ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンTV放映
15日(金)の夜11時30分~1時45分(高校野球延長による時間変更の可能性あり)に、今年の5月に行われたラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンのハイライトがNHK教育テレビで放映される予定です。
5日東京国際フォーラムホールCでの4公演からの抜粋のようです。
興味のある方はぜひご覧ください!
ttp://www.nhk.or.jp/art/
【特集】
●ラ・フォル・ジュルネ『熱狂の日』の魅力
【公演コーナー】
● ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン『熱狂の日』音楽祭2008
1)ドイツ舞曲 D.820 (シューベルト/ウェーベルン)
管弦楽:ローザンヌ室内管弦楽団
指 揮:クリスティアン・ツァハリアス
2)ミサ曲 第5番 変イ長調 D.678 (シューベルト)
ソプラノ:ユッタ・ベーネルト
メゾ・ソプラノ:マルグリート・ファン・ライゼン
テノール:トマス・ウォーカー
バス:デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン
合唱:カペラ・アムステルダム
管弦楽:ヴュルテンベルク室内管弦楽団
指揮:ダニエル・ロイス
3)ロザムンデ D.797 から
ロマンス「満月は輝き」、「狩人の合唱」 (シューベルト)
メゾ・ソプラノ:林 美智子
合唱:晋友会合唱団
合唱指揮:清水 敬一
管弦楽:フランス国立ロアール管弦楽団
指揮:ペーテル・チャバ
4)ズライカⅠ D.720、ズライカⅡ D.717
愛らしい星 D.861、夜と夢 D.827
若い尼 D.828、きみはわがいこい D.776
さすらい人の夜の歌 D.768、ミューズの子 D.764
トゥーレの王 D.367、糸を紡ぐグレートヒェン D.118
ます D.550、アヴェ・マリア D.839
(以上、シューベルト)
ソプラノ:バーバラ・ヘンドリックス
ピアノ:ルーヴェ・デルヴィンイェル
<収録> 2008年5月5日 東京国際フォーラムホールC
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(8月17日(日)追記)
TV放映前にTVをつけっぱなしで横になっていたらいつのまにか眠ってしまい、目が覚めたらヘンドリックスが「グレートヒェン」を歌っていました。
そんなわけで、その翌日録画したビデオで全編を鑑賞しました。
ツァハリアスはピアニストとしてもLFJに出演していたようですが、今回はドイツ舞曲をヴェーベルンがオケ編曲したものの指揮者としての登場でした。
ヴェーベルンは同郷人シューベルトに対して畏敬の念のようなものがあったのでしょうか、本当に素直にピアノ独奏曲をオーケストラの響きに置き換えていました。
朴訥としたシューベルトの一面がよくあらわれた作品だったと思います。
次のダニエル・ロイス指揮の「ミサ曲第5番」全曲は、この収録とは別の日に同じ演奏者で聴いていたので、その日の感動を再び味わえました。
宗教曲だから確かに厳かではあるのですが、それでもやはりシューベルト、そこここに美しい歌が聴かれます。
会場で聴いていた時には気付かなかったのですが、今回TVで見て、ソリストの配置がS→A→T→Bではなく、A→S→T→Bということに気付きました。
高音歌手を中央にまとめてその周囲を低声歌手が包み込むという意図でしょうか。
宗教曲を普段あまり聴かないので、こういうことが普通なのかどうかは分かりませんが、興味深いことだと思いました。
「ロザムンデ」は当日会場で聴いたものの録画でしたが、全曲だと1時間ぐらいかかるので、今回は2曲だけ親しみやすい曲が放送されました。
「ロザムンデ」のロマンスとして親しまれている「満月は輝き」を歌った林美智子さんは会場で遠目に見た時にも感じましたが、映像で見てもやはり美しく気品の感じられる方でした。
いい声をもっておられるという印象でしたが、曲の悲哀感を出すにはさらに年輪が必要かなという印象です。
「狩人の合唱」は軽快で楽しい小品です。
「ロザムンデ」の中でも最も親しみやすい部類の曲だと思います。
晋友会合唱団はさすがに見事な歌でした。
最後のヘンドリックス&デルヴィンイェルのシューベルト歌曲集はアンコールも含めて当日のプログラム全曲が放送されました。
今回の放送の中でもやはり出色の出来でした。
映像で見ると会場で感じた彼女の印象が甦ります。
確かにふくよかになった彼女の体躯から響く声は豊かさを増していました。
