを褒め称えて歌います。

Und rings, vom Weihnachtsbaum erhellt,
Ist schön in Bildern aufgestellt
Des heiligen Buches Palmenwelt.
 まわりはクリスマスツリーに照らされて
 絵が美しく飾られています、
 聖書のヤシの世界を描いた絵が。

Die Kinder schauen der Bilder Pracht,
Und haben wohl des Singen acht,
Das tönt so süß in der Weihenacht!
 子供たちは壮麗な絵を見つめ
 歌に耳を傾けます、
 それはクリスマスにとても甘美に響きます!

O glücklicher Kreis im festlichen Raum!
O goldne Lichter am Weihnachtsbaum!
O fröhliche Zeit! o seliger Traum!
 ああパーティの部屋での幸せな輪!
 ああクリスマスツリーの金色の光!
 ああ楽しい時間!ああ幸せな夢!

詩&曲:ペーター・コルネーリウス(Peter Cornelius: 1824-1874)

演奏の映像(音が出ますのでお気をつけください。)

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クリスマスイブにとびこんできた飯島愛さんのあまりにも突然の訃報に驚いています。ブログのテンプレートには"matt""müde"(疲れた)とか"krank"(病んでいる)といったドイツ語がデザインされ、そういうテンプレートを選んだ彼女の繊細さを感じていました。これから何か新しいことを始めるのではと期待していただけに残念です。ご冥福をお祈りいたします。

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ブラームス「甲斐なきセレナーデ」を聴き比べる

最近の動画サイトには有難いことに沢山の貴重な演奏の映像がアップされています。
歌曲についてもこれまで音でしか知らなかった人が実際に歌っている映像を発見して感激することもしばしばです。
そんな中、ブラームスのコミカルな歌曲「甲斐なきセレナーデ」を往年の大御所たちがそろって歌っているので聴いてみることにしましょう。

ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス&ジェラルド・ムーア(1957年頃)
http://jp.youtube.com/watch?v=0BaJDB6X9sE

クリスタ・ルートヴィヒ&ジェラルド・ムーア(1961年)
http://jp.youtube.com/watch?v=MsIHSmpTFQg

エリーザベト・シュヴァルツコプフ&ジェラルド・ムーア(1970年)
http://jp.youtube.com/watch?v=lnJZ7WOIjng

ちなみに歌詞の内容は以下のとおりです。

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Vergebliches Ständchen, Op. 84-4
 甲斐なきセレナーデ

Er:
Guten Abend, mein Schatz,
Guten Abend, mein Kind!
Ich komm' aus Lieb' zu dir,
Ach, mach' mir auf die Tür,
Mach' mir auf die Tür!
彼:
 こんばんは、大切な君、
 こんばんは、いとしい子!
 恋しさのあまり君のところに来てしまった、
 ねえ、ドアを開けてくれよ、
 ドアを開けておくれ!

Sie:
Mein' Tür ist verschlossen,
Ich laß dich nicht ein;
Mutter, die rät' mir klug,
Wär'st du herein mit Fug,
Wär's mit mir vorbei!
彼女:
 うちのドアは鍵がかかっているの、
 あなたを入れさせないわ。
 お母さんがね、賢明にもあたしに忠告してくれたのよ、
 あなたを当然のように中に入れたりしたら
 あたしはもうおしまいなんですって!

Er:
So kalt ist die Nacht,
So eisig der Wind,
Daß mir das Herz erfriert,
Mein' Lieb' erlöschen wird;
Öffne mir, mein Kind!
彼:
 夜はとっても寒くて、
 風が凍りつくようだよ、
 だからぼくの心は凍ってしまい、
 愛も消えてしまうだろうよ、
 開けてくれないか、ぼくのいい子ちゃん!

Sie:
Löschet dein' Lieb';
Lass' sie löschen nur!
Löschet sie immerzu,
Geh' heim zu Bett, zur Ruh'!
Gute Nacht, mein Knab'!
彼女:
 あんたの愛が消えるというのなら
 消しておしまいなさい!
 愛がずっと消えたままというのなら
 さっさとお家のベッドに戻って休むがいいわ!
 おやすみなさい、私の坊やちゃん!
 
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いずれもBBCの映像からとったもので、それぞれの歌手の特徴がよくあらわれていて面白いです。
皆さんは誰の演奏が一番気に入ったでしょうか。

ちなみに私の選んだMVPは・・・
「ジェラルド・ムーア」です。
決してテクニックの上手さや切れ味の鋭さで聞かせるピアニストではないことは承知しているのですが、彼の演奏を聴くとつくづく感心してしまうのです。
例えば、シュヴァルツコプフが最後にゆっくりためながら締めの言葉を語ろうが、ルートヴィヒが独特なゆったりしたテンポで悠然と歌おうが、ロス・アンヘレスが早めのテンポで可愛らしく歌おうが、どんなにテンポをゆらしてもとことん付いていくこの能力は、2、3回リハーサルを積んだからといって誰でも出来るものではないと思うのです。
歌手がどのように歌うかをおそらく直感的に把握して、これほど速度も強弱もぴったりと一致させながら内容の豊かな音楽を演奏できるというのは、ほかのどんなにテクニックの優秀なピアニストたちにも劣らない鋭い耳と独自のセンスを備えていると言えるのではないでしょうか。

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奈良ゆみ&藤井一興/メシアンへのオマージュ-生誕100年記念-(2008年12月16日 津田ホール)

●MESSIAEN2008アソシエーション公式コンサート
Nara_fujii_2008_pamphlet奈良ゆみソプラノリサイタル
メシアンへのオマージュ-生誕100年記念-

2008年12月16日(火) 19:00 津田ホール(J列8番)

奈良ゆみ(Yumi Nara)(S)
藤井一興(Kazuoki Fujii)(P)

オリヴィエ・メシアン作曲

「プレリュード」(Préludes)より[1929](ピアノソロ)
Ⅲ.軽やかな数(Le nombre léger)
Ⅷ.風に映る影(Un reflet dans le vent)

「ミのための詩」(Poèmes pour Mi)[1936]より  
Ⅱ.風景(Paysage)
Ⅳ.恐怖(Epouvante)
Ⅴ.妻(L'épouse)
Ⅷ.首飾り(Le collier)
Ⅸ.かなえられた祈り(Prière exaucée)

~休憩~

「ハラウィ~愛と死の歌」(Harawi - Chant d'Amour et de Mort)[1945](全12曲)
Ⅰ.お前、眠っていた街よ(La ville qui dormait, toi)
Ⅱ.こんにちは、お前、緑の鳩よ(Bonjour toi, colombe verte)
Ⅲ.山々(Montagnes)
Ⅳ.ドゥンドゥ チル(Doundou Tchil)
Ⅴ.ピルーチャの愛(L'amour de Piroutcha)
Ⅵ.惑星の反覆(Répétition planétaire)
Ⅶ.さようなら(Adieu)
Ⅷ.音節(Syllabes)
Ⅸ.階段は繰り返し言う、太陽の身振り(L'escalier redit, gestes du soleil)
Ⅹ.愛の星鳥(Amour oiseau d'étoile)
ⅩⅠ.星のカチカチ(Katchikatchi les étoiles)
ⅩⅡ.闇のなかに(Dans le noir)

~アンコール~
メシアン/なぜ?(Pourquoi?)

