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高木東六逝去

作曲家、高木東六(1904.7.7 - 2006.8.25)が昨日午前0時5分に肺炎で亡くなったそうだ。享年102歳の大往生である。インターネットで検索してみると高木の作った軍歌「空の神兵」を聴けるサイトがいくつかあったが、彼の有名な作品として二葉あき子の歌った「水色のワルツ」(藤浦洸作詞)が挙げられるだろう。以下のサイトでこの曲の試聴が出来るが、山本健二さんというバリトン歌手の方の包み込むような歌声がなんとも染み込んでくる。ほかにも有名な日本の歌が沢山聴けるおすすめサイトである。

こちら

立原道造(1914.7.30 - 1939.3.29)の「優しき歌Ⅱ」という詩集(柴田南雄が歌曲集を作曲したことでも有名)の最後に置かれたソネット(4-4-3-3行)に高木が作曲した「夢見たものは」という歌曲があり、鮫島有美子&ヘルムート・ドイチュ夫妻の素敵な録音がかつて出ていた(日本コロムビア:DENON:COCO-75103:1988年3月28~30日フランクフルト、フェストブルク教会録音)。幸福(しあわせ)や愛を夢見ていると、一羽の小鳥が「それらはここにある」と歌うという内容である。きらびやかな分散和音に乗って、素朴に温かく歌われる親しみやすい作品である。

東京音楽学校を中退して、フランスに留学したという経歴の持ち主で、クラシックから軍歌、流行歌まで、この人の作品は多岐にわたっているようだ。ご冥福をお祈りします。

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アンナ・モッフォ&ジェラルド・ムーア/ドイツ歌曲集

3月20日に投稿した記事でアンナ・モッフォ(1932(?).6.27 - 2006.3.10)の逝去を記したが、その時に触れた彼女とジェラルド・ムーア(1899.7.30 - 1987.3.13)による歌曲集が8月2日に初CD化されたので、早速聴いてみた。

Anna Moffo(S) Gerald Moore(P)
録音:1971年9月2~5日、Schloss Klesheim, Salzburg
コロムビアミュージックエンタテインメント : DENON : COCQ-84207

シューベルト/あなたは憩いD. 776;ナイティンゲールに寄せてD. 497;「冬の旅」~春の夢D. 911-11;幸福D. 433
シューマン/「ミルテ」~献呈Op. 25-1;わが麗しの星Op. 101-4;「詩人の恋」~私は恨まないOp. 48-7;「リーダークライス」~月夜Op. 39-5
ブラームス/永遠の愛についてOp. 43-1;ひばりの歌Op. 70-2;五月の夜Op. 43-2
R.シュトラウス/万霊節Op. 10-8;あなたの黒髪をわが頭に広げよOp. 19-2;わが思いのすべてOp. 21-1;ツェツィーリエOp. 27-2;帰郷Op. 15-5

モッフォの歌いぶりは気持ちいいほどストレートだった。声は太めでヴィヴラートの振幅が大きく、細かい表情を声や表現に織り込むよりは、まっすぐに歌う。それは下手をすれば単調に陥りかねないし、実際はじめのシューベルトの数曲を聴いた時は大味で正直リートには不向きかもという危惧がよぎった。
しかし不思議なもので、何度か繰り返してみて、彼女の歌声や表現に慣れてくると、思いの強さ、真摯さが聞こえてきて、結構訴えかけてくるものがあるのを感じずにはいられなかった。このところ、細部へのかゆいところに手の届いた配慮に満ちた歌唱や、詩と音楽への知的なアプローチをしたスマートな歌に慣れすぎていて、こういう大らかな歌の良さを忘れていたのかもしれない。私の解釈はこうですよといった所のあまり無い彼女の歌は、器用ではないのかもしれないが、小細工なく歌に素直に寄り添っていて、こういう歌ももっと見直してみてもいいなと思った演奏であった。ただ、そうは言っても例えば"durch"の"r"の音はもっと響かせてほしかったという気もするが。声のコントロールが時に不安定になるのも惜しいところだ。

曲は、シューベルト、シューマン、ブラームス、R.シュトラウスといったドイツ歌曲の高峰から数曲ずつ著名な作品を中心に選ばれていて、「冬の旅」や「詩人の恋」など当時は女性があまり歌わなかった連作歌曲集からも抜き出して歌っていて、この録音にかける彼女の意気込みは確かに伝わってくる。一見合わなそうに思えるシューマンの「わが麗しの星」が真摯な表現でとても良かった。ソプラノとはいっても太い声をもつ彼女はブラームスの「永遠の愛について」の深さ、懐の大きさを充分に表現できていた(若干声の勢いに任せてしまうきらいはあるが)。
だが、モッフォの美質が最も生かされていたのはやはりR.シュトラウスだった。「万霊節」では作為のない歌が聴き手の心に直接訴えかけ、「ツェツィーリエ」の情熱も彼女のストレートで濃い目の表現が見事に映えていた(普段リートをあまり歌わない人がR.シュトラウスの歌曲を好むのはよく分かる気がする。彼の歌曲はオペラ的発想が根底にあるように思う)。

ベテランのジェラルド・ムーアをパートナーに選んだのもモッフォの意気込みのあらわれだろう。ムーアは1967年にステージでの演奏活動から身をひいたが、録音活動は1970年代前半まで精力的に続け、さらに表現に自在さと熟練が加わっているのが感じられる。膨大な作品を弾いてきたムーアだが、今回の選曲中、ブラームスの「ひばりの歌」を彼の演奏で聴くのは私にとっては初めてだった。決してあからさまではなく、しかし必要な重みをもって、この曲の右手の高音を響かせるその技は素晴らしかった。確かにムーアの美質はここでも健在であった。

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シュヴァルツコプフ・歌曲ディスコグラフィー抜粋(ライヴ)

●ELISABETH SCHWARZKOPF IN ITALIA

Schwarzkopf_favarettoElisabeth Schwarzkopf(S) Giorgio Favaretto(P: Schubert) Edwin Fischer(P: Brahms)
Orchestra Sinfonica e Coro di Roma della Rai(Mozart) Herbert von Karajan(C: Mozart) & others
録音:1952年2月16日 (Schubert);1954年2月21日 (Brahms);1953年12月20日 (Mozart)、すべてRAI Studios, Roma(以上ライヴ)
ARKADIA : CDHP 535.1