加齢による声の変化は否めませんが、リートの場合はそれが必ずしもマイナス要因にはつながらないのが面白いところです。
時々発音が不明瞭になったり、音程が不安定になるなど、いくつかの気になる点を指摘することは出来ますが、それ以上に彼女の歌の力の強さが上回っています。
彼女の声には特有の粘りがあり、それが歌にコクを与えているように思えます。
それがドイツ人の歌うリートとは全く異なった魅力を作品から引き出すことにつながっているのだと思います。
アンコールの最後に歌われた「アヴェ・マリア」、これはもう聴き手の胸に直接沁みてくる祈りの歌でした。
素晴らしい円熟の歌唱だったと思います。
また、デルヴィンイェルのピアノは、シューベルトの演奏に不可欠な自然さで、作品の明暗を見事に表現していたと思います。
なお、ヘンドリックスの歌った作品の中に「愛らしい星」D861という曲があります。
この曲はその曲調から、これまで軽快でかわいらしい小品というイメージしかなかったのですが、今回TVに表示された字幕を見て、その後、さらに歌詞も確かめてみると、「美しい水車屋の娘」の主人公の最後にも通じる水の底での眠りを望むという深い悲しみが表現されていることが分かりました。それがこの曲の後奏で一瞬あらわれる短調の響きで表現されていたのだなと今になって気付きました。悲しみと喜びが表裏一体となったシューベルトの作品の繊細さをあらためて気付かせてもらった体験でした。
本家ナントの映像なども織り込みながら、ラ・フォル・ジュルネの魅力を多面的に伝えた充実した放送だったと思います。
来年のバッハはどんな感じになるのか今から楽しみです。
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コメント
フランツさん、いつもいい情報有り難うございます。
5月5日は、国際フォーラムに行きましたが、私の聴いた4公演は、今夜の放送とは重なっていません。
当日聴けなかった分を、テレビで聴けるのは有り難いですね。
今夜の放送、忘れないように、テレビ画面の上に、メモを貼り付けておきました。
愉しみにしています。
投稿: Clara | 2008年8月15日 (金曜日) 11時05分
ふーん、おもしろそうですね。
どっちかと言うとご本家ナントのやつを見せてほしい気もします。
投稿: Auty | 2008年8月15日 (金曜日) 14時20分
Claraさん、こちらこそいつもご訪問を有難うございます。
私はロザムンデとヘンドリックスはちょうどこの日に聴き、確かにTVカメラが入っていました。ミサ曲も同じ演奏者で別の日に聴いていて、どれも素晴らしい演奏でした。
GWのあの熱狂をもう1度満喫したいと思います。
Claraさんもお時間の許す限り、ぜひ楽しんでくださいね。
投稿: フランツ | 2008年8月15日 (金曜日) 20時28分
Autyさん、こんばんは。
本家ナントはまた別の演奏者、プログラムのコンサートもあったことでしょう。
私は東京のコンサートでも充分満足しましたが、ナントのコンサートも聴いてみたいですね。
投稿: フランツ | 2008年8月15日 (金曜日) 20時30分
フランツさん、先日は「詩と音楽」にたいへん好意的なコメントをありがとうございました。フランツさんは、人への思いやりだけではなく、作品に対する愛情が深く、作品の感想を日本語で表現する力が卓越していますね。フランツさんに多くのレコード評とか演奏会評をしていただき、作品の真意を広めて欲しいです。また、このたびも素晴らしい記事をありがとうございます。特にシュルツェの「愛しい星」(自分の訳ですみません)とヴィルヘルム・ミュラーの詩を関連づけられた点には、とても共感いたしました。この詩(1814)は、ミュラーの「二つの星」(1817出版)、「孤独な男」(1818)、『美しい水車小屋の娘』から「涙の雨」と「小川の子守歌」、『冬の旅』から「幻日」に共通性があり、シュルツェが解放戦争に参加していたことも、ミュラーと同じですね(「二つの星」と「孤独な男」は、私のHPに拙訳を載せています)。ミュラーの残した文献にシュルツェの名は見あたらないのですが、時代的な共通性だけとは限らないかもしれませんね。このようなお話ができるフランツさんを頼もしく思います。ところで、林美智子さんは、彼女が中学卒業の少し前から知っておりまして、すでに天性の声に恵まれた人と思っていました。年齢がわかってしまうので、これ以上は触れませんが、もし美智子さんがこのページを見た時のためにひとこと「いただいたお皿はまだ毎日使っています(笑)」フランツさん、失礼しました。素敵な内容に感謝します。
投稿: 渡辺美奈子 | 2008年8月18日 (月曜日) 18時10分