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今年生誕100年にあたるフランスの作曲家オリヴィエ・メシアン(Olivier Eugène Prosper Charles Messiaen: 1908.12.10, Avignon - 1992.4.27, Clichy)のもとで学んだ2人-奈良ゆみと藤井一興-によるメシアンのコンサートを聴いた。

最初に藤井のソロで「プレリュード」からの2曲が演奏され、その後、奈良も登場して全9曲からなる歌曲集「ミのための詩」からの抜粋(5曲)が歌われた。
後半は12曲からなる歌曲集「ハラウィ~愛と死の歌」全曲が演奏された。

メシアンの歌曲はあたかも高度な技巧を要するピアノ独奏曲に、難度の高い歌声が付いた曲という印象だ。
とにかくピアノパートはソロの曲と同様色彩感が満載である。
藤井はピアノの蓋を小さく開けるにとどめたが、その判断は正解だったであろう。
全開で弾こうものならば万華鏡のようにきらびやかなピアノパートが歌声を覆ってしまったかもしれない(藤井氏なら全開でもうまくバランスをとったかもしれないが)。

前半の「ミのための詩」(ミというのはメシアンの最初の夫人クレール・デルヴォスの愛称とのこと)からの抜粋も良かったが、この日の目玉はやはり後半の「ハラウィ~愛と死の歌」である。
全12曲で約1時間、歌、ピアノともにかなりの難曲と感じたが、はじめて聴く私にとってもとっつきにくさはあまり無く、むしろぐいぐい惹きこまれるものを感じたのは音楽自体の力と演奏者の力量の両方によるものだろう。
ハラウィとは、「現在のペルー、すなわちスペインに占領される前のインカ帝国で話されていたケチュア語で、抗いようのない、それでいて成就しない愛を思い起こさせる言葉」とのこと(プログラムのクロード・サミュエルの解説による)。
テーマは主人公の娘と恋人ピルーチャをめぐる愛と死である。
第1曲「お前、眠っていた街よ」は詩の各行最後にあらわれる"toi"(お前)で歌声部が高く上昇するが、この響きは曲集全体に頻繁にあらわれる。
第2曲「こんにちは、お前、緑の鳩よ」のメロディーはほかの曲にもあらわれる印象的なものである。自然への感情が表現されているが、「緑の鳩」とは恋人ピルーチャを指しているようである。
第3曲「山々」は高音域の独特なリズムによる和声と激しく重い低音域を幅広く使ったドラマティックなピアノパートにのって、山の色彩と闇が語られる。
第4曲「ドゥンドゥ チル」は何回"doundou tchil"という掛け声が繰り返されるか数えてみたくなるほど印象的な曲で、恋人ピルーチャへ直接語りかける。土俗的なエネルギーを感じさせるピアノパートも非常に効果的である。
第5曲「ピルーチャの愛」は官能的な響きで娘と恋人ピルーチャの対話が交代するが、ピルーチャの"ahi!"という低い声の表現に情念が込められていた。ちなみにピルーチャ自身の言葉が歌われるのはこの曲のみである。
第6曲「惑星の反覆」はラヴェルの「マダガスカル島民の歌」を思い出させる雰囲気で、現地の言葉を模したかのような言葉(mapa nama lila tchil ...)がある時は激しく、ある時は念仏のようにぶつぶつと語られる。
第7曲「さようなら」は最も長い曲で、第2曲や第3曲の響きのエコーが取り入れられ、恋人との別れが歌われる。
第8曲「音節」はピルーチャへの未練が滲み出ているような詩で"pia pia pia, doundou tchil"など早口の掛け声がここでも多数あらわれ印象的だった。ここでも"pia"の数を数えたくなる。
第9曲「階段は繰り返し言う、太陽の身振り」は畳み掛けるように歌われ弾かれる。この曲では1語も現地語もどきが出てこないが、「空、水、時」という言葉が順番を入れ替えながら繰り返しあらわれ、永遠に続くかのようだ。
第10曲「愛の星鳥」は繊細で透明感のある穏やかな曲。鳥の鳴き声にこだわりをもったメシアンならではの作品だろう。「空の下でひっくり返ったお前の頭」といった表現は、彼がこの歌曲集を語るうえで引き合いに出したというRoland Penroseの"Seeing is Believing"という絵画からの影響を確かに感じさせる。
第11曲「星のカチカチ」は"Katchikatchi"という表現が星のきらめきをあらわしているかのようだ。ピアノは荒々しい和音や細かい高音のきらめき、さらにグリッサンドも使用され、歌声もリズミカルに進行し、最後に"ahi!"と叫んであっという間に終わる。
最後の第12曲「闇のなかに」は再び第2曲の歌い出しの響きが回帰され、歌曲集の枠構造を形成している。歌は途切れ途切れで、長いピアノ間奏が頻繁にはさまれる。ピアノパートはガラスのように繊細で静かに響く。最後は全く静かに締めくくられる。

はじめて聴く奈良ゆみの声は清澄でリリックな声をもっていた。
聴く前は近現代を得意とする歌手特有の深みのある官能的な声をイメージしていたのだが、全く正反対の声だったのが意外だった。
天性の美声や技巧に長けているというよりも、むしろ長年の精進によって身につけた蓄積が花開いたという印象である。
低声は若干出しにくそうな箇所もあったが、そうした箇所すら表現の一部にとりこんでしまう。
一方高音は張りと強さ、そしてしなやかさがあった。
ドラマティックソプラノではない彼女は最初、この曲集を歌うのをためらったというが、今では「私の歌のバイブル」と言うほどの重要な位置を占めているようだ。
この原初のエネルギーとでもいいたくなるような力強さが要求される長大な作品群を彼女は全力で見事に歌いきった。

藤井一興の演奏はソロ演奏も含めて全く非の打ちどころがない素晴らしさだった。
色彩感が豊かで、響きのバランスも絶妙。
メシアンの音が軽快に息づいていた。
こみ入ったメシアンの書法を完全に自分のものとして完璧に演奏する手腕にはただただ脱帽である。
もっと彼の演奏を聴いてみたいと思った。

メシアンの歌曲創作は20代から30代に集中している。
歌詞はほかの詩人(メシアンの母親)からの引用はあるものの、基本的にすべてメシアンの自作である。
奈良ゆみ自身のメシアン歌曲全集のCD(ジェイ・ゴットリーブのピアノ)を会場で購入したが、CD2枚におさまる31曲に過ぎない(ほかに「ヴィヨンの2つのバラード」(1921)というのがあるようだが、何故収録されなかったのかは調べがつかなかった)。
この2枚、わくわくしながら聴き続けられる魅力的な響きをもった作品と演奏であった。