シューベルト/エレンの歌Ⅲ「アヴェ・マリア」D. 839;ますD. 550;水の上で歌うD. 774;「美しい水車屋の娘」~いらだちD. 795-7;ムーサの息子D. 764;ズライカⅠD. 720
ブラームス/野の孤独Op. 86-2;テレーゼOp. 89-2;死、それは涼しい夜Op. 96-1;子守歌Op. 49-4;永遠の愛についてOp. 43-1;メロディーのようにOp. 105-1;静かな夜に;あの下の谷で;わが恋は緑Op. 63-5;愛のまことOp. 3-1;甲斐なきセレナーデOp. 84-4
モーツァルト/歌劇「魔笛」より(愛を感じる男たちには;ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが;やがて朝を告げるために輝きわたるのは;私のタミーノ、ああ何という幸福)(イタリア語による)

●ELISABETH SCHWARZKOPF RECITALS 1952, 1954, 1944

Elisabeth Schwarzkopf(S) Giorgio Favaretto(P: 1952) Edwin Fischer(P: 1954) Michael Raucheisen(P: 1944)
録音:1952年2月16日, Roma (Schubert);1954年2月21日, Roma (Brahms);1944年10月7日, Berlin (Mozart)
ARCHIPEL DESERT ISLAND COLLECTION : ARPCD 0295

Recital 16.02.1952
シューベルト/エレンの歌Ⅲ「アヴェ・マリア」D. 839;ますD. 550;水の上で歌うD. 774;「美しい水車屋の娘」~いらだちD. 795-7;ムーサの息子D. 764;ズライカⅠD. 720

Recital 21.02.1954
ブラームス/野の孤独Op. 86-2;テレーゼOp. 89-2;死、それは涼しい夜Op. 96-1;子守歌Op. 49-4;永遠の愛についてOp. 43-1;メロディーのようにOp. 105-1;静かな夜に;あの下の谷で;わが恋は緑Op. 63-5;愛のまことOp. 3-1;甲斐なきセレナーデOp. 84-4

Recital 07.10.1944
ラモー/「イポリートとアリシー」~おまえの歌は、ナイチンゲールよ
リチャード・レヴェリッジ/老羊飼いの言葉
マイクル・アーン/やさしい心の娘
サンマルティーニ/白い子羊
グルック/「メッカの巡礼」~流れる小川に
モーツァルト/鳥たちよ、お前たちは毎年K307;内緒ごとK518
ベートーヴェン/秘密WoO145
シューベルト/春に寄せてD245
シューマン/民謡Op.51-2

※上記のCDと最初の2つのリサイタルは同一音源だが、ラウハイゼン共演の1944年の録音が加わっている。

●In Memoriam Elisabeth Schwarzkopf (1915-2006)

Elisabeth Schwarzkopf(S) Edwin Fischer(P)
録音:1954年2月21日, RAI Torino
tahra : Tah 617

ベートーヴェン/うずらの鳴き声WoO129;新しい愛、新しい生命Op.65-2;彩られたリボンでOp.83-3
シューベルト/音楽に寄せてD547;春にD882;シルヴィアにD891;悲しみD772;若い尼D828;水の上で歌うD774;ムーサの息子D764;糸車に向かうグレートヒェンD118
ブラームス/野の孤独Op. 86-2;テレーゼOp. 89-2;死、それは涼しい夜Op. 96-1;子守歌Op. 49-4;永遠の愛についてOp. 43-1;メロディーのようにOp. 105-1;静かな夜に;あの下の谷で;わが恋は緑Op. 63-5;愛のまことOp. 3-1;甲斐なきセレナーデOp. 84-4

※ブラームス以外は初出音源。

●Lieder-Recital

Schwarzkopf_moore_1956Elisabeth Schwarzkopf(S) Gerald Moore(P)
録音:1956年8月7日、Mozarteum, Salzburg(ライヴ)
EMI CLASSICS : 7243 5 66084 2 9

バッハ/「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻」~あなたが私のそばにいるなら
ペルゴレージ/もしあなたが私を愛してくれて
ヘンデル/歌劇「アタランタ」~いとしい森よ
グルック/歌劇「メッカの巡礼(思いがけないめぐり合い)」~流れる小川に
ベートーヴェン/悲しみの喜び
シューベルト/シルヴィアにD. 891;「ロザムンデ」~ロマンツェD. 797;鳥D. 691;孤独な男D. 800;ああ、われを見捨てずにD. 510
ヴォルフ/ミニョン;フィリーネ;夜の魔法;ジプシーの娘
R.シュトラウス/憩え、わが魂よOp. 27-1;子守歌Op. 41-1;悪天候Op. 69-5;言いました、それだけでは済みませんOp. 36-3
(アンコール)
モーツァルト/警告K. 433(416c)
シューマン/くるみの木Op. 25-3
シューベルト/「美しい水車屋の娘」~いらだち

●RECITAL

Schwarzkopf_reevesElisabeth Schwarzkopf(S) George Reeves(P)
録音:1956年11月25日、Carnegie Hall, New York(ライヴ)
EMI : CDHB 7 61043 2

モーツァルト/夕べの思いK. 523;ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時K. 520;寂しい森の中でK. 308;喜びは踊りK. 579;歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」~向こう見ずな人たちね…岩のように動かず
シューベルト/シルヴィアにD. 891;孤独な男D. 800;「ロザムンデ」~ロマンツェD. 797;鳥D. 691;糸車に向かうグレートヒェンD. 118;幸福D. 433
グルック/歌劇「メッカの巡礼(思いがけないめぐり合い)」~流れる小川に
R.シュトラウス/憩え、わが魂よOp. 27-1;悪天候Op. 69-5;言いました、それだけでは済みませんOp. 36-3;子守歌Op. 41-1
ヴォルフ/主よ、この地には何が生えるのですか;私を花で覆ってください;私の巻き毛の陰で;新年に;フィリーネ;ミニョン「あの国を御存知ですか」;私たちは二人とも長い間押し黙っていました;何を怒っているの、いとしい人;夏の子守歌;妖精の歌;夜の魔法;ジプシーの娘
シューマン/くるみの木Op. 25-3
スイス民謡/二人の恋人
ヴォルフ/ペンナに一人恋人がいるの
ブラームス/甲斐なきセレナーデOp. 84-4
ヘンデル/歌劇「アタランタ」~いとしい森よ

●Wolf: Lieder-Recital

Schwarzkopf_moore_1957Elisabeth Schwarzkopf(S) Gerald Moore(P)
録音:1957年8月19日&1963年8月17日(*)、Großer Saal des Mozarteums, Salzburg(ライヴ)
EMI CLASSICS : 7243 5 65749 2 2

