シュヴァルツコプフ日本公演曲目1968年
エリーザベト・シュヴァルツコプフ(Elisabeth Schwarzkopf: 1915.12.9 - 2006.8.3)の来日は1968年に初めて実現したが、それ以前に何度も計画されながらキャンセルされ、裁判沙汰になりかけたそうである。彼女はこの後、1970年、1972年、1974年と合計4回演奏のために来日することになる。共演者は4回ともジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons: 1929.6.15 - 1995.1.26)である。
(以下、曲名の日本語表記は原則としてプログラム冊子の記載通り。整理番号のないものには原タイトルを併記。)
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第1回来日:1968年4~5月
4月5日(金)19時 東京文化会館(プログラムⅠ)
4月8日(月)19時 東京文化会館(プログラムⅡ)
4月11日(木)19時 札幌市民会館(プログラムⅠ)
4月14日(日)19時 神奈川県立音楽堂(プログラムⅤ)
4月17日(水)19時 東京文化会館(プログラムⅢ)
4月20日(土)19時 大阪厚生年金会館(プログラムⅠ)
4月23日(火)19時 大阪厚生年金会館(プログラムⅡ)
4月26日(金)19時 福岡市民会館(プログラムⅠ)
4月29日(月)19時 東京文化会館(都民劇場主催)(プログラムⅣ)
5月2日(木)19時 東京文化会館(プログラムⅣ)
●プログラムⅠ 共演:ジェフリー・パーソンズ(P)
モーツァルト/ゆうべの思いK. 523;私のねがいK. 539;すみれK. 476;警告K. 433(416c)
シューベルト/音楽によせてD547;緑野の歌D917;水の上にて歌えるD774;ますD550
シューマン/ズライカの歌Op. 25-9;二つのヴェネチアの歌Op. 25-17~18;トランプ占いの女Op. 31-2
ヴォルフ/あの国をご存知でしょうか(Kennst du das Land);アナクレオンの墓(Anakreons Grab);妖精の歌(Elfenlied);恋に気を許すな(Trau nicht der Liebe);私の髪のかげで(In dem Schatten meiner Locken)
ヴォルフ/主よ、この大地に生い立つものは(Herr, was trägt der Boden hier);眠れぬ者の太陽(Sonne der Schlummerlosen);夏の子守歌(Wiegenlied im Sommer);頭よ、泣くのはおよし(Köpfchen, Köpfchen);ジプシーの娘(Die Zigeunerin)
●プログラムⅡ 共演:ジェフリー・パーソンズ(P)
バッハ/主よ、御身が間近におられるならBWV508
グルック/流れる小川に(La rencontre imprévue: Einem Bach der fließt)
ヘンデル/オペラ「アタランタ(Atalanta)」~さわやかな森(Care selve)
モーツァルト/オペラ「フィガロの結婚」K. 492~恋とはどんなものかしら(Voi, che sapete)
シューベルト/独りずまいD800;私のクラヴィーアにD342;シルヴィアにD891;恋はいたるところにD239
ブラームス/静かな夜に(In stiller Nacht);甲斐なきセレナーデOp. 84-4;深い谷間に(Da unten im Tale)
ムソルクスキー/小さな星よ、今いづこに(Little star, where art thou?);きのこ狩り(Gathering Mushrooms)
チャイコフスキー/ただあこがれを知るひとだけが(Nur wer die Sehnsucht kennt)Op. 6-6;ピンピネルラ(るりはこべ)(Pimpinella)Op. 38-6
ストラヴィンスキー/パストラール(Pastorale)
R.シュトラウス/いこえ、わが魂よOp. 27-4;母親の自慢話Op. 43-2;わが子にOp. 37-3;父がいいましたOp. 36-3
スイス民謡/山の上のマリア(Maria auf dem Berge);おお、愛らしい天使よ(O du liebs Ängeli);恋人(Gsätzli)
●プログラムⅢ 共演:ジェフリー・パーソンズ(P)
シューベルト/ロマンス「満月は輝き」D797-5;笑いと涙D777;鳥D691;野ばらD257;千変万化の恋人D558;子守歌D498
R.シュトラウス/森のしあわせOp. 49-1;胸の思いOp. 21-1;こもり歌Op. 49-3;嵐の日Op. 69-5;あしたOp. 27-4;献身Op. 10-1
ヴォルフ/春に(Im Frühling);あなたが花のところに歩んでゆく時には(Wenn du zu den Blumen gehst);意地悪な舌は口をそろえて(Mögen alle bösen Zungen);わたしの彼氏はほんとにチビ助で(Mein Liebster ist so klein);捨てられた女中(Das verlassene Mägdlein);世をのがれて(Verborgenheit)
ヴォルフ/どうしてあたしは楽しそうにしたり(Wie soll ich fröhlich sein);もしあなたの家がガラスのようなら(O wär' dein Haus durchsichtig wie ein Glas);恋人があたしを食事に招いた(Mein Liebster hat zu Tische mich geladen);ふたりは長い間黙っていた(Wir haben beide lange Zeit geschwiegen);私を花で覆って下さい(Bedeckt mich mit Blumen);おまえの小さな足を痛めたのは(Wer tat deinem Füßlein weh?)