渡辺さん、先日は「詩と音楽」のサイトで7曲もの珠玉のシューベルト歌曲を紹介してくださり、有難うございました。とても楽しく拝見しました。文献の出典が明記されているのも素晴らしいですね。
また、お褒めの言葉をいただき、恐縮です。
私は音楽批評家ではないので、正確で中立な批評文を書くことなどは到底出来ないのですが、一愛好家の視点から感じたことを発信することは無意味なことではないと勝手に思い込んでおります。そんなわけで、特に気に入った作品や演奏について、出来るだけほかの方にも聴いていただきたいという気持ちで、乏しい語彙の中から言葉をひねりだしているという状態です。
私は決して文章を書くのは得意ではないのですが、ある演奏を形容するのにたとえマンネリな言い回ししか思いつかなかったとしても、それで自分が得た感動のほんの一端でも伝えられたらそれでもいいと思っています。
そんな感じで今後もとりとめのない文章を書き散らしていくことになると思いますが、よろしければまたご覧いただければ幸いです。
渡辺さんのように専門的に勉強しておられ、演奏家の方々とも幅広い交流をもたれている方の前で、林さんの歌唱や岡原さんの演奏について偉そうなことを言えた立場ではないのですが、素人の立場からの1つのささやかな感想として読んでいただければ幸いです。
それから「愛らしい星」に関する興味深いお話、有難うございました。私の感じたことが見当はずれではなかったと知ってほっとしております。シュルツェとミュラーの間になんらかの接点があったのだとしたら、また1つの研究テーマになりそうですね。解放戦争に参加したもの同志の無意識の一致ということもあるのかもしれませんね。このへんは素人の出る幕ではありませんので、渡辺さんのHPを拝見して勉強させていただきたいと思います。列記してくださった関連する詩についても読ませていただきたいと思います。
いつも励みになるコメントをくださり、感謝しております。これからもご指導のほど何卒よろしくお願いいたします。
投稿: フランツ | 2008年8月18日 (月曜日) 22時04分
フランツさん、こんばんは。フランツさんの作品や演奏に関する表現は、理解と愛情に満ちたものだと思います。もしよろしければ、私のHP のリンク集で、フランツさんの優れたブログをご紹介したいのですが、いかがでしょうか。
投稿: 渡辺美奈子 | 2008年8月19日 (火曜日) 22時04分
渡辺さん、こんばんは。
リンクに関して、渡辺さんのHPで紹介していただけるのは光栄だと思っております。
渡辺さんの素晴らしいHPに見合った内容か心許ないですが、よろしくお願いいたします。
また、渡辺さんのHPを私のブログのリンク集にも加えさせていただいてもよろしいでしょうか。
リート愛好家必読の素晴らしいサイトだと思いますので。
投稿: フランツ | 2008年8月20日 (水曜日) 03時49分
リンク許可ありがとうございます。フランツさんの文は、素直で気取りがなく、何よりも作曲者と作品への愛情に満ちていますね。このような方に曲の魅力と価値を伝えて欲しいという願いをこめてリンクいたしました。何か加えて欲しいことなどがありましたら、メールでお願いします。
またこのたびは、私のHPをフランツさんのブログに加えてくださるとのこと、私もたいへん光栄に思います。あまり更新できないかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。ホームページ名も希望も特にないので、ご自由に書いてください。
よろしければ相互リンクを記念に、シューベルトをこよなく愛す友人となり、敬愛するフランツ・シューベルトのために互いに励みましょう。
投稿: 渡辺美奈子 | 2008年8月20日 (水曜日) 16時02分
渡辺さん、こんばんは。
渡辺さんの素晴らしいホームページのリンク集に加えていただき、有難うございました。
シューベルトを愛する渡辺さんと知り合う機会を得て、とてもうれしく思います。
(そして、紹介してくださった甲斐さんにも感謝!)
私のような単なる愛好家の感想文に興味を示してくださり、本当に光栄です。
これを機にシューベルティアーナーのお仲間にさせていただければ幸いです。
また、渡辺さんの素敵なホームページもリンク集に追加させていただきました。許可してくださり、有難うございます。ますますのHPのご発展を楽しみにしております。
私のブログは週に1回ぐらいしか更新できませんが(なにしろ文章を書くのが非常に遅いのです)、歌曲への愛情だけで書いているようなものです。
今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。
投稿: フランツ | 2008年8月20日 (水曜日) 21時27分