プライ日本公演曲目1997年(第13回&第14回来日)
第13回来日:1997年1~2月
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(BR)
ミヒャエル・エンドレス(Michael Endres)(P)
松崎裕(Hiroshi Matsuzaki)(HRN: 2/5)
1月24日(金)19:00:東京・サントリーホール:シューベルティアーデⅠ「シラーの詩による歌曲」
1月26日(日)14:00:東京・サントリーホール:シューベルティアーデⅡ「美しき水車屋の娘」
1月28日(火)19:00:東京・サントリーホール:シューベルティアーデⅢ「ゲーテの詩による歌曲」
1月31日(金)19:00:東京・サントリーホール:シューベルティアーデⅣ「冬の旅」
2月2日(日)14:00:東京・サントリーホール:シューベルティアーデⅤ「様々な詩人による歌曲」
2月5日(水)19:00:東京・サントリーホール:シューベルティアーデⅥ「最晩年の歌曲[1828年に作曲された歌曲]」
●シューベルティアーデⅠ「シラーの詩による歌曲」 共演:ミヒャエル・エンドレス(P)
シューベルト/屍の幻想D7;海に潜る者D77
~休憩~
シューベルト/人質D246;タルタロスの群れD583;アルプスの狩人D588;希望D637;憧れD636;巡礼D794
●シューベルティアーデⅡ 共演:ミヒャエル・エンドレス(P)
シューベルト/歌曲集「美しき水車屋の娘」(Die schöne Müllerin) D795
●シューベルティアーデⅢ「ゲーテの詩による歌曲」 共演:ミヒャエル・エンドレス(P)
シューベルト/羊飼いの嘆きの歌D121;憧れD123;憩いなき愛D138;海の静けさD216;さすらい人の夜の歌ⅠD224;漁師D225;最初の喪失D226;ねずみ取りD255;宝掘りD256;野薔薇D257;月に寄すD259;魔王D328
~休憩~
シューベルト/トゥーレの王D367;馭者クロノスにD369;3つのたて琴弾きの歌D478(孤独に身をゆだねる者は;家々の門辺に歩み寄って;涙を流しながらパンを食べたことのない者);ガニュメートD544;プロメテウスD674;人間の限界D716;ムーサの子D764;去って行った人にD765;流れのほとりにてD766;逢う瀬と別れD767
●シューベルティアーデⅣ 共演:ミヒャエル・エンドレス(P)
シューベルト/歌曲集「冬の旅」(Winterreise) D911
●シューベルティアーデⅤ「様々な詩人による歌曲」 共演:ミヒャエル・エンドレス(P)
シューベルト/無限なるものにD291;さすらい人D489;双子座の星に寄せる船乗りの歌D360;舟人D536;夜曲D672;春の思いD686;水の上で歌うD774;孤独な人D800;夕映えのなかでD799;全能の神D852
~休憩~
シューベルト/恋の陶酔D179;ユーリアを垣間見たりんごの木に寄すD197;泉のほとりの若者D300;花の手紙D622;ブルックにてD853;漁師の歌D881;春にD882;ヴィルデマンの丘でD884;アリンデD904;船乗りの別れの歌D910
●シューベルティアーデⅥ「最晩年の歌曲[1828年に作曲された歌曲]」 共演:ミヒャエル・エンドレス(P);松崎裕(HRN:「流れの上で」)
シューベルト/冬の夕べD938;星D939;秋D945;水鏡D639B;流れの上でD943
シューベルト/「白鳥の歌」(Schwanengesang) D957(愛の便り;戦士の予感;春の憧れ;セレナード;我が宿;遠い国で;別れ;アトラス;彼女の絵姿;漁師の娘;町;海辺で;影法師;鳩の便りD965A)
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ヘルマン・プライ13回目の来日は、前回から2年後の1997年1~2月。
この年はシューベルトの生誕200年にあたり、それを記念して、プライとエンドレスによって6回のシューベルティアーデ・シリーズが催された。
特にシューベルトの200回目の誕生日にあたる1月31日には「冬の旅」が演奏され、日本の聴衆はプライと共にシューベルトの誕生日を祝うことが出来たのである。
これだけまとまったシューベルトの歌曲を同一の演奏者によって聴く機会はなかなかないだろうと思い、私はⅠ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅵの4回、つまり「水車屋」と「冬の旅」を除いた回を聴きに行った。
Ⅰのコンサートの時は私は長引いていた咳が心配で、薬を飲みながらもあまり演奏に集中できる状況ではなかった記憶がある。
「冬の旅」はFM放送で生中継されたので、ラジオを通じて私も「冬の旅」でシューベルトの誕生日を祝うことが出来た。
プライは高音が出にくい部分はあったものの、概してどの曲も自分の血肉とした歌唱を聴かせてくれた。
有名無名を問わずこれだけの膨大な作品を全曲暗譜で自分のものにして連続して披露してくれたという事実だけでも感動的なシリーズであった。
シリーズ最終日の最後の曲「鳩の便り」では忘れられないハプニングが起きた。
歌いはじめてまもなくプライの歌う歌詞が曖昧になり、ついに演奏がとまってしまったのである。
その後、すぐにもう1度歌おうとするが、やはり最初のところでつかえてしまう。
プライは一度舞台袖に引っ込み、気持ちを入れ替えて再び登場し、今度は「鳩の便り」を最後まで見事に歌ったのである。
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第14回来日:1997年12月
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(BR)
オーケストラ・アンサンブル金沢(Orchestra Ensemble Kanazawa)
岩城宏之(Hiroyuki Iwaki)(C)
12月6日(土)19:00 福井・ハーモニーホールふくい
12月8日(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール タケミツメモリアル:東京オペラシティ・コンサートホール・オープニング・シリーズ「アドヴァイザリー・コミッティ・シリーズ」
12月10日(水)19:00 金沢市観光会館
12月12日(金)19:00 大阪・ザ・シンフォニーホール
シューベルト(鈴木行一編曲)/歌曲集「冬の旅」(Winterreise) D911
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2月に予定されていた鈴木行一編曲のオーケストラ版「冬の旅」世界初演がプライの体調不良で延期となり、12月の再来日になった(先立って行われた10月のドイツ公演が初演となり録音もリリースされている)。
そして、これがプライの最後の来日公演となってしまった。
私は残念ながらこの時のプライの公演を聴かなかったのだが、聴かれた方のリポートをインターネットで拝見したところでは、東京公演でのプライは体調が悪かったらしく、つらそうだったとのこと。
評論家の藤田由之氏も「当夜のプライの体調が必ずしもよくなかったのは残念だ」(「音楽の友」1998年2月号)と評している。
そのせいだろうか、その後の金沢公演では第12曲「孤独」の後で休憩が入ったらしい。
岩城氏もかなりプライに気を遣っていたようだ。
プライの来日公演が1961年の初来日からシューベルト生誕200年の1997年までほとんど常に「冬の旅」と共にあったことは強い感銘を受ける。
オペレッタや民謡なども含めて幅広いジャンルで活動してきたプライだが、彼のライフワークが「冬の旅」であったことはおそらく間違いないであろう。
この約半年後の1998年7月22日、つまり10年前の今日、ヘルマン・プライは69歳で天に召された。
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