素晴らしい演奏で、あらたな歌曲との出会いを与えてくれた奈良さんと藤井氏に心から感謝したい。

「あなたの歌唱は感動と感受性にあふれています。・・・非常に感動的な、すばらしい演奏をして下さって本当にありがとう」(メシアンの奈良ゆみへの手紙から)

Nara_fujii_2008_chirashi ←コンサートのちらし

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ルチア・ポップ没後15年に寄せて:歌曲ディスコグラフィ

ソプラノ歌手のルチア・ポップ(Lucia Popp: 1939.11.12, Uhorška Veš (Bratislava) - 1993.11.16, München)が1993年に亡くなったことを記した新聞記事を読んだ時はまさに青天の霹靂だった。
というのもその前年に彼女の東京初の歌曲リサイタルを聴いたばかりだったから。
井上直幸(彼も故人となってしまった!)との初共演はR.シュトラウスやマーラー、それにシューマン「女の愛と生涯」などポップの十八番ばかりだった。
サントリーホールに響き渡った美しい声とチャーミングな笑顔からはその翌年の早逝を予感させるものは全くなかった。
F=ディースカウとともにサヴァリシュ指揮でブラームス「ドイツ・レクイエム」も歌ったが、あまりにもリートのコンサートのラッシュ時期だったため聴かなかったのが惜しまれる。
1993年はアーリーン・オジェーとルチア・ポップ、2人の偉大なリート歌手を失った年だった。
奇しくも2人ともグレアム・ジョンソンがハイペリオン・レーベルで進めていたシューベルト歌曲全集でそれぞれ1枚ずつ担当して素敵な録音を残してくれた。
あれから15年も経ってしまったが、彼女の歌唱の魅力は全く色あせることがない。

ルチア・ポップの没後15年を記念して彼女の歌曲を歌った録音をまとめてみた。
彼女の歌はきめの細かいヴィブラートを伴った細身の搾り出すような声が浮世離れした透明感をもっていて、澄んで美しく、しかし理知的で誇張のない表現力は聴き手の心にそっと忍び込む。
女優出身であることが頷けるほどの愛らしい美貌も含めて魅力的な歌手だった。
リートではブラームスやマーラー、シュトラウスあたりが彼女のお気に入りのようだが、お国物のドヴォジャークの歌曲も多くの機会に歌っているのが目を惹く。
ピアニストはオーストラリア出身でイギリスを本拠に活動したジェフリー・パーソンズ(1929-1995)と、スラヴ系米国人のアーウィン・ゲイジ(1939-)と共演する機会が多かったようだ。
日本では関西で初のリサイタルをサヴァリシュと行い、後に東京初のリサイタル(同時に最後にもなってしまった)を井上直幸と行った。
ここで作成したディスコグラフィはピアノ共演による録音に絞ったが、オケ共演のシュトラウス「4つの最後の歌」(テンシュテットとティルソン・トマス指揮の2種類)やマーラー「少年の魔法の角笛」なども彼女の代表作として忘れてはならないだろう。
また、N響と日本でも披露したオルフ「カルミナ・ブラーナ」も録音を残しており、彼女の美声が堪能出来る(PAL方式ならDVDで音に合わせた映像を見ることが出来る。YouTubeにもアップされているので興味のある方はご覧になってください)。

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●Recital Covent Garden 1975
Popp_fischer_1975Gala: GL 336
録音:1975年4月13日, Covent Garden

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Georg Fischer(ゲオルク・フィッシャー)(P)

Dvořák(ドヴォジャーク)

Five Evening Songs, Op.31(5つの夕べの歌)
1. No.1:Visions of heaven I fondly paint(私が空を見たら)
2. No.2:This I would ask each tiny bird(小さなお前たち、小鳥よ)
3. No.3:Like a limetree am I(私は茂った菩提樹のように)
4. No.4:All ye that labour, come to me(お前たち悩める者は私のもとに来なさい)
5. No.5:All through the night a bird will sing(鳥は夜を通して歌いつづける)

Wolf(ヴォルフ)

Mörike-Lieder(メーリケの詩による歌曲) 
6. Nimmersatte Liebe(飽くことのない愛) 
7. Bei einer Trauung(ある結婚式で)
8. Verborgenheit(世を逃れて)
9. Im Frühling(春に)
10. Agnes(アグネス)
11. Mausfallensprüchlein(ねずみ捕りのおまじない)

Schubert(シューベルト)
 
12. Non t'accostar all'urna, D688-1(骨壷に近よるな)
13. Mio ben ricordati, D688-4(愛しき者よ、思い出して)
14. Da quel sembiante apprèsi, D688-3(顔でわかった)
15. Der Alpenjäger, D524b(アルプスの狩人)
16. Der blinde Knabe, D833(盲目の少年)
17. Lachen und Weinen, D777(笑ったり泣いたり)
18. Die junge Nonne, D828(若い尼僧)
19. Klage an der Mond, D436(月に寄せる嘆き)
20. Lied der Anne Lyle, D830(アン・ライルの歌)
21. Ganymed, D544(ガニュメデス)

22. An die Musik, D547(音楽に寄せて)

スタジオ録音で聴けないような珍しいレパートリーを多数聴ける貴重なライヴ音源。
若きポップの素直な表現もみずみずしく、彼女には珍しいヴォルフのメーリケ歌曲が聴けるのがうれしい。
「春に」でのファンタジーは素晴らしかった。
またお国もののドヴォジャークは作品の魅力を彼女の真に迫った名唱で堪能できる。
フィッシャーもポップと一体となった演奏を聴かせている。

●スラヴ歌曲集
Popp_parsons_dvorakクラウンレコード: PALETTE/ACANTA: PAL-1092
録音:1979年8月24-26日, Bavaria Studio, München

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)

ドヴォルザーク(Dvořák)作曲

“民謡の調べで”作品73(Im Volkston) 
1. No.2:娘が草を刈っていた(Žalo dievča, žalo trávu)
2. No.3:ああ、ここにはないの(Ach, není tu)
3. No.4:エイ、俺の馬は天下一(Ej, mám já koňa faku)
4. No.1:おやすみ(Dobrú noc)

プロコフィエフ(Prokofieff)作曲

“ロシア民謡(独唱用編曲)”作品104より(Aus "Russische Volkslieder")
5. No.10:茶色の瞳(Кари глазки)
6. No.2:緑の木立(Зелёная рощица)
7. No.12:修道僧(Чернец)
8. No.5:白い小雪(Снежки булыу)

コダーイ(Kodály)作曲

“ピアノと声楽のためのハンガリー民俗音楽”より(Aus "Ungarische Volksmusik")
9. 森は緑の時がきれい(Akkor szép az erdö mikor zöld)
10. 若さはあの鷹のよう(Ifjúság mint sólyom madár)
11. 馬車、荷車、馬車、橇(Kocsi szekér, kosci szán)
12. 恋人を呼ぶ(Elkiáltom magamat)