●プログラムⅣ 共演:ジェフリー・パーソンズ(P)
シューベルト/ズライカⅠD720;ズライカⅡD717;きみはわがやすらいD776;漁師の歌D881;しあわせD433
シューマン/月夜Op. 39-5;てんとう虫Op. 79-13;だれがあなたを悩ませたのOp. 35-11;古いリュートOp. 35-12;ことづてOp. 77-5;くるみの木Op. 25-3;きみにささぐOp. 25-1
R.シュトラウス/「オフェリアの三つの歌」Op. 67-1~3;愛そうと思う者は、悩まなければならないOp. 49-7;ああ、何という悲しみ、悩みOp. 49-8
ヴォルフ/わたしをひもでしばろうと(Du denkst mit einem Fädchen mich zu fangen);だれがあなたを呼んだの(Wer rief dich denn?);もう仲直りしましょうよ(Nun laß uns Frieden schließen);緑に祝福あれ(Gesegnet sei das Grün);ずっと前から望んでいた(Wie lange schon war immer mein Verlangen);いいえ、お若いかた(Nein, junger Herr);ペンナにわたしの恋人がいる(Ich hab' in Penna einen Liebsten wohnen)
●プログラムⅤ 共演:ジェフリー・パーソンズ(P)
シューマン/異郷にてOp. 39-1;間奏曲Op. 39-2;やすらぎOp. 39-4;森の対話Op. 39-3;春の夜Op. 39-12
マーラー/魚に説教するパドゥアの聖アントニウス(Des Antonius von Padua Fischpredigt);菩提樹の香りをかいだ(Ich atmet' einen linden Duft);高い理性の賞讃(Lob des hohen Verstandes)
ヴォルフ/朝露の中を(Wandl' ich in dem Morgentau);現象(Phänomen);ねずみ捕りのおまじない(Mausfallen-Sprüchlein);こうのとりの使い(Storchenbotschaft)
ヴォルフ/クリスマスの花によせてⅠ(Auf eine Christblume 1);ユーフラテス川を舟で渡った時(Als ich auf dem Euphrat schiffte);あなたがた、若い人たち(Nein, junger Herr);さようなら(Lebewohl);ねえ、あなたですの、ご立派なお方(Sagt, seid ihr es, feiner Herr)
ブラームス/「ドイツ民謡」~恋人よ、はだしで来ちゃだめだよ(Feinsliebchen, du sollst mir nicht barfuß gehn);柳がくれに、家一軒(Dort in den Weiden);お嬢さん、ご一緒に(Jungfräulein, soll ich mit euch gehn);ねえ、ママ、欲しいものがあるの(Och Moder, ich well en Ding han)
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1968年の最初の公演は東京文化会館で、プログラムⅠである。従って日本の聴衆がはじめて彼女の声に接したのはモーツァルトの珠玉の作品「ゆうべの思い」ということになる。この年は5種類のプログラムが組まれたが、プログラムⅡ以外にすべてヴォルフの作品が含まれているのが彼女らしいと言えるだろう。東京ではプログラムⅤ以外すべて聴くことが出来、横浜まで足を伸ばせばプログラムⅤも聴くことが可能になっている。
プログラムⅡ以外は限られた数の作曲家の作品を数曲ずつ味わうことが出来る内容だが、プログラムⅡだけ若干毛色が異なる。バッハで始まり、その後に古典オペラ・アリアの名作(シュヴァルツコプフの十八番)が数曲続く。それからロシア歌曲(英訳や独訳だが)を間にはさみながらドイツ歌曲の名作が続き、最後はスイス民謡3曲で締めるというバラエティに富んだプログラミングである。ヴォルフもこのプログラムだけ含まれておらず、少しくだけた雰囲気でまとめられているように感じる。
上記の曲目の中で現在までに彼女の録音で聴くことの出来ないのは、ムソルクスキーの「小さな星よ、今いづこに」(Ⅱ)、R.シュトラウスの「胸の思い」Op. 21-1(Ⅲ)、シューマンの「てんとう虫」Op. 79-13、「だれがあなたを悩ませたの」Op. 35-11、「古いリュート」Op. 35-12(以上Ⅳ)である。このうち、「胸の思い(All' mein Gedanken)」は1968年10月にパーソンズとスタジオ録音したもののお蔵入りとなっているので、いつの日か復活する可能性はあるだろう。実際、プログラムⅢに含まれるシューベルト「笑いと涙(Lachen und Weinen)」は最近まで録音がリリースされていなかったが、未発表だった録音を集めた録音(TESTAMENT: SBT 1206)で復活しているのである。
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