プライ日本公演曲目1973年(第3回来日)
第3回来日:1973年10~11月
ヘルマン・プライ(Hermann Prey)(BR)
レナード・ホカンソン(Leonard Hokanson)(P:プログラムA~C)
読売日本交響楽団(プログラムD)
山田一雄(C:プログラムD)
10月19日(金)18:30 北海道厚生年金会館:プログラムC
10月22日(月)19:00 東京文化会館大ホール:プログラムA
10月26日(金)19:00 東京文化会館大ホール:プログラムD「第96回読売日本交響楽団定期演奏会」
10月28日(日)18:30 新潟県民会館:プログラムB
10月30日(火)19:00 東京厚生年金会館大ホール:プログラムC
11月2日(金)19:00 東京文化会館大ホール:プログラムC
11月5日(月)19:00 大阪フェスティバルホール:プログラムC
11月9日(金)18:30 千葉県文化会館:プログラムB
11月11日(日)18:30 神奈川県立音楽堂:プログラムB
11月13日(火)19:00 東京文化会館大ホール:プログラムB
●プログラムA「シューベルトとレーヴェのバラード」 共演:レナード・ホカンソン(P)
シューベルト/魔王(Erlkönig)D328
トゥーレの王(Der König in Thule)D367
歌びと(Der Sänger)D149
潜水者(Der Taucher)D77
レーヴェ/アーチボード・ダグラス(Archibald Douglas)Op. 128
オルフ氏(Herr Oluf)Op. 2-2
海を行くオーディン(Odins Meeresritt)Op. 118
忠実なエッカルト(Der getreue Eckardt)Op. 44-2
婚礼の歌(Hochzeitslied)Op. 20-1
魔王(Erlkönig)Op. 1-3
●プログラムB「白鳥の歌とザイドルの詩による四つの歌/シューベルト」 共演:レナード・ホカンソン(P)
・ザイドルの詩による五つの歌
シューベルト/まちの外で(Im Freien)D880
あこがれ(Sehnsucht)D879
さすらい人が月に寄せて(Der Wanderer an den Mond)D870
窓辺にて(Am Fenster)D878
鳩の使い(Die Taubenpost)D965A(D957-14)
・歌曲集「白鳥の歌」よりハイネの詩による六つの歌
シューベルト/アトラス(Der Atlas)D957-8
彼女のおもかげ(Ihr Bild)D957-9
漁師の娘(Das Fischermädchen)D957-10
まち(Die Stadt)D957-11
海辺で(Am Meer)D957-12
影法師(Der Doppelgänger)D957-13
・歌曲集「白鳥の歌」よりレルシュタープの詩による七つの歌
シューベルト/愛の便り(Liebesbotschaft)D957-1
兵士の予感(Kriegers Ahnung)D957-2
春のあこがれ(Frühlingssehnsucht)D957-3
セレナーデ(Ständchen)D957-4
わが宿(Aufenthalt)D957-5
遠い国で(In der Ferne)D957-6
わかれ(Abschied)D957-7
●プログラムC 共演:レナード・ホカンソン(P)
シューベルト/歌曲集「冬の旅」(Winterreise)D911
●プログラムD「第96回読売日本交響楽団定期演奏会」 共演:読売日本交響楽団;山田一雄(C)
モーツァルト/交響曲第36番ハ長調K.V.425<リンツ>
ヘンツェ/「5つのナポリの歌」(5 neapolitanische Lieder)
マーラー/歌曲集「さすらう若人の歌」(Lieder eines fahrenden Gesellen)(彼女の婚礼の日は/朝の野辺を歩けば/燃えるような短剣で/彼女の青い目が)
ファリャ/舞踊組曲<三角帽子>
--------------------
ヘルマン・プライ3回目の来日は、前回からわずか2年後の1973年。
プログラムはレナード・ホカンソンとの3種類と、読売日本交響楽団定期公演でのヘンツェとマーラーである。
ホカンソンとのリサイタルでは前2回同様「冬の旅」が歌われているほかに、Aプログラムではシューベルトとレーヴェのバラードばかりを集め、東京で1回だけ披露され、Bプログラムでは「白鳥の歌」全曲にザイドルの歌曲を加えた意欲的な選曲である。
プライはハースリンガー出版の「白鳥の歌」を“解体”した最初の一人だろう。
ハースリンガーが最後に置いたザイドルの「鳩の使い」をほかのザイドル歌曲と共に最初に置き、続いて後半のハイネ歌曲集を置き、ハースリンガー版最初のレルシュタープ歌曲集を最後に置く。
この順序の解体がプライにとってどのような意味を持つのかは分からないが、「白鳥の歌」の曲順がシューベルトの意思とは無関係である以上、プライの試みを否定する理由は全くない。
今回のプログラムで最も注目すべきなのはやはりプログラムAのシューベルトとレーヴェのバラードの夕べであろう。
シューベルトの「魔王」で始まり、同じ詩によるレーヴェの「魔王」で終えるというプログラミングは良く考えられたものだと思う。
30分近くかかる長大なシラーの詩によるバラード「潜水者」など、当時はほとんど演奏されることのない珍しい選曲だったのではないか。
レーヴェ歌曲の部では、10分ほどかかる「アーチボード・ダグラス」で始め、「オルフ氏」や「海を行くオーディン」などよく知られた曲が続いている。
プライのレーヴェはF=ディースカウのような歯切れのよい芝居っ気ではなく、のびのびとした屈託のなさに良さがある。
そういう意味ではプライの美質を生かす曲とは必ずしもいえない深刻な曲が多く選ばれているのが興味深い。
読売日本交響楽団の定期演奏会では前2回の来日公演でも歌われた「さすらう若人の歌」と、初来日時に歌われたヘンツェ「5つのナポリの歌」を再度取り上げている。
初期のプライが気に入っていた歌曲集なのだろう。
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コメント
フランツさんこんにちは
これって当時のパンフレットを入手して調べられているのですよね。根気のいる作業だと思います。頭が下がります。
ぜひ最後の来日の分まで続けてくださることをプライファンの1人として切に希望します。
たか
投稿: たか | 2008年3月16日 (日曜日) 10時16分
たかさん、こんにちは。
応援していただき、うれしく思います。
有難うございます!