ヤナーチェク(Janáček)作曲

“モラヴィアの民俗詩による歌曲”より(Aus "Mährische Volkspoesie in Liedern")
13. 恋(Łáska)
14. 分からないの(Nejistota)
15. 歌う娘(Zpĕvulenka)
16. あの人の馬(Koníčky milého)
17. ムギナデシコ(Koukol)
18. ハシバミの実(Oříšek léskový)
19. 花の魔力(Kvítí milodĕjné)
20. 手紙(Psaníčko)
21. 慰めの涙(Slzy útěchou)

パーソンズの絶妙な演奏と共に知られざるスラヴ系歌曲の魅力を教えてくれた名盤。
プロコフィエフの「修道僧」はそのコミカルで早口な表現が印象的だが、ドヴォルザークのほの暗い「おやすみ」は胸に迫ってくる。
過去にこの盤を扱った記事を書いているので興味のある方はそちらもどうぞ。

●シューマン歌曲集
Popp_parsons_schumann日本コロムビア: DENON: CO-1866
録音:1980年5月20,22日, バイエルン放送第3スタジオ

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)

シューマン(Schumann)作曲

「女の愛と生涯」作品42(Frauenliebe und -leben)
1. No.1:あの方にはじめてお会いして以来(Seit ich ihn gesehen, glaub ich blind zu sein) 
2. No.2:だれよりもすばらしいお方!(Er, der Herrlichste von allen) 
3. No.3:なにがどうなっているのやらわかりません(Ich kann's nicht fassen, nicht glauben) 
4. No.4:わたしの指にはまっている指環よ(Du Ring an meinem Finger) 
5. No.5:手伝ってちょうだい、妹たち(Helft mir, ihr Schwestern) 
6. No.6:親しい友、あなたは(Süßer Freund, du blickest mich verwundert an) 
7. No.7:わたしの心に、わたしの胸に(An meinem Herzen, an meiner Brust) 
8. No.8:あなたはわたしにはじめて苦しみをお与えになりました(Nun hast du mir den ersten Schmerz getan) 

9. もう春だ 作品79の24(Er ist's) 
10. 春のよろこび 作品125の5(Frühlingslust) 
11. 春の挨拶 作品79の4(Frühlingsgruß) 
12. ゆきのはな 作品79の27(Schneeglöckchen) 
13. はじめての緑 作品35の4(Erstes Grün) 
14. わたしの庭 作品77の2(Mein Garten) 
15. ばらよ、かわいいばらよ! 作品89の6(Röselein, Röselein!) 
16. 愛らしく、やさしいばらやミルテで 作品24の9(Mit Myrten und Rosen) 
17. ミニョン 作品79の29(Mignon "Kennst du das Land") 
18. わたしの手をのばして、ああ雲よ 作品104の5(Reich mir die Hand, o Wolke)

ポップの録音した唯一の「女の愛と生涯」が聴けるが、それ以外のレパートリーの選曲もよく考えられている。
「わたしの手をのばして、ああ雲よ」での壮大な歌いぶりは印象的である。

●Popp: Schubert, Schoenberg, Strauss, Dvořák, Brahms
Popp_bbc_1983_1980BBC LEGENDS: BBCL 4148-2
録音:1983年8月30日, Queen's Hall, Edinburgh(1-16)
1980年8月13日, Queen Elizabeth Hall, Edinburgh(17-29)

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Irwin Gage(アーウィン・ゲイジ)(P)(1-16)
Geoffrey Parsons(ジェフリー・パーソンズ)(P)(17-29)

Schubert(シューベルト)

1. An mein Herz, D860(わが心に)
2. Der Jüngling an der Quelle, D300(泉のほとりの若者)
3. Jägers Abendlied, 368(狩人の夕べの歌)
4. Der Einsame, D800(独りずまい)

Schoenberg(シェーンベルク)

Vier Lieder, Op.2(4つの歌)
5. No.1: Erwartung(期待)
6. No.2: Schenk mir deinen goldenen Kamm(あなたの金の櫛を私にください)
7. No.3: Erhebung(高揚)
8. No.4: Waldsonne(森の日射し)

Strauss(シュトラウス)

Drei Lieder der Ophelia, Op.67/1(オフィーリアの3つの歌)
9. No.1: Wie erkenn' ich mein Treulieb vor andern nun?(私の恋人を見分けるしるしはなんでしょう)
10. No.2: Guten Morgen, 's ist Sankt Valentinstag(おはよう、今日は聖ヴァレンタインさまの日)
11. No.3: Sie trugen ihn auf der Bahre bloß(あのひとはむき出しの顔のまま棺にいれられた)

12. Mein Auge, Op.37 No.4(私の目)
13. Meinem Kinde, Op.37 No.3(わが子に)
14. Die Zeitlose, Op.10 No.7(いぬさふらん)
15. Hat gesagt - bleibt's nicht dabei, Op.36 No.3(言いました-それだけでは済みません)
16. Allerseelen, Op.10 No.8(万霊節)

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Dvořák(ドヴォジャーク)

V národním tónu, Op.73(「民謡の調べで」)
17. No.1: Dobrú noc, má mila(おやすみ)
18. No.2: Žalo dievča, žalo trávu(娘が草を刈っていた)
19. No.3: Ach, niní, niní tu, co by mě těšilo(ああ、ここにはないの)
20. No.4: Ej, mám já koňa faku(エイ、俺の馬は天下一)

Mahler(マーラー)

Aus "Lieder und Gesänge"(「歌曲集」より)
21. Starke Einbildungskraft(たくましい想像力)
22. Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald(私は喜んで緑の森を歩いた)
23. Ablösung im Sommer(夏の交代)
24. Um schlimme Kinder artig zu machen(いたずらっ子をしつけるために)

Brahms(ブラームス)

25. Es steht ein Lind, Wo033 No.41(菩提樹が立っている)
26. Sehnsucht, Op.49 No.3(あこがれ)
27. We kumm ich dann de Pooz erenn?, Wo033 No.34(どうやってドアを入ったらいい)
28. Die Trauernde, Op.7 No.5(なげく娘)
29. In stiller Nacht, Wo033 No.42(静かな夜に)

来日公演でも披露したシェーンベルクの「4つの歌」が聴けるのが貴重。
お馴染みのレパートリーに加えて、シューベルトの「狩人の夕べの歌」のような珍しい作品も混ざっているのがうれしい。

●PROKOFJEW, KODÁLY, DVOŘÁK, MAHLER, BRAHMS
Popp_parsons_salzburgORFEO: C 363 941 B
録音:1981年8月18日, Mozarteum Großer Saal, Salzburg (live)

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Geoffrey Parsons(ジェフリー・パーソンズ)(P)

Prokofjew(プロコフィエフ)

Aus "Russkie narodnye pesni, Op. 104" (「ロシア民謡」より)
1. Zelënaâ roŝica(緑の木立)
2. Snežki belya(白い小雪)
3. Černec(修道僧)

Kodály(コダーイ)

