メリカント:歌曲集(ヒュンニネン&ゴトーニ)
メリカント(Oskar Merikanto):歌曲集
ワーナーミュージックジャパン: FINLANDIA: WPCS-10648
録音:1975年6月(1~15)、1984年5月(16~32)
ヨルマ・ヒュンニネン(Jorma Hynninen)(BR)
ラルフ・ゴトーニ(Ralf Gothóni)(P)
1. なぜに私は歌う(Miksi laulan)Op. 20-2
2. 思い出す時(Muistellessa)Op. 11-2
3. 嵐の鳥(Myrskylintu)Op. 30-4
4. 野鳩(Metsäkyyhkyset)Op. 47-1
5. 柔らかく響け、我が悲しみの調べ(Soi vienosti murheeni soitto)Op. 36-6
6. アンニナ(Annina)
7. ラドガ(Laatokka)Op. 83-1
8. 人生に(Elämälle)Op. 93-4
9. 不可思議な神(Käsittämätön Jumala)Op. 109-2
10. 祈り(アヴェ・マリア)(Rukous)(Ave Maria)Op. 40-2
11. おいで 私と共に(Tule kanssani)Op. 75-3
12. 火が消え入るように(Kuin hiipuva hiilos tummentuu)Op. 47-2
13. 見よ、枝が揺れている(Kas, oksa värähtää)Op. 32-2
14. ねん ねん 坊や(Pai, Pai, paitaressu)Op. 2-1
15. 海にて(Merellä)Op. 47-4
16. 南の国の春の鳥(Kevätlinnuille etelässä)Op. 11-1
17. 金のかけら(Kullan murunen)Op. 20-1
18. 我が想いはあこがれの翼に乗って(Kiitävi aatos kaipuun siivin)
19. 土曜の夕べ(Lauantai-ilta)Op. 75-2
20. 天の門の歌うたい(Laulaja taivaan portilla)Op. 74-2
21. バラッド(Balladi)Op. 69-4
22. 若さを讃える(Nuoruuden ylistys)Op. 69-3
23. 私は歌う 小さき我が子に(Laulelen pojalleni pikkuiselle)Op. 107-1
24. 私は生きている!(Ma elän)Op. 71-1
25. すすり泣く笛(Itkevä huilu)Op. 52-4
26. うな垂れて(Huolissaan huokaileva)
27. リンゴの花(Omenankukat)Op. 53-1
28. ああ どこに母親の小鳥は飛んでいった?(Oi, minne emon lintunen lensi)Op. 53-2
29. 夜想曲(Nocturne)
30. 宵の口(Illansuussa)Op. 69-2
31. おやすみ(Hyvää yötä)Op. 75-1
32. 夕べの鐘(Iltakellot)Op. 106-1
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オスカル・メリカント(Oskar Merikanto: 1868.8.5, Helsinki - 1924.2.17, Oitti)の歌曲は先日のヒュンニネン(1941年Leppävirta生まれ)のコンサートで初めて聴いたのだが、その時は同じく初めて聴いたクーラの歌曲の方が私の好みに近いと思っていた。
ところが、その後このCDを購入して聴いてみたら、すっかりメリカントの素晴らしさに開眼してしまった。
ヒュンニネンのコンサートで歌われた6曲はすべてこのCDに含まれているので、まずはそのコンサートの曲順で6曲だけを取り出して聴いてみた。
あらためて聴いてみると、先日のコンサートでメリカントよりもクーラに惹かれた理由が自ずと分かってきた。
つまり、私が北欧歌曲にイメージする透き通ったような冷たい空気感、奥底からわいてくるような重く激しい情感、特有のもの哀しい旋律というものがクーラには色濃く現れていたのに対して、メリカントの歌曲にはあまり感じられなかったのである。
コンサートのプレトークで舘野泉さんが語っていたが、メリカントの歌はフィンランド人にとっては民謡のように広く親しまれているらしい。
つまり、芸術性云々というよりも、普通に生活している人たちにも分かりやすいメロディが使われており、気軽に口ずさめる曲ということではないだろうか。
私がこのCDを聴いて感じたのは、これらは北欧歌曲からイメージする地域色は殆どなく(フィンランド語が使われている点を除けば)、普遍性をもったサロン音楽と言ってもいいのではないかということである。
北欧という先入観を取り除いて純粋に聴いていくと、これらの歌曲は素直な歌の旋律と、繊細で充実したピアノパートが耳に残り、すんなりとその良さを感じることが出来るのだ。
CD解説によると「ねん ねん 坊や」という子守歌が歌われることが多いらしいが、先日のヒュンニネンが最後に歌った2曲「海にて」「嵐の鳥」はその訴求力において、特に強いものを感じた。
ヒュンニネンがこれらをメリカント歌曲の最後に置いたのも分かるドラマティックな作品である。
なお、このCDは前半15曲と後半17曲の録音に9年の開きがある。
録音環境の向上による響きの違いは当然としても、ヒュンニネンの声も随分変化している。
前半はなんといってもそのつやつやした若い声と真っ直ぐな表現が魅力であり、後半は経験を積んだことで身に付いた味わいや表現のまろやかさといった熟成された表現が堪能できる。
ラルフ・ゴトーニ(1946年Rauma生まれ)はもともとずば抜けてテクニックの優れたピアニストだと思うが、やはり9年後の演奏にどことなくゆとりが感じられるのは気のせいではないだろう。
150曲もの歌曲を作曲したというメリカントの魅力の一端を紹介してくれるのに最適な2人の素晴らしい演奏であった。
※CDブックレットの谷口ひろゆき氏の充実した解説と訳詩を参考にさせていただきました。
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コメント
こんにちは。お久しぶりです。
仰るとおりすばらしいアルバムですよね。歌詞対訳付の国内盤があっという間に廃盤になっていく中で、この1枚が未だにカタログに残っていることが奇跡に近いのですが。メリカントというとピアノ曲もキレイですね。「梢の高みにて」という曲が大好きで愛聴しております。
投稿: 竹 | 2007年12月 1日 (土曜日) 21時03分
竹さん、こんばんは。
コメントを有難うございます。
このCD、amazonで見つけたのですが、駄目もとで注文したらすぐに届いたので、まだ現役盤のようですね。こういう珍しいレパートリーは対訳付きの国内盤が本当に有難いです。
竹さんがお好きだという「梢の高みにて」は残念ながらまだ聴いていないのですが、あるMIDIのサイトで「ロマンス」というピアノ曲を聴いたら「赤とんぼ」に似ている節回しが出てきて、なかなかいい曲でした。
投稿: フランツ | 2007年12月 1日 (土曜日) 23時24分