ヴォルフ/「メーリケ歌曲集」~癒えた者が希望に寄せて;さようなら(*);妖精の歌;こうのとりの使い;
「イタリア歌曲集」~誰があんたを呼んだの;私たち、もう平和を締結しましょうよ;私はもう濡れていないパンを食べることはないでしょう;嫌、お若い方;おお、あなたの家が透けていれば;あんたは、私が侯爵夫人でないと言う;ちょっと黙りなさいよ;深淵が私の恋人の小屋を飲み込んでしまえ;ペンナに一人恋人がいるの;
「スペイン歌曲集」~主よ、この地には何が生えるのですか(*);私を花で覆ってください(*);響け、響け、私のパンデーロよ;出発のラッパが鳴っている;口の悪い人たちはみな;私の巻き毛の陰で;行って、恋人よ、さあ行って;
「アイヒェンドルフ歌曲集」~夜の魔法;ジプシーの娘;
(アンコール)
ヴォルフ/愛を信じないで(スペイン)(*);子供と蜜蜂(メーリケ)(*);飽くことのない愛(メーリケ)(*);告白(メーリケ)(*)

●Wolf: Lieder-Recital

Schwarzkopf_moore_1958Elisabeth Schwarzkopf(S) Gerald Moore(P)
録音:1958年7月27日、Großer Saal des Mozarteums, Salzburg(ライヴ)
EMI CLASSICS : 0777 7 64905 2 6

ヴォルフ/春に;クリスマスローズにⅠ;風の歌;ガニュメーデース;花の挨拶;アナクレオンの墓;現象;一年中春;羊飼い;
「スペイン歌曲集」~労苦に満ち、重荷を背負い私は来ました;私を花で覆ってください;あなたの足を傷つけたのは誰;あたしの恋人を引っぱりこんだ女に災いあれ;私の巻き毛の陰で;
「昔の調べ」全曲(お入り、気高い兵士よ;私の恋人がアトリのように歌うと;青っぽい坊や;私が朝露の中を歩き回ると;炭焼き女が酔っ払っている;明るい月が冷たく遠くに輝いている);
(アンコール)
フィリーネ;ミニョン;私たち、もう平和を締結しましょうよ;鼠捕りの呪文

●HUGO WOLF LIEDER

Elisabeth Schwarzkopf(S) Gerald Moore(P)
録音:1958年7月27日、Großer Saal des Mozarteums, Salzburg(ライヴ)
ANDROMEDA : ANDRCD 9066

ヴォルフ/「メーリケ歌曲集」~春に;クリスマスローズにⅠ;風の歌;老女の忠告;
「ゲーテ歌曲集」~ガニュメーデース;花の挨拶;アナクレオンの墓;現象;一年中春;羊飼い;
「スペイン歌曲集」~労苦に満ち、重荷を背負い私は来ました;あなたの足を傷つけたのは誰;あたしの恋人を引っぱりこんだ女に災いあれ;
「ケラー歌曲集(昔の調べ)」全曲(お入り、気高い兵士よ;私の恋人がアトリのように歌うと;明るい月が冷たく遠くに輝いている;炭焼き女が酔っ払っている;私が朝露の中を歩き回ると;青っぽい坊や);
(アンコール)
もうどれほど長いことずっと憧れていたことでしょう;フィリーネ

※上記のCDと同一音源だが、「老女の忠告」「もうどれほど長いことずっと憧れていたことでしょう」が追加され、「スペイン歌曲集」2曲とアンコール3曲がカットされた。
「老女の忠告」を彼女の録音で聴けるのはこれが初めてである(スタジオ録音をしなかった)。

●Schubert - Wolf - Strauss

Schwarzkopf_robin_1960Elisabeth Schwarzkopf(S) Jacqueline Robin-Bonneau(P)
録音:1960年6月15日、Palais des Fêtes, Strasbourg(ライヴ)
LE CHANT DU MONDE : LDC 278 899

シューベルト/音楽にD. 547;水の上で歌うD. 774;漁師の歌D. 881;「ロザムンデ」~ロマンツェD. 797;「ヴィラ・ベラのクラウディーネ」~愛はあらゆる道にあるD. 239;孤独な男D. 800;幸福D. 433;あなたは憩いD. 776
ヴォルフ/主よ、この地には何が生えるのですか;聖ネポムク前夜;私たち、もう平和を締結しましょうよ;私の巻き毛の陰で;夏の子守歌;行って、恋人よ、さあ行って
R.シュトラウス/親しい幻影Op. 48-1;憩え、わが魂よOp. 27-1;献身Op. 10-1
(アンコール)
R.シュトラウス/悪天候Op. 69-5
ヴォルフ/鼠捕りの呪文

●LA NUOVA MUSICA - VOLUME 2

Schwarzkopf_moore_1960Elisabeth Schwarzkopf(S) Gerald Moore(P)
録音:1960年8月13日(Schubert);1956年8月7日(Schumann & Strauss);1958年7月27日(Wolf)、すべてMozarteum, Salzburg(ライヴ)
stradivarius : STR 10009

シューベルト/漁師の歌D. 881;わがピアノにD. 342;緑の中の歌D. 917;幸福D. 433
シューマン/くるみの木Op. 25-3
R.シュトラウス/悪天候Op. 69-5
ヴォルフ/「昔の歌」全曲(お入り、気高い兵士よ;私の恋人がアトリのように歌うと;明るい月が冷たく遠くに輝いている;炭焼き女が酔っ払っている;私が朝露の中を歩き回ると;青っぽい坊や)
(ほかにエラ・フィッツジェラルド&デューク・エリントンとキャシー・バーベリアンのコンサート・ライヴも収録されている。)

●LIEDERALBUM

Schwarzkopf_reutter_1962Elisabeth Schwarzkopf(S) Hermann Reutter(P)
録音:1962年3月2日、Musikstudio Funkhaus, Hannover(ライヴ)
MOVIMENTO MUSICA : 051-015

シューベルト/音楽にD. 547;孤独な男D. 800;幸福D. 433;糸車に向かうグレートヒェンD. 118
ブラームス/あの下の谷で;愛のまことOp. 3-1;甲斐なきセレナーデOp. 84-4
ヴォルフ/ミニョンⅠ;ミニョンⅡ;ミニョンⅢ;フィリーネ;ミニョン「あの国を御存知ですか」;主よ、この地には何が生えるのですか;私を花で覆ってください;私の巻き毛の陰で;誰があんたを呼んだの;おお、あなたの家が透けていれば;夏の子守歌;ジプシーの娘;夜の魔法

●GREAT SINGERS IN RECITAL

Schwarzkopf_de_nobelElisabeth Schwarzkopf(S) Felix de Nobel(P)
録音:1962年6月29日、Concertgebouw, Amsterdam(ライヴ)
GLOBE : GLO 6902

ヴォルフ/朝露;鳥;鼠捕りの呪文;誰があんたを呼んだの;私たち、もう平和を締結しましょうよ;ジプシーの娘
(ほかにアーメリング、ベルガンサ、クルイセン、ヴィシネフスカヤ、クラウセ、バーベリアンのリサイタルも収録されている。)