Aus "Magyar népzene"(「ハンガリー民俗音楽」より)
4. Akkor szép az erdö(森は緑の時がきれい)
5. Kocsi szekér(馬車、荷車、馬車、橇)
6. Ifjúság mint sólyommadár(若さはあの鷹のよう)

Dvořák(ドヴォジャーク)

"V národním tónu, Op. 73"(「民謡の調べで」) 
7. No.1:Dobrú noc(おやすみ)
8. No.2:Žalo dievča(娘が草を刈っていた)
9. No.3:Ach není, není tu(ああ、ここにはないの)
10. No.4:Ej, mám já koňa faku(エイ、俺の馬は天下一)

Mahler(マーラー)

Aus "Des Knaben Wunderhorn"(「少年の魔法の角笛」より)
11. Starke Einbildungskraft(たくましい想像力)
12. Ich ging mit Lust(私は喜んで緑の森を歩いた)
13. Ablösung im Sommer(夏の交代)
14. Nicht Wiedersehen(二度と会えない)
15. Um schlimme Kinder artig zu machen(いたずらっ子をしつけるために)

Brahms(ブラームス)

Aus "Deutsche Volkslieder"(ドイツ民謡より)
16. Es steht ein Lind [Wo033 No.41](菩提樹が立っている)
17. Sehnsucht [Op.49 No.3](あこがれ)
18. We komm ich denn zur Tr herein? [Wo033 No.34](どうやってドアを入ったらいい)
19. Die Trauernde [Op.7 No.5](なげく娘)
20. In stiller Nacht [Wo033 No.42](静かな夜に)

Mozart(モーツァルト)

21. Oiseaux, si tous les ans, KV284d(鳥よ、年ごとに)

Rachmaninov(ラフマニノフ)

22. Siren', Op. 21-5(ライラック)

Puccini(プッチーニ)

23. O mio babbino caro (aus "Gianni Schicci")(私のお父さん:「ジャンニ・スキッキ」より)

Dvořák(ドヴォジャーク)

24. Lied an den Mond (aus "Rusalka")(月に寄せる歌:「ルサルカ」より)

Lehár(レハール)

25. Vilja-Lied (aus "Die lustige Witwe")(ヴィリヤの歌:「メリー・ ウィドウ」より)

ライヴならではの熱気の感じられる録音である。
プロコフィエフのリズミカルな「修道僧」ではポップ、パーソンズともども気迫のこもった演奏を聴かせている。
それにしてもドヴォジャークの「おやすみ」の何と美しいこと!

●Popp: Schubert, Mozart, Dvořák, Mahler, R.Strauss
Popp_bbc_1982_1991BBC LEGENDS: BBCL 4025-2
録音:1982年3月1日, St. John's Smith Square, London(1-10)
1991年7月8日, St. John's Smth Square, London(11-22)

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Geoffrey Parsons(ジェフリー・パーソンズ)(P)(1-10)
Irwin Gage(アーウィン・ゲイジ)(P)(11-22)

Mozart(モーツァルト)

1. Ridente la calma, K.152(K210a)(静けさがほほえみながら)
2. Als Luise die Briefe ihres ungetreuen Liebhabers verbrannte, K. 520(ルイーゼがつれない恋人の手紙を焼いたとき)
3. An Chloe, K. 524(クローエに)

Schubert(シューベルト)

4 Canzonen, D688(4つのカンツォーネ)
4. No.1: Non t'accostar all'urna(骨壷に近よるな)
5. No.2: Guarda, che bianca luna(見よ、白き月)
6. No.3: Da quel sembiante appresi(顔でわかった)
7. No.4: Mioben ricordati, se avvien, ch'io mora(愛しき者よ、思い出して)

8. Daß sie hier gewesen, D775(ここにいたこと)
9. Wonne der Wehmut, D260(悲しみの喜び)
10. An Silvia, D891(シルヴィアに)

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Dvořák(ドヴォジャーク)

11. V tak mnohém srdci mrtvo jest, Op.83 No.2(死は多くの人の心を占める:「愛の歌」より)
12. Mé srdce často v bolesti (from "Cypřiše")(私の心は悲しみに沈む:「糸杉」より)
13. Ó byl to krásný zlatý sen (from "Cypřiše")(それは何とすばらしい夢だったことか:「糸杉」より)

Mahler(マーラー)

14. Rheinlegendchen(ラインの伝説)
15. Ablösung im Sommer(夏の交代)
16. Wo die schönen Trompeten blasen(美しいトランペットの鳴り響くところ)
17. Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald(私は喜んで緑の森を歩いた)
18. Wer hat dies Liedlein erdacht?(誰がこの歌をつくったの?)

Strauss(シュトラウス)

19. Himmelsboten zu Liebchens Himmelbett, Op.32 No.5(恋人への天の使者)
20. Ein Obdach gegen Sturm und Regen, Op.46 No.1(風雨をしのぐ宿)
21. Morgen! Op.27 No.4(明日!)
22. Wiegenliedchen, Op.49 No.3(子守歌)

パーソンズ、ゲイジといった頻繁に共演していた名パートナーたちとの実演の記録が聴けるのが貴重である。
彼女の歌うモーツァルトの歌曲というのは意外と珍しいのではないか。

●マーラー、ブラームス歌曲集
Popp_parsons_brahms_mahler日本フォノグラム: PHILIPS: 35CD-3138
録音:1983年1月, München

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)

ブラームス(Brahms)作曲

1. 娘の呪い 作品69の3(Mädchenfluch) 
2. 早まった誓い 作品95の5(Vorschneller Schwur) 
3. 娘の歌 作品107の5(Mädchenlied "Auf die Nacht in der Spinnstub'n") 
4. 娘の歌 作品95の6(Mädchenlied "Am jüngsten Tag ich aufersteh'") 
5. 娘の歌 作品85の3(Mädchenlied "Ach, und du mein kühles Wasser!") 
6. 娘は語る 作品107の3(Das Mädchen spricht) 
7. なげく娘 作品7の5(Die Trauernde) 
8. あこがれ 作品14の8(Sehnsucht "Mein Schatz ist nit da") 
9. どうやってドアを入ったらいい(Wie komm' ich denn zur Tür herein) 
10. 静かな夜に(In stiller Nacht) 
11. 菩提樹が立っている(Es steht ein Lind') 
12. 雨の歌(Regenlied "Regentropfen aus den Bäumen")

マーラー(Mahler)作曲

13. 春の朝(Frühlingsmorgen) 
14. 森の小鳥(Waldvögel "Ich ging mit Lust durch einen grünen Wald") 
15. 二度と会えない(Nicht Wiedersehen!) 
16. 別離(Scheiden und Meiden) 
17. いたずらっ子をしつけるために(Um schlimme Kinder artig zu machen) 
18. ハンスとグレーテ(Hans und Grete) 
19. たくましい想像力(Starke Einbildungskraft) 
20. 夏の交代(Ablösung im Sommer) 
21. つらなる想い(Erinnerung)