パンフレットは過去のものについては東京文化会館の音楽資料室で調べ、最近のものは所有しているものを引っ張り出して調べる予定です(探し出すのに一苦労しそうですが)。
私はこういう作業は結構好きで、苦にならないので、最後まで完走できるように頑張ります。
そういえばプライの千人、DVDは若干高めだったので、ハイティンクとのCDを注文しました。聴くのが楽しみです。
投稿: フランツ | 2008年3月16日 (日曜日) 10時52分
そうなんですよね。ユニバーサルの最近のDVDは高くて困ります。日本市場向けのものを別商品にするからです。インターナショナル盤に日本語字幕を入れるべきです。
私はこの千人のDVDはもっと安かった頃に買ったのですが、それには字幕が入っていなかったので買いなおすかどうか迷っています....確か東京文化会館にはLDが置いてあったように思いますのであそこのブースでごらんになって下さい!
調べ物はもし私が何かお手伝いできることがあれば教えてくださいますか?
投稿: たか | 2008年3月18日 (火曜日) 08時31分
確かに中国語など数ヶ国語の字幕を付けているのに日本語だけ付けないのは不親切だなぁと思っていました。日本だけの市場というのが大きいのでしょうか。日本盤は高すぎて興味をもってもなかなか手が出ません。
文化会館は休日に行くとLDやLPのブースはすぐ満員になってしまうのですが、機会があったらぜひLDを聴いてみたいと思います。
それからお気遣いありがとうございます。私が記事にした年のコンサートの思い出などがありましたらコメントを寄せていただけるとうれしく思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
たかさんのサイトも楽しみにしています。
投稿: フランツ | 2008年3月18日 (火曜日) 21時26分
フランツさん
トラックバックさせていただいたのですが私のページの方に表示されません。やり方を間違っているでしょうか?
たか
投稿: たか | 2008年3月22日 (土曜日) 21時19分
たかさん、トラックバックを有難うございました。
ココログの場合はトラックバック元のオリジナルの記事には反映されないようになっているようです。
さきほど私からもたかさんの記事にトラックバックをお送りしましたので、もう少ししたら反映されるのではないかと思います(時間差がありそうです)。Yahooブログとココログの相性の問題もありそうですね。
マーラーの8番、聴いたらまたご報告します。
投稿: フランツ | 2008年3月22日 (土曜日) 21時58分
TB返しありがとうございます!
トラックバックの仕様ってサイトによって違うのですね。
投稿: たか | 2008年3月23日 (日曜日) 06時58分
フランツさん、こんにちは。
ヘルマン・プライという人は、詩よりメロディを優先させる人だと思われがちですが(事実そういうことを書く評論家も多々ありました)、私はそうではないとずっと思ってきました。
もちろん美声で、メロディラインもなめらかで美しいのですが、それだけではない事は、何度も何度も聴き込んだ私の耳には聞こえて来ていました。
93年に自伝が翻訳され、彼自身のペンによって詩への思いを読んだときは、「やっぱり」と思ったものです。
このシューベルトのプログラミングは、そういうプライさんの詩や詩人に対する深い思いが込められているように感じます。
『時々私は歌曲の夕べを一人の詩人、例えばゲーテやハイネや愛フェンドルフに献げる。・・・』(ヘルマンプライ自伝 喝采の時 メタモル出版 P318)
また、こんな記述もあります。
『・・私が好んで歌うのは「白鳥の歌」の私家増補版とでも呼べるものだ。・・(中略)・・「白鳥の歌」を一晩もたせる量にするために、私はレシュタープとハイネにザイトルを補うことに思い至った。』(同上 P320)
とあります。
そして、全く同じではありませんが、フランツさんが書き出してくださった、プログラムBと同じような曲が並べられています。
大好きなシューベルトを、「白鳥の歌」を軸に、詩人別の枠で歌う、ということなのでしょうね。
彼はオケ版でシューベルトを歌ったり、枠にとらわれないチャレンジを見せてくれましたね。
そういう意味でも唯一無二の歌手でした。
東京文化会館の音楽資料室にまでお出かけになったり、貴重な資料を探し出して記事にしてくださったフランツさんに感謝致します。
投稿: 真子 | 2013年7月 8日 (月曜日) 11時38分
真子さん、こんばんは。
プライの歌を、誰よりも聴き込んでおられる真子さんならではのプライ論、楽しく拝見しました。
メロディだけでなく、詩への深い思いがあってこその彼の歌唱なのですね。
自伝を引用されながらプライの詩への思いを教えていただきました。有難うございます。
投稿: フランツ | 2013年7月10日 (水曜日) 23時11分