« ブリテン&ピアーズ、ヘフリガー&ニキーティナの来日公演 | トップページ | アーメリングのシューベルト歌曲集(ゲイジ共演:1971年) »

シューベルト:マッティソン歌曲

これまで、シューベルト(1797-1828)のゲーテ、マイアホーファー、ミュラー、シラーの詩による独唱歌曲のリストを記してきたが、この4人に次いでシューベルトが多く作曲したのはフリードリヒ・フォン・マッティソン(Friedrich von Matthisson:1761.1.23, Hohendodeleben - 1831.3.12, Wörlitz)の詩である。
マッティソンは牧師の息子として生まれ、ハレで神学と哲学を学び(1778~1781年)、その後デッサウの学校の教師となった(1781年~1783年)。1795年~1811年までアンハルト=デッサウのルイーゼ王妃一家のもとに付き、その後ヴュルテンベルクのフリードリヒ1世に雇われる。フリードリヒ1世の死後はその後継者ヴィルヘルム1世に雇われ、1828年に辞職する。マッティソンはドイツ内外を旅行し、そこで知った有名無名の詩人たちから影響を受けた。彼の詩はエレガントで憂愁の色合いを帯び、当時大変人気が高かったという(Peter Clive著 "SCHUBERT AND HIS WORLD"を参照しました)。
彼の詩にシューベルトは断片2曲も含めて、29曲もの独唱歌曲を作曲したが、15歳から20歳までの限られた期間に集中しているのが特徴的である。「愛の声」に2回作曲されている他、「幽霊の踊り」は断片2回の後、3回目にようやく完成作品となったが、断片の2作がもし完成していたら3作目よりも劇的迫力に富んだ魅力的な曲になっていたかもしれない。「幽霊の踊り」の2作目(D15a)の間奏は、シラーの詩による「小川のほとりの若者」D30でも似た響きが使われている。この頃のシューベルトは意識的かどうかは不明だが、共通の楽想を異なる曲に使うことがあるようだ。マッティソン歌曲はあまり有名な作品はないが、小さなサロンで歌われた時に心にそっと触れてくるようなタイプの曲が多いのではないか。「追憶」D99、「心の近さ」D100などはなかなか良く出来た作品だと思う。個人的に好きなのは「愛の声」D187と「自然の楽しさ」D188である。また、ベートーヴェンの「アデライーデ」「追憶」とシューベルトとの聴き比べも興味深いだろう。

D15 幽霊の踊り(Der Geistertanz)(第1作)(断片) 1812年頃

D15a 幽霊の踊り(Der Geistertanz)(第2作)(断片) 1812年頃

D50 影(Die Schatten) 1813年4月12日

D95 アデライーデ(Adelaide) 1814年

D97 慰め-エリーザに(Trost. An Elisa) 1814年

D98 回想(Erinnerungen)(第1作)(全2稿) 1814年秋(第1稿)/1814年頃(第2稿)

D99 追憶(Andenken)(第1作) 1814年4月

D100 心の近さ(Geisternähe) 1814年4月

D101 回想(Erinnerung) 1814年4月

D102 祈る女(Die Betende) 1814年秋

D107 遠方からの歌(Lied aus der Ferne)(全2稿) 1814年7月(第1稿)/1814年7?月(第2稿)

D108 夕暮れ(Der Abend) 1814年7月

D109 愛の歌(Lied der Liebe) 1814年7月

D114 ロマンツェ(Romanze)(全2稿) 1814年9月(第1稿)/1814年9月29日(第2稿)

D115 ラウラに、彼女がクロップシュトクの「復活の歌」を歌ったとき(An Laura, als sie Klopstocks Auferstehungslied sang) 1814年10月2~7日

D116 幽霊の踊り(Der Geistertanz)(第3作) 1814年10月14日

D186 瀕死の女(Die Sterbende) 1815年5月

D187 愛の声(Stimme der Liebe)(第1作) 1815年5月

D188 自然の楽しさ(Naturgenuss)(第1作) 1815年5月

D275 子供の死を悼む花環(Totenkranz für ein Kind) 1815年8月25日

D413 恍惚(Entzückung) 1816年4月

D414 愛の精(Geist der Liebe)(第1作) 1816年4月

D415 嘆き(Klage) 1816年4月

D418 愛の声(Stimme der Liebe)(第2作) 1816年4月29日

D419 ユーリウスがテオーネに(Julius an Theone) 1816年4月30日

D507 酒宴歌(Skolie) 1816年12月

D508 人生の歌(Lebenslied) 1816年12月

D579a(旧D989) 完成(Vollendung) 1817年9?~10月

D579b(旧D989a) 大地(Die Erde) 1817年9?~10月

NAXOSの「ドイツ・シューベルト歌曲エディション第19巻」(8.557371-2)で、以上29曲全曲を聴くことが出来る。演奏はSimone Nold(S)、Marcus Ullmann(T)、Thomas Bauer(BR)といった若い3人の歌手と、ルート・ツィーザクのピアニストとしても知られるUlrich Eisenlohr(P)である。歌手の中ではバウアーが断トツに素晴らしいが、他の2人も健闘している。アイゼンローアは様式感をもって、各曲の魅力を引き出したいい演奏をしている。ピアノの出だしがそっくりな「愛の声」D187と「追憶」D99を並べて置いているのもセンスを感じさせる。このシリーズ、安価なうえに詩人ごとにまとめて聴けて、しかも演奏の質も高く、有難いCDである。

|

« ブリテン&ピアーズ、ヘフリガー&ニキーティナの来日公演 | トップページ | アーメリングのシューベルト歌曲集(ゲイジ共演:1971年) »

CD」カテゴリの記事

シューベルト」カテゴリの記事

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/150976/13776377

この記事へのトラックバック一覧です: シューベルト:マッティソン歌曲:

« ブリテン&ピアーズ、ヘフリガー&ニキーティナの来日公演 | トップページ | アーメリングのシューベルト歌曲集(ゲイジ共演:1971年) »