ブラームスが「娘」を歌った作品をずらっと並べたプログラミングは新鮮であり、ブラームスの多様性を楽しめる。
とりわけ「早まった誓い」の美しい歌いぶりは印象深い。
マーラーは彼女がしばしばリサイタルでも歌っていた十八番をスタジオ録音したものとして貴重である。

●幸福:シューベルト歌曲を歌う
Popp_gage_schubert_2東芝EMI: EMI Angel: EAC-90240 (LP)
録音:1983年11月1-6日, Abbey Road Studios

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
アーウィン・ゲイジ(Irwin Gage)(P)

シューベルト(Schubert)作曲

1. わが心にD.860(An mein Herz) 
2. 流れD.693(Der Fluss) 
3. 少年D.692(Der Knabe) 
4. ばらD.745(Die Rose) 
5. 蝶D.633(Der Schmetterling) 
6. ますD.550(Die Forelle) 
7. さすらい人が月に寄せてD.870(Der Wanderer an den Mond) 
8. 独りずまいD.800(Der Einsame) 
9. あふれる愛D.854(Fülle der Liebe) 
10. 若い尼僧D.828(Die junge Nonne) 
11. 水の上で歌うD.774(Auf dem Wasser zu singen) 
12. 糸を紡ぐグレートヒェンD.118(Gretchen am Spinnrade) 
13. 漁師のくらしD.881(Fischerweise) 
14. 泉のほとりの若者D.300(Der Jüngling an der Quelle) 
15. シルヴィアにD.891(An Sylvia) 
16. 幸福D.433(Seligkeit)

私がはじめて買ったポップのLPレコード。
そのジャケット写真の美しさにも惹かれたものだった。
F.シュレーゲルの詩による「流れ」という曲のこのうえない美しさを知ったのもこのレコードが最初だった(ゲイジの演奏もきわめて美しい)。
解説の原田茂生氏曰く「上品でありながら適度の甘さがあり、声のまろやかさと歌いくちの切れの良さとが両立しているところは、例えばアメリングの成熟とマティスの清雅を加え合わせたようなともいえよう。」

●R.シュトラウス:歌曲集
Popp_sawallisch_straussEMIミュージックジャパン: EMI CLASSICS: TOCE-14189
録音:1984年9月10-13日 Kloster Seeon, West Germany

ルチア・ポップ(Lucia Popp)(S)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)(P)

R.シュトラウス(Strauss)作曲

8つの歌 作品10(Acht Lieder)
1. No.1:献呈(Zueignung)
2. No.2:なにも(Nichts)
3. No.3:夜(Die Nacht)
4. No.4:ダリア(Die Georgine)
5. No.5:忍耐(Geduld)
6. No.6:もの言わぬものたち(Die Verschwiegenen)
7. No.7:いぬさふらん(Die Zeitlose)
8. No.8:万霊節(Allerseelen)
   
3つの愛の歌(Drei Liebeslieder)
9. 赤いばら(Rote Rosen)   
10. 目ざめたばら(Die erwachte Rose)   
11. 出会い(Begegnung)
   
12. 高鳴る胸 作品29-2(Schlagende Herzen)
13. 帰郷 作品15-5(Heimkehr)
14. 白いジャスミン 作品31-3(Weisser Jasmin)
15. 子守歌 作品41-1(Wiegenlied)
16. わが子に 作品37-3(Meinem Kinde)
17. ひそやかな歌 作品41-5(Leise Lieder)
18. ひそかな歌 作品39-1(Leises Lied)
19. 悪いお天気 作品69-5(Schlechtes Wetter)
20. 15ペニヒで 作品36-2(Für fünfzehn Pfennige)
21. 父が言いました 作品36-3(Hat gesagt - bleibt's nicht dabei)

R.シュトラウスの歌曲はやはり女声で聴くと一層映える。
古今のシュトラウス歌曲集の中で最も魅力的な1つだと思う。
ポップの聴き手の心をくすぐるような魅力と、サヴァリッシュの冴え渡った響きの相乗効果で最後まで一気に聴きとおしてしまう。
最近再発売されたのは有難いが、歌詞対訳が一切ついていないのは残念(最初にLP発売された時にはついていた筈だが)。

●ユーゲントシュティール時代の歌曲集(Jugendstil-Lieder)
BMGビクター: RCA Red Seal: BVCC-123
録音:1991年5月3-6日, Schloßpavillon Ismaning

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Irwin Gage(アーウィン・ゲイジ)(P)

ベルク(Berg)作曲

1. 7つの初期の歌(7 frühe Lieder)

シェーンベルク(Schönberg)作曲

2. 4つのリートop.2(4 Lieder)

プフィッツナー(Pfitzner)作曲

3. だから春の空はそんなに青いの?op.2-2(Ist der Himmel darum im Lenz so blau?)
4. 孤独な女op.9-2(Die Einsame)
5. 母なるヴィーナスop.11-4(Venus mater)
6. 捨てられた娘op.30-2(Das verlassene Mägdlein)
7. わたしのまどろみはしだいに浅くなりop.2-6(Immer leiser wird mein Schlummer)

シュレーカー(Schreker)作曲

8. ばらの死op.7-5(Rosentod)
9. 遊糸op.2-1(Sommerfäden)
10. おまえたちはかくも美しい(Sie sind so schön, die milden, sonnenreichen, certräumten Tage)
11. 無限の愛op.4-2(Unendliche Liebe)

R.シュトラウス(Strauss)作曲

12. オフィーリアの3つの歌op.67-1~3(3 Lieder der Ophelia)
13. 風雨をしのぐ宿op.46-1(Ein Obdach gegen Sturm und Regen)
14. 青い夏op.31-1(Blauer Sommer)
15. 子守歌op.49-3(Wiegenliedchen)
16. わたしはただようop.48-2(Ich schwebe)

爛熟した時代の歌の数々はレパートリー的にも貴重な録音であった。

●Schubert: The Complete Songs, Vol. 17
Popp_johnson_schubertHyperion: CDJ33017
録音:1992年4月7-9日, Rosslyn Hill Unitarian Chapel, Hampstead, London

Lucia Popp(ルチア・ポップ)(S)
Graham Johnson(グレアム・ジョンソン)(P)

Schubert(シューベルト)

1. Lied (Mutter geht durch ihre Kammern), D373(歌:母は部屋を通る) 
2. Lodas Gespenst, D150(ローダの亡霊)
3. Klage, D371(嘆き)
4. Lorma, D376(ロルマ)
5. Der Herbstabend, D405(秋の夕べ)
6. Die Einsiedlei, D393(隠棲)
7. Die Herbstnacht (Wehmut), D404(秋の夜:悲しみ)
8. Lied in der Abwesenheit, D416(不在の歌)
9. Frühlingslied, D398(春の歌)
10. Winterlied, D401(冬の歌)
11. Minnelied, D429(愛の歌)
12. Aus 'Diego Manzanares', Ilmerine, D458(「ディエゴ・マンツァナレス」より、イルメリーネ)
13. Pflicht und Liebe, D467(義務と愛)
14. An den Mond, D468(月に寄せて)
15. Am Tage aller Seelen (Litanei), D343(連祷)
16. Geheimnis (An Franz Schubert), D491(秘密:フランツ・シューベルトに)
17. Am Grabe Anselmo's, D504(アンゼルモの墓で)
18. An die Nachtigall, D497(ナイチンゲールに)
19. Klage um Ali Bey, D496a(アリ・ベイの嘆き)
20. Phidile, D500(フィディレ)
21. Herbstlied, D502(秋の歌)
22. Lebenslied, D508(人生の歌)
23. Leiden der Trennung, D509(別れのつらさ)
24. An mein Klavier, D342(私のピアノに寄せて)