●LIEDERABEND

Schwarzkopf_parsons_1967Elisabeth Schwarzkopf(S) Geoffrey Parsons(P)
録音:1967年10月10(6?)日、Saal der Gemeindschule, Ascona, Switzerland(ライヴ)
ERMITAGE : ERM 109

モーツァルト/夕べの思いK. 523;すみれK. 476;警告K. 433;私は皇帝になりたいK. 539
シューベルト/孤独な男D. 800;シルヴィアにD. 891;「ロザムンデ」~ロマンツェD. 797
シューマン/ズライカの歌Op. 25-9;2つのヴェネツィアの歌Op. 25-17, Op. 25-18;くるみの木Op. 25-3;カード占いをする女Op. 31-2
ヴォルフ/ミニョン「あの国を御存知ですか」;捨てられた娘;私の巻き毛の陰で;愛を信じないで;もうどれほど長いこと、憧れていたことでしょう;ジプシーの娘
シューベルト/幸福D. 433
ヴォルフ=フェルラーリ/「イタリア歌曲集」Op. 17~祈り(夜、ベッドに入るときに)

●RECITAL 1968

Schwarzkopf_parsons_1968Elisabeth Schwarzkopf(S) Geoffrey Parsons(P)
録音:1968年12月2日、Royal Festival Hall, London(ライヴ)
EKLIPSE : EKR P4

ヴォルフ/どんな歌をあなたに歌ったらいいのだろう;春に;現象;私が朝露の中を歩き回ると;ミニョン「あの国を御存知ですか」
シューベルト/ズライカⅠD. 720;ズライカⅡD. 717;糸車に向かうグレートヒェンD. 118
ヴォルフ/夏の子守歌;アナクレオンの墓;ジプシーの娘
R.シュトラウス/オフィーリアの歌Ⅰ~ⅢOp. 67-1~Op. 67-3;わが子にOp. 37-3;薔薇のリボンOp. 36-1;ああ、なんと悲しくOp. 49-8
ヴォルフ/ねえ、あなたなの、素敵な方;私の巻き毛の陰で;ああ、五月のことだった;おお、あなたの家が透けていれば;嫌、お若い方;私達は二人とも長い間押し黙っていました
(アンコール)
ヴォルフ/誰があんたを呼んだの
R.シュトラウス/母親の戯言Op. 43-2
シューベルト/幸福D. 433

●Elisabeth Schwarzkopf, Aldo Ciccolini

Elisabeth Schwarzkopf(S) Aldo Ciccolini(P)
録音:1969年6月29日、Nohant(ライヴ)
ARKADIA : CDGI 802.1

シューベルト/孤独な男D800;満月は輝きD797;シルヴィアにD891
シューマン/ズライカの歌;くるみの木
リスト/三人のジプシー;素晴らしいことにちがいない
ショパン/願い;リトアニアの歌;かわいい若者
ヴォルフ/あの国をご存知ですか;花園に行くのなら;私の巻き毛の陰で;ジプシー娘
R.シュトラウス/憩え、わが魂;わが子に;明日;言いました-それだけでは済みません
モーツァルト/ぼくは皇帝になりたい
R.シュトラウス/ああ、なんと悲しく
シューベルト/幸福D433

●シュヴァルツコップ1972年日本リサイタル

エリーザベト・シュヴァルツコップ(Elisabeth Schwarzkopf)(S) ジェフリー・パーソンズ(Geoffrey Parsons)(P)
録音:1972年1月27日(CD1), 1972年2月20日(CD2) 東京文化会館大ホール(ライヴ)
エフエム東京: TOKYO FM: TFMC-0023/24

CD1
シューマン/ズライカの歌Op.25-9;くるみの木Op.25-3;2つのヴェネツィアの歌Op.25-17,18;トランプ占いをする女Op.31-2
ブラームス/あの谷間の下には;セレナーデOp.106-1
R.シュトラウス/ばらのリボンOp.36-1;献呈Op.10-1
シューベルト/幸福D433
ヴォルフ/フィリーネ
シュヴァルツコップ インタビュー

CD2
シューベルト/ますD550;きみは憩いD776;恋はいたるところに(『ヴィラ・ベッラのクラウディーネ』D239より)
ラフマニノフ/こどもたちにOp.26-7
ドヴォルザーク/わが母の教えたまいし歌Op.55-4
マーラー/魚に説教するパドヴァのアントニウス
ヴォルフ/クリストブルーメにⅠ;妖精の歌;恋に気を許しちゃだめ
ヴォルフ/『イタリア歌曲集』より~わたしはもう乾いたパンを食べることはないでしょう;わたしが貴族の出でもないくせになんて云うわね;ちょっと黙ったらどお、しつこいおしゃべり屋さん!;やんごとないあなたの御身分のことはよくわかっていますわ;いけませんわ、若いお方、そんな風になさったりしては;ペンナにわたしのいいひとがいる
モーツァルト/アリア「警告」K433

●Farewell Recital - Amsterdam 1977

Schwarzkopf_parsons_1977Elisabeth Schwarzkopf(S) Geoffrey Parsons(P)
録音:1977年2月8日、Concertgebouw, Amsterdam(ライヴ)
Bella Voce : BLV 107.002

ヴォルフ/ミニョン「あの国を御存知ですか」
マーラー/私はほのかな香りを吸った
ヴォルフ/郷愁(「メーリケ歌曲集」より)
シューベルト/「冬の旅」~ぼだいじゅD. 911-5
ヴォルフ/ジプシーの娘
シューマン/くるみの木Op. 25-3
ヴォルフ/私はもう濡れていないパンを食べることはないでしょう
R.シュトラウス/ああ、なんと悲しくOp. 49-8
リスト/三人のジプシー
R.シュトラウス/憩え、わが魂よOp. 27-1
シューベルト/孤独な男D. 800
ヴォルフ/眠りに寄せて
ヴォルフ=フェルラーリ/夜、あたしは出かけた
ヴォルフ/考えてみよ、おお魂よ;もうどれほど長いこと、憧れていたことでしょう;捨てられた娘
シューベルト/糸車に向かうグレートヒェンD. 118
ヴォルフ/おお、あなたの家が透けていれば;ペンナに一人恋人がいるの
(アンコール)
シューベルト/幸福D. 433

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シュヴァルツコプフとブラームス歌曲

"Elisabeth Schwarzkopf: A Career on Record" (Alan Sanders & J. B. Steane著)というシュヴァルツコプフのディスコグラフィーが1995年にAmadeus Press (Portland)から出版されている。
この本の序文はシュヴァルツコプフにより書かれており、この出版された年の1月に亡くなった名パートナーのジェフリー・パーソンズを「15年間、世界中で私の伴奏者であり、最もすばらしい親友だった」と悼む。
さらに彼女がパーソンズと「魔王」を録音した際のエピソードを披露し、2人ともこの曲を録音するなどと全く思っていなかった中で、プロデューサーで彼女の夫のウォルター・レッグが突然スタジオのスピーカーで「魔王」を録音するよう指示を出し、行ったこの録音(1966年4月)がシュヴァルツコプフにとって最も素晴らしい録音になったと述懐している。

