プライ日本公演曲目1993年(第10回来日)
第10回来日:1993年10~11月
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(BR)
鮫島有美子(S)
ミヒャエル・エンドレス(Michael Endres)(P)
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
東京フィルハーモニー交響楽団
大阪センチュリー交響楽団
名古屋フィルハーモニー交響楽団
NHK交響楽団
井上道義(C)
飯守泰次郎(C)
ホルスト・シュタイン(Horst Stein)(C)
他
10月8日(金)18:45 松本:ザ・ハーモニーホール:プログラムA
10月10日(日)18:00 東京:サントリーホール:サントリーホール7周年記念ガラ・コンサート
10月12日(火)19:00 秋田:秋田アトリオン音楽ホール:プログラムB
10月14日(木)18:30 松山:松山市総合コミュニティーセンターキャメリアホール:プログラムA
10月15日(金)19:00 志度:志度音楽ホール:プログラムA(ハイドン・フェスティバルIN志度)(演奏前に原田茂生のミニ・レクチュア「シューベルトの歌曲について」あり)
10月18日(月)19:00 東京:オーチャードホール:ヘルマン・プライ&鮫島有美子
10月21日(木)19:00 大阪:ザ・シンフォニーホール:ヘルマン・プライ&鮫島有美子
10月24日(日)18:30 名古屋:愛知県立芸術劇場コンサートホール:ヘルマン・プライ&鮫島有美子
10月27日(水)19:00 東京:マードレ松田ホール:国際シューベルト協会・日本リヒャルト・シュトラウス協会合同例会:シューベルト『冬の旅』抜粋&R.シュトラウス歌曲(※)
10月29日(金)19:00 東京:東京芸術劇場:プログラムA
10月31日(日)19:00 茅ヶ崎:茅ヶ崎市民文化会館:プログラムB
11月2日(火)19:00 武蔵野:武蔵野市民文化会館:プログラムB
11月5日(金)18:45 東京:NHKホール:NHK交響楽団演奏会
11月6日(土)14:15 東京:NHKホール:NHK交響楽団演奏会
11月8日(月)18:00 松戸:聖徳学園川並記念講堂:プログラムB
11月10日(水)13:30 横浜:神奈川県立音楽堂:プログラムA
11月12日(金)19:00 焼津:焼津市文化センター:プログラムB
(※10月27日の情報についてはgoethe-schubertさんより教えていただきました。「1) シューベルト『冬の旅』をめぐって 2) リヒャルト・シュトラウスの歌曲をめぐって」というテーマに沿って話と演奏が行われたそうです。『冬の旅』からは「おやすみ」全部、「休息」と「孤独」は抜粋が歌われ、R.シュトラウスは、「あしたOp. 27-4」「ひそやかな誘いOp. 27-3」「献呈Op. 10-1」が歌われたそうです。この記事のコメント欄でgoethe-schubertさんが当日の様子を書いてくださっているので、ぜひご覧ください。有難うございました。)
●プログラムA 共演:ミヒャエル・エンドレス(P)
シューベルト(Schubert)/歌曲集「美しき水車小屋の娘」(Die schöne Müllerin)D795
(さすらい/どこへ/とまれ/小川への感謝/憩の夕べに/好奇心の強い男/焦燥/朝の挨拶/水車屋の花/涙の雨/わがもの/休み/緑のリュートのリボンにそえて/狩人/嫉妬と誇り/好きな色/いやな色/しおれた花/水車屋と小川/小川の子守歌)
●プログラムB 共演:ミヒャエル・エンドレス(P)
シューベルト/歌曲集「冬の旅」(Winterreise)D911
(お休み/風見の旗/凍った涙/かじかみ/菩提樹/あふれる涙(水の流れ)/川の上で/回想/鬼火/憩い/春の夢/孤独/郵便馬車/霜おく頭/からす/最後の希望/村で/嵐の朝/幻覚/道しるべ/宿屋/勇気/幻の太陽/辻音楽師)
●サントリーホール7周年記念ガラ・コンサート《響~歌え、いま賑わしきとき》 共演:松本美和子(S);グローリア・スカルキ(MS);小林一男(T);アンドレアス・シュミット(BR);ナルシソ・イエペス(GT);ジャン=ピエール・ランパル(FL);工藤重典(FL);オーレル・ニコレ(FL);中川昌三(FL);豊嶋泰嗣(VLN);堤剛(VLC);アンナー・ビルスマ(バロックVLC);エヴェリン・グレニー(PERC);舘野泉(P);練木繁夫(P);渡邊順生(Fortepiano);ウィーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団;コンサート・マスターズ(弦楽合奏);小山貢社中(津軽三味線100人);スペイン国立バレエ団;二期会合唱団;藤原歌劇団合唱部;栗友会合唱団;東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団;井上道義(C)他
R.シュトラウス/献身(ヘルマン・プライ)
グレニー/リトル・プレイヤー(エヴェリン・グレニー)
ヴェルディ/歌劇『椿姫』より「乾杯の歌」(松本美和子;小林一男)
グリーグ/君を愛す(舘野泉)
タルレガ/アルハンブラの思い出(ナルシソ・イエペス)
ほか
●ヘルマン・プライ&鮫島有美子 共演:鮫島有美子(S)東京フィルハーモニー交響楽団(10月18日);大阪センチュリー交響楽団(10月21日);名古屋フィルハーモニー交響楽団(10月24日);飯守泰次郎(C)
モーツァルト(Mozart)作曲
『フィガロの結婚』より
序曲
5...10...
