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ペーター・レーゼルのベートーヴェン(2008年10月2日 紀尾井ホール)

Roesel_recital_2008紀尾井の室内楽 vol. 9
ペーター・レーゼル ベートーヴェンの真影
ピアノ・ソナタ全曲演奏会 (第1期2008年) 第2回

2008年10月2日(木)19:00開演 紀尾井ホール(1階3列2番)

ペーター・レーゼル(Peter Rösel)(P)
(主催:新日鐵文化財団)

ベートーヴェン(Beethoven)作曲

ピアノ・ソナタ第9番ホ長調 Op. 14-1
 1. Allegro
 2. Allegretto
 3. Rondo: Allegro commodo

ピアノ・ソナタ第30番ホ長調 Op. 109
 1. Vivace, ma non troppo-Adagio espressivo
 2. Prestissimo
 3. Andante, molto cantabile ed espressivo

~休憩~

ピアノ・ソナタ第6番ヘ長調 Op. 10-2
 1. Allegro
 2. Allegretto
 3. Presto

ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調 Op. 57「熱情(Appassionata)」
 1. Allegro assai
 2. Andante con moto
 3. Allegro ma non troppo

[アンコール]
ベートーヴェン/7つのバガテル~第3番ヘ長調Op. 33-3

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前日のイモジェン・クーパーに続き、ペーター・レーゼルのベートーヴェン・リサイタルを聴いた。
今年から2011年まで毎年来日してベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を弾くという企画のようで、すでに9月20日(土)15時開演で同じホールで第1回が催され、第20、17、29番が演奏されたのだが、残念ながらそちらのチケットは入手できなかった。
このシリーズ、すべてライヴ録音されて、キングレコードから順にCD発売されるそうだ。

今回は全曲シリーズの第2回。
前半をホ長調の初期、晩年作品でつなげ、後半はヘ長調、ヘ短調という同主調関係の2曲でまとめたプログラミングである。
関心の中心はやはり「熱情」ソナタだが、古典派の枠を抜け出そうとしているかのような晩年の傑作である第30番や、なかなか実演で接する機会の少ない第6、9番など、どの曲もじっくり向き合うに値する貴重な機会である。

レーゼルは昨年も実演を聴いたが、その時がなんと30年ぶりの日本でのリサイタルだったとのこと。
いかに旧東独出身の彼の知名度が低かったかを物語っている。
その時の演奏があまりにも素晴らしかったので、今回もためらうことなくチケットを購入した。

ソナタ第9番は、細かな音を刻む愛らしい第1楽章、
ターンタタンのリズムが繰り返される箇所の合間に叙情的な歌が挟まれる第2楽章、
奔流のように急速に畳み掛ける第3楽章からなり、緩徐楽章がないコンパクトだが親しみやすい作品である。

ソナタ第30番は、上下に行ったり来たりする音型ではじまり、内面的な深みを感じさせる音楽と交代しながら進む第1楽章、
焦燥感に満ちた強弱のコントラストの際立った短い第2楽章、
そして前2つの楽章のコンパクトさに比べて長大な規模をもつ、美しい歌に満ちた変奏曲の第3楽章という構成である。
第3楽章の標示に"cantabile(歌うように)"という指示が含まれているが、これはベートーヴェンの最後の3つのソナタすべてにあらわれるキーワードで、晩年の彼が新たな境地に足を踏み入れたことを示しているようだ。

ソナタ第6番は、目まぐるしく表情の変わる愛らしくユーモラスな第1楽章、
夢の中のようなおぼろげな寂しさを感じさせる第2楽章、
追いかけっこをしているようなリズミカルで急速な第3楽章からなり、このソナタも第9番同様、緩徐楽章がない。

最後を飾る「熱情」ソナタについては、あまりにも有名で特に紹介は不要だろう。

レーゼルの演奏は、昨年に聴いた演奏同様、全く虚飾を排した真摯な音楽への追求がなんとも素晴らしい。
巷に演奏家の"個性"という名の自己満足が前面に出て、作品そのものが後ろに隠れてしまう演奏の溢れている中、あくまで音楽そのものの核心を思い出させてくれるレーゼルの演奏を「地味」という形容で片付けることは私には出来ない。
第6番の第1楽章では一瞬音を忘れかけ、迷っている箇所があったもののすぐに調子を取り戻し、他のあらゆる箇所は全く危なげない安定したテクニックに裏付けられた豊かな音楽を聴かせてくれた。
特に最後の「熱情」ソナタは圧巻だった。
決して力づくではなく、必要なだけの劇性でこれだけ密度の濃い演奏が可能なのだとあらためて感じさせられた。

前日のこともあったので、眠気覚ましのガムを事前にかみ、演奏に臨んだものの、やはり前半は若干うつらうつらしてしまった。
休憩中に顔を洗い、冷却効果のあるペーパータオルで顔を拭いたところ、これが効果覿面で、後半は完全に眠気が消えて、演奏に集中することが出来た。
次回からはこの手でいこう。

アンコールの可憐なバガテルも含め、ベートーヴェンの広大な世界を最高の演奏でたっぷり堪能することが出来た。
来年の回も今から待ち遠しい。

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