この本にはこの時点での完全な録音データが掲載されているが、録音されたままお蔵入りになっているデータも含まれているのが興味深い。

シュヴァルツコプフは言葉の意味するところを彫りの深い巧みな語りで表現しつくす点が高く評価されているが、そのせいか音楽のがっちりした構成のもとに形成されることの多いブラームス歌曲は不向きと思われがちだ。
確かに彼女の持ち味が最大限に生かせるのはヴォルフやR.シュトラウスだったりするわけだが、「甲斐なきセレナーデ」や「あの下の谷には」などは彼女の重要なレパートリーに含まれ、前者の見事な演技力や後者の真に心に触れる歌は、向き不向きを越えた感動を与えてくれる。サンダーズによるディスコグラフィーを見ると、1975年にパーソンズとまとまったブラームス歌曲集を録音していることが分かる。
彼女はモーツァルト、シューベルト、シューマン、ヴォルフ、R.シュトラウスについては1枚まるまる1人の作曲家の作品でアルバムを作っているが、ブラームスに関してはこれまでフル・アルバムは見当たらなかった。
この1975年録音のブラームスが、演奏活動晩年の彼女が最初で最後のブラームス・アルバムを作ろうとして録音したであろうことはほぼ確かに思われるが、未だお蔵入りしたままなのは、自己批判の厳しい彼女の了解を得ることが出来なかったのだろうか。
全20曲中12曲は彼女のほかの録音で聴くことが出来ない。選曲を見ると、娘にちなんだ数々が冒頭を飾っているのが目につく(後にルチア・ポップも同じような選曲でブラームス・アルバムを作ったものだったが、ポップの共演者もパーソンズなので、彼のアドバイスがあったのかもしれない)。シュヴァルツコプフお得意の「甲斐なきセレナーデ」が含まれていないのも興味深い。
いつか日の目を見るといいのだが。

Elisabeth Schwarzkopf(S) Geoffrey Parsons(P)(未発売)
録音:1975年12月12~22日, Evangelisches Gemeindhaus, Zehlendorf

ブラームス/娘の歌(最後の審判の日に)Op. 95-6;娘の歌(ああ、そしてわが冷たい水よ)Op. 85-3;娘の歌(夜、糸紡ぎの部屋で)Op. 107-5;娘は語るOp. 107-3;娘の呪いOp. 69-9;郷愁Ⅱ(おお、戻る道が分かればいいのに)Op. 63-8;テレーゼOp. 86-1;永遠の愛についてOp. 43-1;目隠し鬼ごっこOp. 58-1;嘆き(素敵な女(ひと)よ、信じるな)Op. 105-3;子守歌Op. 49-4;ナイティンゲールにOp. 46-4;若い歌Ⅰ(わが愛は緑)Op. 63-5;秘密Op. 71-3;鍛冶屋Op. 19-4;恋人の誓いOp. 69-4;死、それは涼しい夜Op. 96-1;悲しいかな、おまえは私をまたOp. 32-5;おお涼しい森よOp. 72-3;帰郷Op. 7-6

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シュヴァルツコプフ/リート・リサイタル(1954年)

シュヴァルツコプフが1954年にムーアと録音した「リート・リサイタル」と題されたスタジオ録音と、同年にエクサン・プロヴァンス音楽祭で指揮者ハンス・ロスバウトのピアノと共演したリサイタルのライヴ録音をご紹介したいと思う。前者はおそらく入手は難しいだろう。復活を望みたい。シュヴァルツコプフの好みのレパートリー(というよりも夫のウォルター・レッグの選曲)が見えてくる。とりわけグルックのアリアはこのほかの機会にも頻繁に歌っているようだ。

シュワルツコップ/リート・リサイタル
Elisabeth Schwarzkopf(S) Gerald Moore(P)
録音:1954年1月4日~11日, EMI Studio, No. 1, London(各曲の録音日は下記括弧内)
東芝EMI:TOCE-3028(曲目表記はCD表記のまま記載する)

Schwarzkopf_lieder_recital J.S.バッハ/御身が間近かにおられるなら(4日)
グルック/流れる小川に(4日)
モーツァルト/夕べの想いK. 523(6日);魔法使いK. 472(5日)
ベートーヴェン/悲しみの喜びOp. 83-1(10日)
シューベルト/連禱D. 343(9日);「美しい水車屋の娘」~いらだちD. 795-7(10日)
シューマン/「ミルテの花」~くるみの木Op. 25-3(9日);ことづてOp. 77-5(10日)
ブラームス/あの下の谷のそこでは(5日);ねえ、母さん、欲しいものがあるの(5日);甲斐なきセレナーデOp. 84-4(6日)
ヴォルフ/夏の子守歌(11日)
R.シュトラウス/父がいいましたOp. 36-3(6日);ひどいお天気Op. 69-5(5日)
ヴォルフ/鼠とりのおまじない(11日)

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シュヴァルツコプフ/エクサン・プロヴァンス・リサイタル
Elisabeth Schwarzkopf(S) Hans Rosbaud(P)
録音:1954年7月23日, Théâtre de la cour de l'Archevêché, Aix-en-Provence
INA : IMV067

Schwarzkopf_ina_recital J.S.バッハ/「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」~御身が間近かにおられるなら
グルック/歌劇「メッカの巡礼(思いがけないめぐり合い)」~流れる小川に
ベートーヴェン/悲しみの喜びOp. 83-1
モーツァルト/夕べの想いK. 523;警告K. 433
ペルゴレージ/もしあなたが私を愛してくれて
ヘンデル/歌劇「アタランタ」~いとしい森よ
マルティーニ/愛の喜びは
シューベルト/シルヴィアにD. 891;愛は裏切ったD. 751;孤独な男D. 800;鳥D. 691;「美しい水車屋の娘」~いらだちD. 795-7
シューマン/「ミルテの花」~くるみの木Op. 25-3;ことづてOp. 77-5
ブラームス/あの下の谷のそこでは;永遠の愛についてOp. 43-1
ヴォルフ/ミニョン;私達は二人とも長い間押し黙っていた;私の巻き毛の陰で;眠る幼子イエス;さようなら;嫌、お若いお方;夜の魔法;ジプシーの娘
スイス民謡/2人の恋人