亡くなる前年の録音。
そう思うと感慨深いが、彼女の歌唱はいつも通り緻密で美しい。
シューベルト全集の一環だからこその珍しい選曲も楽しめる。

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YouTubeでのルチア・ポップの映像
R.シュトラウス「4つの最後の歌」~夕映えの中で
http://jp.youtube.com/watch?v=Ur-Is-04SxU
(ショルティ指揮のオケが明るく元気すぎて、死を目前にした心境を綴ったこの曲とそぐわない感はあるものの、1977年の若く美しいポップの澄んだ表現を楽しめます。)

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宮本益光&辛島輝治/シューベルト「白鳥の歌」(2008年12月11日 日暮里サニーホールコンサートサロン)

独演コンサートシリーズ シューベルト三大歌曲集
2008年12月11日(木)19:00 日暮里サニーホールコンサートサロン

Miyamoto_karashima_2008宮本益光(Masumitsu Miyamoto)(BR)
辛島輝治(Teruji Karashima)(P)

シューベルト/「白鳥の歌(Schwanengesang)」D957

第1部
1.愛の便り(Liebesbotschaft)
2.戦士の予感(Kriegers Ahnung)
3.春の憧れ(Frühlingssehnsucht)
4.セレナーデ(Ständchen)
5.我が宿(Aufenthalt)
6.遠い地で(In der Ferne)
7.別れ(Abschied)

 ~休憩~

第2部
8.アトラス(Der Atlas)
9.彼女の絵姿(Ihr Bild)
10.漁師の娘(Das Fischermädchen)
11.街(Die Stadt)
12.海辺にて(Am Meer)
13.影法師(Der Doppelgänger)

 アンコール(シューベルト作曲)
1.鳩の便り(Taubenpost)D965A
2.この世からの別れ(Abschied von der Erde)D829

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JR日暮里駅から2~3分の距離にあるホテルラングウッドの4階にある日暮里サニーホールコンサートサロンで宮本益光構成による6回にわたる「シューベルト三大歌曲集」のシリーズが進行中である。
11日にその宮本益光による「白鳥の歌」のコンサートを聴いた。
ピアニストはベテランの辛島輝治。

まずホテルの場所が分かりづらくしばらく駅前をうろうろしてしまったが、分かってしまえばそれほど遠くなかった。
100席しかないというそのサロンは確かにこじんまりとした空間で、舞台と客席が近い。
宮本自身も語っていたが(軽妙なトークも彼の人気の一因だろう)、演奏者も一番後ろの席の客の顔まで見えるらしい。
音響面では乾いた響きだったように感じたが、リートを聴くには理想的な親密な空間だった。

シューベルトの「白鳥の歌」はレルシュタープ、ハイネ、ザイドルのテキストによる最晩年の深みと抒情の交錯した作品群である。シューベルトのあらゆる要素が詰め込まれた集大成のような歌曲集であり、特に後半のハイネ歌曲では最低限まで音を切り詰め、削ぎ落とし、新たな境地に足を踏み入れてさえいる。これを1人の歌手が歌いとおすのは並大抵のことではないだろう。

宮本の歌唱はとにかく勢いがある。
どの1曲からも熱い思い入れが感じられ、手抜きなく全力投球しているのが伝わってくる。
歩き回ることはないもののかなりアクションも大きく、全身で表現しているのが感じられる(お辞儀をする時も立位体前屈ばりの折り曲げ方である)。
歌の彫りの深さなどはまだこれからかもしれないが、今出来ることをエネルギッシュにぶつけてくるその姿勢は有無を言わさぬ彼独自の世界をつくりあげていて、新鮮でとても良かった。
彼の言うところの「修行」の場をさらに重ねて、さらなる高みをめざしてリートの活性化に一役買ってくれることを今後も期待したい。

辛島輝治との共演は宮本のたっての希望で実現したようだ。
枯淡の境地といったらいいだろうか、軽めの音で静かに淡々と弾き進められる中に、今の演奏家が失いつつある詩情が息づいている。
常に歌手に配慮したバランスを保っていた彼が「影法師」では実に雄弁に和音を響かせていたのが印象深かった。
アンコールで演奏された朗読とピアノのための珍しい「この世からの別れ」(メロドラマと呼ばれるジャンル)では辛島の詩情が最高に発揮されていて心にしみた。

ちなみにこの「この世からの別れ」の朗読、宮本は日本語訳ではなく、オリジナルのドイツ語で語った。
彼の意欲とシューベルトへの愛情、そして辛島氏への敬愛の念が充分伝わってきた気持ちのよいコンサートであった(配布された歌詞対訳も宮本氏自身によるものであった)。

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最近聴いたディスクから(3種のシューベルト)

日々様々な音楽を聴き、それらの感動を文章にしたいと思っていても、ブログで公表しようとすると変にかしこまってしまい、乏しい語彙をひねくりだそうとしているうちに疲れてしまう。
もっと気楽に普段聴いているディスクを紹介する記事を書いてみたいという思いから、「最近聴いたディスクから」というシリーズを試みてみたい。

あまり踏み込んだ文章ではないと思うが、記事を読んでくださった方々がちょっと面白そうな演奏だなと思えるような内容を心掛けたい。

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イモジェン・クーパーの弾くシューベルトのピアノ・ソナタ

Cooper_schubert_2SCHUBERT / THE LAST SIX YEARS 1823-1828: VOL. 2
シューベルト/最後の6年間 1823年~1828年:第2巻

Ottavo: OTR C58714
録音:1987年5月27~29日, Henry Wood Hall, London

Imogen Cooper(イモジェン・クーパー)(P)

