ブラームス「秋の感情」(詩:シャック)
Herbstgefühl, Op. 48-7
秋の感情
Wie wenn vom frost'gen Windhauch tödlich
Des Sommers letzte Blüte krankt,
Und hier und da nur, gelb und rötlich,
Ein einzles Blatt im Windhauch schwankt,
凍てつく風の息吹に吹かれ、絶え入らんばかりに
夏の名残の花が病むときのように、
またそこかしこに、黄や紅に色づいて、
一枚一枚、木の葉が風の息吹に揺れるときのように、
So schauert über mein Leben
Ein nächtig trüber kalter Tag,
Warum noch vor dem Tode beben,
O Herz, mit deinem ew'gen Schlag!
私の人生に
暗く陰鬱な冷たい日が降りかかる、
何故まだ死を前にして震えるのか、
おお、心よ、永遠に鼓動しながら!
Sieh, rings entblättert das Gestäude!
Was spielst du, wie der Wind am Strauch,
Noch mit der letzten welken Freude?
Gib dich zur Ruh' - bald stirbt sie auch.
見よ、周囲に茂みが葉を落とすのを!
おまえは何を戯れているのだ、潅木に吹く風のように、
まだ最後のしぼんだ喜びを抱いたまま。
憩うがいい-すぐに喜びも死ぬのだ。
詩:Graf Adolf Friedrich von Schack (1815.8.2, Brüsewitz - 1894.4.14, Roma)
曲:Johannes Brahms (1833.5.7, Hamburg - 1897.4.3, Wien)
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ブラームスの1867年の作品。
詩人のシャックはR.シュトラウス作曲の「セレナーデ(Ständchen, Op. 17-2)」などの詩でも知られる。
4分の3拍子(1~80小節)-4分の6拍子(81小節以降)。嬰ヘ短調。標示は「かなりゆっくりと(Ziemlich langsam)」。
全92小節。歌声部の最高音は2点嬰ニ音、最低音は1点ニ音で、ほとんど1オクターブ内の狭い音域で歌われる。
A-B-A’という構成で、Aは2分音符+4分音符のリズムが繰り返されるが、それが決して単調に陥らず緊張感みなぎる表現になっているのがブラームスのすごいところである。
Bは詩の第2節を反映して3連符の動きを見せ、心の揺らぎを表現する。
第3節最後の1行(Gib dich zur Ruh' - bald stirbt sie auch.)のみ4分の6拍子になり、音価をたっぷりとって、深い思いをブラームスが込めているのが分かる。
この曲をはじめて聴いたのはおそらくF=ディースカウだったと思う。彼はブラームスの夕べで「秋の感情」をしばしば歌っており、録音も数種類あるので、彼のお気に入りの曲だったのではないか。ディースカウは世評ではブラームスに不向きと言われることがあるが、私にとってはディースカウとブラームスは相性がいいように思う。彼の歌唱でどれほどブラームス歌曲の魅力を知ったことだろう。一般に詩よりも音楽寄りの傾向の強いブラームス歌曲にディースカウが若干劇性を加えることで渋みの中からブラームスの肉声が聞こえてくるようである。
この曲の楽譜を閲覧できるサイトがあります(下のリンク先の左側にある曲目リストの41番をクリックすると表示されます。ただしオリジナルより半音高く移調されています。)
http://www.dlib.indiana.edu/variations/scores/bgn9130/large/index3.html
なお、冒頭数小節のみサンプル音源がMIDIで聴けるサイトがありますので参考までに(以下のサイトの楽譜上のListen to Sampleをクリックしてください)。
http://www.freehandmusic.com/ProductDetail.aspx?ProdID=274689
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コメント
ドイツではやっぱり寒い冬を控えたつめたい秋が心に突き刺さるようで、いろんな歌曲があるのですね。フランツさんのブログで初めて知ったものがたくさんあります!!
投稿: Auty | 2007年10月21日 (日曜日) 11時49分
Autyさんは先日までドイツの秋を感じてこられたのですね。私は未だドイツ訪問の経験がないので、あくまで日本人の想像で訳していますが、ある意味秋に対するイメージは万国共通のものがあるのかもしれませんね(秋のない国は別として)。
投稿: フランツ | 2007年10月21日 (日曜日) 14時02分