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シュヴァルツコプフ・ソング・ブック

かつて東芝EMIからシュヴァルツコプフのソング・ブック全4集がCD化されたことがある(1994年)。
これはLPで発売された時のままの形のようだが、現在は入手困難であろう。
すばらしいアンソロジーであり、この機会に再発をぜひ望みたい。
第1集に収められている「ダニー・ボーイ」(ロンドンデリーの歌)の気品に満ちた優しい語りかけは、ヴォルフを歌う厳格な彼女とは全く違って、ただただ素晴らしい。ヴォルフ=フェラーリの歌曲は、イタリアにも独唱とピアノのための優れた芸術歌曲がまだまだ埋もれていることを示してくれた。ここで歌われている7曲を聴くだけでも、この作曲家の音楽的ヴォキャブラリーの多彩さに驚かされる。「あたしは浜辺に(Vo' fa' 'na palazzia alla marina)」は洒落たスペイン歌曲でも聴いているかのようだ。

(以下、日本語表記は原則としてCDの記載のまま)。

●シュワルツコップ・ソング・ブック(第1集)
Elisabeth Schwarzkopf(S) Gerald Moore(P)
1965年8月22~27日, Evangelisches Gemeindhaus, Zehlendorf録音

Schwarzkopf_song_book_vol_1 シューベルト/独りずまいD. 800;泉のほとりの若者D. 300;鱒D. 550;野ばらD. 257;恋はいたる所に(アリエッタ)D. 239
シューマン/2つのヴェネチアの歌Op. 25-17、25-18;献呈Op. 25-1
ヴォルフ/花を摘みに行くなら;ジプシーの娘
ヴォルフ=フェラーリ/「イタリア歌曲集」より~道を行く若者よ;あたしは浜辺に;神様が断食を;恋人よ、教えて頂戴;夜、ベッドに入るとき;夜、あたしは出かけた;若者よ、いまの中に歌え
ドビュッシー/マンドリン
ラフマニノフ/こどもたちにOp. 26-7(英訳による歌唱)
アイルランド民謡/ダニー・ボーイ
シューベルト/幸福D. 433

●シュワルツコップ・ソング・ブック(第2集)
Elisabeth Schwarzkopf(S) Geoffrey Parsons(P)
1966年4月21~29日&1967年10月24~28日, Evangelisches Gemeindhaus, Zehlendorf録音

シューベルト/魔王D. 328;わがクラヴィーアにD. 342
モーツァルト/すみれK. 476;私のねがいK. 539
シューマン/トランプを占う女Op. 31-2
マーラー/魚に説教するパドヴァのアントニウス;ほのかな香りを;高遠なる知性のおほめの言葉
ヴォルフ/さようなら;告白;飽くことを知らぬ恋;隠棲
R.シュトラウス/わが子にOp. 37-3;愛そうと思う者はOp. 49-7;ああ、なんという悲しみOp. 49-8
ストラヴィンスキー/パストラール(歌詞なし)
ムソルグスキー/きのこ狩り(独訳による歌唱)
チャイコフスキー/ピンピネルラ(るりはこべ)Op. 38-6(伊語による歌唱)

●シュワルツコップ・ソング・ブック(第3集)
Elisabeth Schwarzkopf(S) Geoffrey Parsons(P)
1968年10月20~27日, Evangelisches Gemeindhaus, Zehlendorf録音

シューベルト/ズライカⅠD. 720;ズライカⅡD. 717;べにひわの求愛D. 552
シューマン/ズライカの歌Op. 25-9
ショパン/少女の願いOp. 74-1;リトアニアの歌Op. 74-9(以上独訳による歌唱)
レーヴェ/ちっちゃなわが家Op. 71
グリーグ/最後の春Op. 33-2;睡蓮によせてOp. 25-4;きみを愛すOp. 5-3(以上独訳による歌唱)
R.シュトラウス/オフィーリアの3つの歌Op. 67
リスト/3人のジプシー
マーラー/いたずらっこをしつけるために

●シュワルツコップ・ソング・ブック(第4集)
Elisabeth Schwarzkopf(S) Geoffrey Parsons(P)
1970年8月27日~9月8日, Evangelisches Gemeindhaus, Zehlendorf録音

モーツァルト/夕べの想いK. 523;魔法使いK. 472
ブラームス/まどろみはいよいよ浅くOp. 105-2;眠りの精;メロディーのようにOp. 105-1;かりゅうどOp. 95-4;愛のまことOp. 3-1;セレナーデOp. 106-1;甲斐なきセレナーデOp. 84-4
ヴォルフ/春に;クリストブルーメにⅠ
グリーグ/最初の出会いOp. 21-1;青春の時Op. 48-5;はじめての桜草Op. 26-4;この世のなりゆきOp. 48-3
R.シュトラウス/夜Op. 10-3;子守歌Op. 49-3

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ELT祝10周年

今日は歌曲とは全く関係のない話なので、あらかじめご了承ください。

Every Little Thingが1996年8月7日に「Feel My Heart」でデビューして、今日でちょうど10年になります。

私はTVの歌番組などで普通にJ-Popは聴くのですが、CDをレンタルではなく購入するのはELTぐらいで、何故か惹かれ続けています。

五十嵐さん(キーボード、作詞、作曲)、持田さん(ヴォーカル、作詞、作曲)、伊藤さん(ギター、作曲)の3人体制でスタートして、当時隆盛をほこっていたデジタルな音楽を次々と送り出し、「Dear My Friend」「For the moment」「出逢った頃のように」「Shapes Of Love」などのヒットを飛ばしてきます。1998年2月にリリースした「Time goes by」がシングル初のミリオンを達成する大ヒットとなり、その後に出した2ndアルバム「Time to Destination」は300万を越す売上を記録して、全盛期を迎えます。その翌年の3月「だんご三兄弟」と同日発売の「Someday, Someplace」の後に初のベスト・アルバム「Every Best Single + 3」を出して、9ヶ月ほどの充電期間に入ります。2000年1月1日発売の「Pray / Get Into A Groove」で復帰し(実際にはラジオやライヴなどは行っていましたが)、次のシングル「sure」の後に3rdアルバム「eternity」をリリースすると同時に、これまでELTのプロデューサー的存在だった五十嵐さんがメンバー脱退。この時にELTは持続するか解散するかの選択に迫られたようですが、結局2人で続けていくことになり、すでに決定していた全国ツアーを行うと同時にアルバムからのリカット・シングル「Rescue me / Smile Again」をリリース。秋には2人になってからはじめて制作されたシングル「愛のカケラ」がリリースされ、さらに翌2001年1月1日リリースの「fragile / JIRENMA」がTV番組とのタイアップ効果もあり、80万枚を越す大ヒットとなります。その年の秋に出した「jump」ではヴォーカルの持田さんがはじめて作曲を手がけ、編曲者と共に思い切ってロック色の強い作品に仕上げ、様々な反響を呼びました。翌年末の「UNTITLED : 4 ballads」ははじめてシングルに4曲の新曲を収録し、うち「UNSPEAKABLE」はCM曲、「nostalgia」はドラマ主題歌になり、この2曲がTVなどで披露され、30万枚以上のヒットとなります。翌年「Grip!」を出した後に5thアルバム「Many Pieces」をリリースしますが、2年ぶりのオリジナル・アルバムでシングル曲数が多かった為か、「デージー」「ルーム」などのシングルカップリング曲のいくつかはアルバムに収録されませんでした。その年の秋には2枚目のベスト・アルバム「Every Best Single 2」がリリースされ、「Pray」から「ファンダメンタル・ラブ」までが収録されます。翌年春の6thアルバム「commonplace」は「またあした」「ソラアイ」などが収録され、これまで以上に身近なテーマを温かく歌い上げ、初期のデジタルなイメージは完全に払拭されます。その翌年にはこれまでリリースしてきた作品のアコースティック編曲バージョンによるセルフ・カバー・アルバム「ACOUSTIC : LATTE」がリリースされ、彼らの今やりたい音楽が聴き手にはっきり提示されたような印象をもちました。そしてオリジナル・アルバムとしては前回から2年ぶりの7thアルバム「Crispy Park」があさって発売となり、「恋文」「good night」「きみの て」「azure moon」「ハイファイ メッセージ」「スイミー」といったシングルを含む13曲が収録されているそうです。