シューベルト作曲
1.ソナタ イ長調D959
2.11のエコセーズD781
3.ソナタ ハ長調D840「レリーク」

イギリス人ピアニスト、イモジェン・クーパーの弾く音は一音一音がとても磨きぬかれている。
そして気品があり、情感もとても自然に表現されている。
その素直さと彼女らしい構築感のセンスの良さが、シューベルトを弾くととても生かされるように思う。
D959はシューベルト最後の年の3つのソナタの1つだが、クーパーの奏でる音楽の魅力的なことといったらちょっと比類がない。
第2楽章の不気味なほど深遠な世界も正面から対峙した魅力的な演奏だ。
D840のレリークは第3、4楽章が未完のため演奏される機会があまり多くはないが、スヴャトスラフ・リヒテルは全く補完することなく、未完のまま4つの楽章を演奏していた(唐突にぶつ切れるにもかかわらず驚くほど素晴らしい)。
クーパーは完成された2つの楽章だけを弾いているが、簡素なメロディーからどれほど豊かな音楽が生み出されていることだろう。
リヒテル盤と並んで、作品の再評価を促すのではと思えるほど素敵な演奏である。
間に置かれた「エコセーズ」は4分ほどの小品だが、なんとリラックスしたシューベルティアーデの雰囲気を醸し出していることか。
このシリーズ、全部で6巻あるが、私はそのうち3枚を持っているのみである。
廃盤をライセンス販売しているArkivMusicというサイトで入手できるようなので、ほかの3枚もいずれ聴いてみたい。

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ホルツマイア&ヴィスのシューベルト、ゲーテ歌曲集

Holzmair_wyss_schubert_goethe_2_2SCHUBERT / Goethe-Lieder: VOL. 2
シューベルト/ゲーテ歌曲集

TUDOR: TUDOR 7110
録音:2001年12月19~22日, Angelika-Kauffmann-Saal, Schwarzenberg (Vorarlberg)

Wolfgang Holzmair(ヴォルフガング・ホルツマイア)(BR)
Gérard Wyss(ジェラール・ヴィス)(P)

シューベルト作曲
1.歌人D149
2.食卓の歌D234
3.夜の歌D119
4.釣り人D225
5.湖上にてD543
6.月に寄せて(第2作)D296
7.神とバヤデーレD254
8.川辺にて(第1作)D160
9.涙の中の慰めD120
10.竪琴弾き「孤独にひたりこむ者は」D325
11.竪琴弾き「涙を流してパンを食べたことのない者は」D478-2(第1版)
12.憧れD123
13.あらゆる姿をとる恋人D558
14.竪琴弾きの歌Ⅰ「孤独にひたりこむ者は」D478-1
15.竪琴弾きの歌Ⅱ「涙を流してパンを食べたことのない者は」D478-2
16.竪琴弾きの歌Ⅲ「戸口に私は忍び寄り」D478-3
17.宝掘りD256
18.誰が愛の神々を買うのかD261
19.プロメテウスD674
20.恋人のそばD162
21.スイス人の歌D559
22.恋はあらゆる道にあるD239-6
23.連帯の歌D258
24.金細工職人D560
25.歓迎と別れD767

オーストリア生まれのホルツマイアとスイス生まれのヴィスのコンビは、数多くの歌曲の録音を作っており、来日公演を聴いたこともある。
以前プランクの「仮面舞踏会」のCDでホルツマイアがフランス語のエスプリを若干生真面目だがしっかりと表現していたのに感心したことがあったが、やはり本領はシューベルトのようなドイツリートだろう。

このCDをプレーヤーにかけると、最初に「歌人」D149が演奏される。
なにげなく聴いていたら普段聴き馴染んでいるバージョンと随分違う。
解説書を見るとホルツマイア自身がこんなことを言っていた。
「このCDに録音しためったに歌われない版は、長いピアノ間奏をかなり放棄したことにより、とりわけスムーズな演奏を可能にしている」

「神とバヤデーレ」のようなF=ディースカウも録音しなかった珍しい作品を取り上げているのはうれしい。
「竪琴弾きの歌」も最も知られている3曲のD478より前に作曲したバージョンが2曲聴けるが、D478の深みがいかに際立っているか、またその境地にすぐに到ったわけではないことが分かり、興味深かった。

ホルツマイアはやはり上手い。
どんな曲を歌ってもたちまち作品の世界に同化して魅力的に聴かせてしまう。
柔らかく朴訥な声質がそのまま生きる「恋人のそば」のような作品だけでなく、厳しい「竪琴弾きの歌」もすんなり感情移入してしまう。
普段明るく幸福感を漂わせている人が深刻な事態に陥り沈み込んでいる時のようなギャップが、ホルツマイアの歌う「竪琴弾きの歌」に感じられる魅力ではないか。
現在最も安心してリートを聴けるバリトン歌手の一人であることは間違いないだろう。

ジェラール・ヴィスは以前に聴いたいくつかの録音では丁寧だが若干淡白で感情表現において物足りない感じを受けることもあったが、このディスクでは驚くほど積極的で雄弁な演奏を聴かせている。
「プロメテウス」での硬質で立体的な演奏、あるいは「歓迎と別れ」でのリズムの立った雄弁な演奏を聴くと、「これがあのヴィス?」と驚いてしまう。
実力を秘めているピアニストのようだ。

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F.プライ&R.グルダの「美しい水車屋の娘」

F_prey_r_gulda_muellerinSCHUBERT / Die schöne Müllerin, D795
シューベルト/美しい水車屋の娘D795

amphion records: amph 20240
録音:2002年7月4~6日, Schüttbau Rügheim

Florian Prey(フローリアン・プライ)(BR)
Rico Gulda(リコ・グルダ)(P)

シューベルト作曲
1.美しい水車屋の娘D795(全20曲)
2.川辺にてD766

2世コンビの共演による若々しい「水車屋」である。
父親は言わずもがな、ヘルマン・プライとフリードリヒ・グルダであり、父親同士も共演しており、2代続けての共演というのはなかなか興味深い。
フローリアン(1959-)の声は確かに父ヘルマンの声質を受け継いでいるのが感じられる(第7曲「焦燥」などで特に感じられる)。
聴いていると、つい父親の舞台が思い出され、懐かしい感慨にふけってしまう。
しかし、あまり厚みやボリューム感はなく、父ヘルマンよりももっと現代的なスマートな声である。
音程はまだ完璧ではないものの、父親のフラット気味の傾向とは異なり、訓練次第で良くなるのではないか。
ヘルマンの前のめり気味になるリズムの癖は息子にはないようで、その点流れが途切れず作品そのものに身をゆだねることが出来る。
カリスマ的な魅力を備えていた父親を超えるのは難しいかもしれないが、清流のように爽快で素直な表現は「水車屋」のような作品で生き生きと魅力を発揮している。
曲者フリードリヒの息子のリコ(1968-)はジャケット写真からは父親よりもっと真っ当な印象を受ける(母親が日本人なので、黒髪である)。
ここでの演奏もみずみずしい表現で、爽やかなピアノを聴かせているが、「焦燥」の後奏のようにかなり振幅の大きな表現も聞かせ、やはり只者ではない予感は感じさせる。

このディスク、「水車屋」の前後に30秒ほど「・・・」というトラックがあり、何かと思ったら水のせせらぎの音であった。
また、最後にアンコールのようにゲーテの詩による「川辺にて」D766が演奏されており、彼らのサービス精神を堪能した。

フローリアンは来年、父ヘルマンが日本で最後に披露した鈴木行一編曲版の「冬の旅」を歌うようである。
ヘルマンの最後の来日を聞き逃した私は、このフローリアンの歌唱を楽しみに待ちたい。

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