たとえばもし
自分で自分がわからない
もう飛ぶまいぞ、この蝶々
モーツァルト作曲
『イドメネオ』より
序曲
父よ、兄よ、さようなら
モーツァルト作曲
『魔笛』より
恋人か女房があればいいが
パパゲーナ!
シュトラウス(Johann Strauss 2)作曲
『こうもり』より
序曲
あの上品な態度
カールマン(Kalman)作曲
『伯爵夫人マリツァ』より
ウィーンに愛をこめて
リンケ(Lincke)作曲
マーチ「陽気な羊飼い」
シュトルツ(Stolz)作曲
『お気に入りの家来』より
私の心の王様
カールマン作曲
『チャールダーシュの女王』より
ヨイ、ママン
レハール(Lehár)作曲
『メリー・ウィドウ』より
ヴィリアの歌
おお祖国よ、マキシムへ行ったが
唇は黙っていてもヴァイオリンはささやく
●NHK交響楽団第1214回定期演奏会 共演:NHK交響楽団;ホルスト・シュタイン(C)
シューベルト作曲
竪琴弾きの3つの歌D478(レーガー編曲)
夕焼けにD799(レーガー編曲)
音楽にD547(レーガー編曲)
プロメテウスD674(レーガー編曲)
ひめごとD719(ブラームス編曲)
馭者クロノスにD369(ブラームス編曲)
セレナードD957-4(モットル編曲)
彼女の絵姿D957-9(ウェーベルン編曲)
魔王D328(リスト編曲)
R.シュトラウス(Richard Strauss)/交響詩「英雄の生涯」作品40
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ヘルマン・プライ10回目の来日は、前回から3年後の1993年。
ピアニストは日本で初共演となる若手のミヒャエル・エンドレス(1961年Sonthofen, Germany生まれ)。
F=ディースカウとヘルの年齢差は27歳だが、プライとエンドレスはより差の開いた32歳である。
巨匠は年を重ねると若手のエネルギーを欲するものなのだろうか。
今回はプライのこれまでの来日公演中、最も多岐に渡るプログラムが披露されている。
十八番のシューベルトの2大歌曲集のほか、鮫島有美子とのオペラ&オペレッタのデュオ・コンサート、サントリーホールのガラコンサート、さらにN響定期でシューベルトのオーケストラ歌曲まで歌っている。
公演期間も1ヶ月以上に及んでいる。
私は東京芸術劇場で「美しき水車小屋の娘」を聴いたが、彼がこの歌曲集を歌うのを生で聴くのは初めてだった。
残念ながらこの時の演奏がどうだったのか思い出すことが出来ない。
ただ、志度音楽ホールでの「水車屋」の演奏はNHKで放映されたので、そのビデオを見ればどんな状態だったか分かると思う(いつになるか分かりませんが、このビデオが見つかったら、見て感想を追記したいと思っています)。
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(2008年7月20日追記)
10月15日の志度音楽ホールにおける「美しき水車小屋の娘」の録画テープをさきほど見終わって、胸が熱くなった。
どうも最近は涙腺がゆるくなってきて仕方がない。
プライはもはや若かりし頃のように声を朗々と張り上げたり、高音を余裕をもって響かせることが出来るわけではないのだが、一言一言を噛みしめるように語るように歌う。
何の苦もなく声が出ていたころにはどうやっても出なかったであろう芸の深みと味わいが一貫して伝わってきて、その真摯な舞台姿と共に心に響いてくる(彼は殆ど不動なのだが、顔の表情が豊かで主人公になりきって歌う。まさに万年青年の呼び名にふさわしい)。
「涙の雨」ではフレーズの終わりまで慈しむように大切に歌っていたのが印象的だ。
それにしても19曲目の「水車屋職人と小川」はなんとすごい曲なのだろう。
私にとってはほとんど奇跡といってもいいほどの詩と音楽の感動的な結びつきと感じられた。
この曲でのプライの穏やかな悟り切ったような微笑みと歌唱にこみあげてくるものをこらえられなかった。
この歌曲集を聴いてこんなに感傷的な気持ちになったのはいつ以来だろう。
演奏前のインタビューで今でも頂上に向けて登っている最中であるとの言葉があり、その向上心を持ち続ける姿勢がこのような深く心に響く歌唱を可能にしているのだと感じた。
エンドレスのピアノは爽やかで美しい音と明瞭なリズム感でプライをしっかり支え、時にリードしていたのが頼もしく、非凡な才能を終始感じさせた。
最後に「あなたにとってシューベルトとは?」との質問にプライはこう答えた。
"Zentrum des Lebens.(人生の中心です)"
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