初期のストレートで魅力的なつやのある声は徐々に変化し、それに伴い彼女の歌い方も変わってきています。それが聴き手の好みを分けているようですが、初期の頃でも賛否両論だったわけで、結局時間をかけて受け入れられるかどうかということだと思います。「jump」の頃の歌い方のあまりの変わり方に当時は驚いたものですが、今となっては全く普通に受け入れられています。インタビューなどの持田さんの語りも随分大人びてきて、粘りのある歌い方も信念をもって表現している印象をもちます。時に彼女のキーをこえる曲で、高音がつらそうな時がありますが、クラシックの歌手が、声に合わせてキーを下げているように、ポップス歌手もそれが許されていい気がします。ここ最近リリースされた曲はどれもいい曲ばかりで、特に「きみの て」は、ピアノの響きと持田さんの真摯な声が胸に響いてきます。今ドラマで流れている「スイミー」は歌のメロディーが高くはねあがるところなどとても魅力的で耳に残ります。

今後も声を酷使しすぎないで、いい作品を期待したいと思います。

8月いっぱいYahooで、ELTのプロモーションビデオ全部が視聴でき(一部のみの曲もありますが)、さらにこれまでリリースした作品全曲(282曲!)がランダムに聴けるようになっているので興味のある方はぜひ。

←「Crispy Park」(ハイファイ メッセージ/スイミー/風待ち心もよう/雨の鳴る夜、しずくを君に/恋文/スカーレット/SWEET EMERGENCY/あすの心/きみの て/いずれもROMANTIC/azure moon/I MET YOU/good night)

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シュヴァルツコプフ逝去

昨夜、何気なく訪れた「詩と音楽」サイトの藤井さんの投稿で、名ソプラノ、エリーザベト・シュヴァルツコプフ(シュワルツコップ)の訃報を知った(Olga Maria Elisabeth Frederike Schwarzkopf:1915.12.9, Jarotschin (現Jarocin), Germany (現Poland)-2006.8.3, Schruns, Austria)。90歳。
自宅で就寝中の死というから天寿をまっとうしたということになるのだろう。とうに引退していたとはいえ、歌曲の演奏史で最も大きな功績を残した歌手の死はやはり寂しい。1980年代にはマスタークラスの講師として来日していて、音楽誌でそのレポートを読んだ記憶があるが、実際に演奏のために来日したのは1968年から2年おきに4回だけだった。

私がはじめて彼女の録音を聴いたのはEMIから出ていた2枚組LPのシューベルト歌曲集であった。彼女がEMIに残したすべてのシューベルトのスタジオ録音を網羅したものということで、「糸車に向かうグレートヒェン」や「悲しみ」などはパーソンズ共演とフィッシャー共演の2種類の演奏が収められていた記憶がある。「ハナダイコン」「べにひわの求愛」などをはじめて聴いたのもこのレコードであった。私にとっては歌曲を聴きはじめた頃を思い出す懐かしいLPである。

彼女の演奏はかなり個性の強いもので、他の人には真似しようにも出来ないであろう。歌声には他の歌手にはない気品と色香があったが、それが単調に陥ることはなく自在に曲に合った声の色で味付けして表現していた。特に彼女の弱声の魅力は飛びぬけて素晴らしいと思う。「リートを聴く前と聴いた後では違った人間にならなければなりません。」というほど聴く人にも変化を求めているのである。彼女の歌曲に寄せる思いはきわめて強い。

最も密に共演した2人のピアニストは彼女を次のように評している。

「ほとんどの歌手がリハーサルの時に、メッツァ・ヴォーチェで歌い流すだけであるのに、シュヴァルツコプフは、練習が何時間続こうとも、つねに声をフルに出して歌う。そして私と合わせる前にも、彼女がひとりでどれほど歌ってきたことか、それは神のみぞ知る」(ジェラルド・ムーア)

「彼女の練習態度にはまったく頭がさがる。そして同じ曲が、そのたびに新しい曲にきこえてくる」(ジェフリー・パーソンズ)
(東芝EMI:TOCE-1585の西野茂雄氏の解説より)

才能に寄りかからない努力の人だったようだ。また、敏腕プロデューサーだったご主人ウォルター・レッグの影響もあるだろうが、彼女の自己批判の厳しさも尋常ではなかったらしい。再びムーアの回想から。レッグのプロデュースでレコーディングしている時のひとこまである。

「われわれが(中略)録音をプレイ・バックして聴いた際、彼女は楽譜に続けざまに、矢印、アンダー・ライン、半円、円などを書き込んだ。(中略)書き込みながら彼女は、「高すぎた」「低すぎた」「あっしまった!何てひどいのかしら」とブツブツ言うのである。こんな調子では、われわれは1枚のレコードも作ることができないのではないかと、私は本気で心配した。(中略)われわれにはどうしても不正確に聞こえないところを、エリーザベトは不正確に歌ったと主張して、われわれを困らせた。」
(ジェラルド・ムーア著「お耳ざわりですか」(萩原和子・本澤尚道共訳/音楽之友社、1982年)より)

