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シューマン「敵対し合う兄弟」(詩:ハイネ)

シューマンが“歌の年”1840年にハイネの詩に作曲した「敵対し合う兄弟」は、作品番号49として出版された「ロマンツェとバラーデ、第二集(Romanzen und Balladen Heft 2)」の第2曲にあたる。

シューマンの曲は、4分の4拍子、ロ短調(恋する女性を歌った第3節で平行調のニ長調に一時的に転調する)、全75小節で、冒頭に「動いて(Bewegt)」という指示がある。
歌声部は最高音が2点ト音、最低音が1点嬰ヘ音なので、約1オクターブ強の音域ということになる。

冒頭のテーマ(ミーミラーラシーシドードレーレミーミシーシドー)が調を変化させることもなく何度も繰り返し現れる。このテーマを聴くたびに私はベートーヴェンのチェロソナタ第3番のスケルツォを思い出してしまうが、おそらく単なる偶然なのだろう。だが、シューマンはベートーヴェン贔屓で、自作にベートーヴェンの曲の一節を織り込んだりもしているので、作曲中にこの曲が頭に鳴っていて無意識的に影響されてしまったということはありうるかもしれない(単なる想像に過ぎないが)。通作形式だが、あまり目新しい工夫をせずに紋切り型の曲に留まっている。ただ、演奏者の技量次第では切迫感のあるドラマとなりうるだろう。

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Die feindlichen Brüder, op. 49 no. 2
 敵対し合う兄弟

Oben auf des Berges Spitze
Liegt das Schloß in Nacht gehüllt;
Doch im Tale leuchten Blitze,
Helle Schwerter klirren wild.
 山頂の上で
 夜に包まれて城がそびえ立っている。
 だが、稲妻の輝くあの谷では
 きらめく剣が荒々しい音を鳴らしている。

Das sind Brüder, die dort fechten
Grimmen Zweikampf, wutentbrannt.
Sprich, warum die Brüder rechten
Mit dem Schwerte in der Hand?
 それは兄弟だ、あそこで剣を交えて、
 激しく怒りに燃えて二人争っている。
 言ってくれ、なぜ兄弟が
 剣を手にして争っているのか。

Gräfin Lauras Augenfunken
Zündeten den Brüderstreit.
Beide glühen liebestrunken
Für die adlig holde Maid.
 伯爵令嬢のラウラの瞳が放つ火花が
 兄弟の争いに火をつけたのだ。
 二人は愛に酔い痴れて燃え盛る、
 この気高くいとしい娘をめぐって。

Welchem aber von den beiden
Wendet sich ihr Herze zu?
Kein Ergrübeln kann's entscheiden -
Schwert heraus, entscheide du!
 だが、二人のうちどちらに
 彼女の心は向くのだろうか?
 考えたって決められない。
 剣を抜け、それで決めるぞ!

Und sie fechten kühn verwegen,
Hieb auf Hiebe niederkracht's.
Hütet euch, ihr wilden Degen.
Grausig Blendwerk schleicht des Nachts.
 そして彼らは大胆に向こう見ずに剣を交えた、
 一突きごとに剣は音を立てて下を向く。
 気をつけろ、乱暴な勇士たちよ。
 夜にはぞっとするようなまやかしが忍び寄っているから。

Wehe! Wehe! blut'ge Brüder!
Wehe! Wehe! blut'ges Tal!
Beide Kämpfer stürzen nieder,
Einer in des andern Stahl. -
 あわれ!あわれ!血まみれの兄弟たちよ!
 あわれ!あわれ!血まみれの谷よ!
 二人の戦士たちはばったり倒れた、
 相手の刃に切られて。

Viel Jahrhunderte verwehen,
Viel Geschlechter deckt das Grab;
Traurig von des Berges Höhen
Schaut das öde Schloß herab.
 それから何世紀もの時が流れ去り、
 何世代もの人々が墓の下に眠った。
 山の高みからは悲しげに
 荒れた城が見下ろしている。

Aber nachts, im Talesgrunde,
Wandelt's heimlich, wunderbar;
Wenn da kommt die zwölfte Stunde,
Kämpfet dort das Brüderpaar.
 だが、夜になると、谷底では
 ひっそり奇妙にさまよい出るものがある。
 十二時になると
 あそこであの兄弟たちが戦うのだ。

詩:Heinrich Heine (1797.12.13, Düsseldorf - 1856.2.17, Paris)
曲:Robert Alexander Schumann (1810.6.8, Zwickau - 1856.7.29, Endenich)

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投稿: Shinさん | 2007年5月29日 (火曜日) 01時36分

サウンドパイ 松田様
このたびはコメントを有難うございました。
リンク集登録の件、前向きに検討したいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: フランツ | 2007年5月29日 (火曜日) 21時20分

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