同じような話は来日時のFM局の録音担当者の回想でも読んだことがある。それだけ自分に厳しい人だったから、当然教育者としてもとても厳しい指導をしていたようだ。

リートの伝道師という感のある彼女の歌曲演奏の録音は多いが、とりわけヴォルフの歌曲は自他ともに認める彼女の十八番であった。言葉を適切に発音し、その言葉のもつ意味を余すところなく伝えようとする彼女の姿勢は他のどの作曲家よりもヴォルフに適していたことは明らかである。「ミニョン」の4曲などは彼女の声の中に主人公のはかない運命がくっきり刻み込まれており、弱声に深い思いを込めた表現で悲しみを完璧に伝えてくる。その深さへの追究ゆえにレパートリーの向き不向きがはっきり分かれていたということは言えるだろう。彼女のレパートリーはすべてレッグが決めていたというが、聴く側の好みはあるもののどの曲も彼女のものに消化されているのは確かに感じられる。

ヴォルフももちろん素晴らしいが、私にとって彼女の数ある録音の中でもっとも印象に残っているのが、ブラームスの「静かな夜に(In stiller Nacht)」という歌曲である。これはブラームスの独唱、合唱の49曲からなる「ドイツ民謡集(Deutsche Volkslieder)」の独唱編最後(42曲目)に置かれた作品で、実はこの曲は民謡にブラームスが編曲した他の曲と違い、メロディも最初の2行以外は彼の創作らしい。独唱編42曲全曲をF=ディースカウ、ジェラルド・ムーアと共にEMIに録音しており(時に対話形式で1曲を2人で歌っているものもある)、洗練され知的な表現はこの種の作品には好き嫌いが分かれるだろうが、私はとても気に入っている。この静寂に包まれた美しい音楽に対してシュヴァルツコプフは心からの真実の表現を聴かせてくれ、聴くたびに鳥肌が立つ。

「静かな夜に」はこう歌われる。

静かな夜に、最初の見張りが立つころ、
ある声が嘆き始め、
夜風は甘く穏やかに
私にその響きを運んでくれた。
苦い苦悩や悲しみで
私の心は溶けてしまい、
花々には、澄んだ涙を
私はそれらみなにふり注いだ。

美しい月が沈もうとしている、
苦悩のあまり、もはや輝きたくないのだ。
星々もその光をとめ、
みなで私と共に泣こうとしている。
鳥の歌も、歓喜の響きも
空中に聞かれず、
野生の動物たちも私と共に
岩場や深淵で悲しんでくれる。

彼女が最後(1977&1979年)に録音した「わが友へ」と題されたDECCAの録音はその半分が得意のヴォルフに当てられ、残りにレーヴェ、グリーグとブラームスが歌われていた。つくづくリートは声だけではないと実感させられた名唱で、表現意欲の強さはいささかも衰えを見せていなかった。ブラームスの「目隠し鬼」などパーソンズの絶妙のサポートと共に、生き生きと若やいでいたものだった。

EMIに4枚の「ソング・ブック」と題された録音があり、かつてCD復活したものだが、この機会に再発を望みたい。得意のドイツものだけでなく、グリーグ、シベリウス、ショパンからムソルクスキー、チャイコフスキー、ヴォルフ=フェルラーリまで多彩なレパートリーを彼女独自の切り口で楽しませてくれた。

またしても歌曲演奏の一つの時代が幕を下ろした。
ナチスとのかかわりなど晩年は暗い側面がクローズアップされた感もあるが、彼女の残してくれた遺産はやはり限りなく大きなものがあったことに間違いない。
一つ一つの録音にじっくり大切に耳を傾けながら、心からご冥福をお祈りしたいと思います。

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ショパンの歌曲「許婚者」

先日ショパン(Frederic Chopin:1810-1849)の歌曲を集めたCDを聴いていたら、ちょっと驚くことがあった。

ショパンの歌曲というと一般には馴染みが薄いと思う。
実際私も「願い(Życzenie)(「乙女の願い」というタイトルで有名)」や「春(Wiosna)」「美しい若者(Śliczny Chłopiec)」ぐらいしかすぐには思い浮かばないが、全部で20曲のポーランド語の歌曲が残されており、そのうち17曲はショパンの死後、1856年に親友のフォンタナによって、「17のポーランドの歌」Op. 74として出版されたという(Op. 74から漏れた3曲は「魅惑(Czary)」「ドゥムカ(Dumka)」と、歌声部のみの「どんな花、どんな花冠(Jakiez kwiaty, jakie wianki)」)。

それでなぜ驚いたかというと、「許婚者(Narzeczony)」という歌曲(Op. 74-15)の前奏が始まった時、両手が半音階進行でうなるように1オクターヴのユニゾンを奏でていて、これはまさにヴォルフ(Hugo Wolf:1860-1903)の「風の歌(Lied vom Winde)」ではないかと思ったのだ。

ヴィトヴィツキの詩による「許婚者」は、風吹く中、草原の中を馬を駆ってきた若者が恋人の死に際に間に合わなかった苦悩を訴える内容である。

小坂裕子さんという方が「ショパン 知られざる歌曲」(集英社 2002年発行)という本を出していて、この巻末にショパン歌曲のうち13曲の楽譜が付けられているので「許婚者」を見てみた。

「許婚者」の前奏では十六分音符のうなりは4分の2拍子で8小節続くが、うち最初の6小節は完全に半音階進行で、フラット3つの調号で「ニ音(右手)/に音(左手)」ではじまる。
一方、ヴォルフの「風の歌」の前奏では十六分音符のうなりは8分の6拍子で4小節続き(4分の3拍子に直すと6小節になる)、シャープ3つの調号で「嬰ロ音=ハ音(右手)/嬰ろ音=は音(左手)」ではじまる。

「許婚者」の詩の第1行が「風はしげみをざわつかせる」であり、ピアノパートが風の吹く様を描写していることは明らかである。
一方「風の歌」はタイトルが示すとおり、子供と風との対話であり、同じくピアノパートが風の吹きすさぶ様子をあらわしている。

ただ、「許婚者」では風の半音階表現は歌のない前奏、間奏、後奏に限られるのに対して、「風の歌」は歌の最中にも風の表現があらわれているという違いも見られる。

ショパンの「許婚者」は前述したように1856年に出版されているが、
ヴォルフが「風の歌」を作曲したのは1888年2月29日のことである。
ショパンの歌曲集Op. 74の楽譜が当時のオーストリアで入手可能だったかどうかは分からないが、小さい頃から家庭音楽会でショパンの曲を演奏し、批評家として活動していた時期にはルビンシテインの演奏に接して、ショパンを傑出したピアノの巨匠と称えていることからも、ヴォルフにとってショパンの音楽が身近にあったことは確かである。

両歌曲を繰り返し聴いてみても、単なる偶然とは言い切れない気持ちになるのだがいかがだろうか。

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