アーメリング日本公演曲目1996年
第11回来日:1996年4月
4月5日(金)19:00 福岡シンフォニーホール
4月11日(木)19:00 紀尾井ホール
4月16日(火)19:00 イシハラホール(大阪)
4月23日(火)19:00 仙台青年文化センターコンサートホール
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●さよならコンサート 共演:ドルトン・ボールドウィン(P)
シューベルト(Schubert)/「ロザムンデ」~ロマンツェD. 797;孤独な男D. 800;泉のほとりの若者D. 300;水の上で歌うD. 774;戸外でD. 880;エレンの歌Ⅰ“憩え、兵士よ”D. 837;エレンの歌Ⅱ“狩人よ、狩を休んで”D. 838;エレンの歌Ⅲ“アヴェ・マリア”D. 839
~休憩~
シューベルト/ミニョン“あの国を御存知ですか”D. 321;ミニョンの歌“語れとおっしゃらないで”D. 877-2;ミニョンの歌“ただ憧れを知る者だけが”D. 877-4;ミニョンの歌“私をこのままの姿でいさせて”D. 877-3;月に寄せてD. 193;夕映えの中でD. 799;「ヴィラ・ベラのクラウディーネ」~恋はあらゆる道にあるD. 239-6;笑ったり泣いたりD. 777;はじめての喪失D. 226;子守歌D. 867
4月11日アンコール:至福D. 433(シューベルト);はなだいこんD. 752(シューベルト);歌の翼にOp. 34-2(メンデルスゾーン)
エリー・アーメリング(Elly Ameling)は、1995年のアメリカ公演を皮切りに世界各国でさよならコンサートを開き、故郷オランダでの1996年1月のコンサートをもって日本以外でのコンサートを締めくくった。まだ早いという声の寄せられる中、彼女の信念は変わらなかったという。1996年4月23日の仙台公演が、彼女の引退コンサートツアーの最後となった。ピアニストは、前回公演まで4回連続で同行したルドルフ・ヤンセンではなく、1980年代前半まで緊密な関係を築いてきたドルトン・ボールドウィン(Dalton Baldwin)であった。私は4月11日の紀尾井ホール公演を聴いたが、コンサートは引退公演ということを忘れてしまうほど淡々といつものアーメリングの歌が進んでいった。確かに声のコントロールは以前のような完璧さではなかったが、声の美しさ、温かさは相変わらず保たれていた。まだ熟れ過ぎない状態のうちに一線を離れるというのは彼女の美学なのかもしれない。お得意のシューベルトのみによるプログラムは、エレンの歌やミニョンの歌を揃えたり、水に因んだ曲や夕暮れ・夜の曲を並べたりと、彼女らしい配慮は相変わらずである。私はこれが最後だと思うと本当にどの歌声も聴き漏らしたくないというほど集中して聴く意気込みだったが、何の気負いもない彼女の演奏は普段のコンサートと殆ど変わらず、正規のプログラムが終わっても涙や感傷とは全く無縁のさばさばしたものであった。NHKからの録画伺いを辞退したという彼女の気持ちを察すると我々が感じる以上に自ら引き際を感じていたのだろう。アンコールで彼女のトレードマークのような「至福」が聴けて、彼女にどれほど至福の時を与えてもらったことか、ただ感謝の気持ちのみであった。アーメリングはこの時の雑誌のインタビューで「もう歌わないと決めるとまた歌いたくなるところはありますね。どこか小さな町でこっそり歌うかも」というようなことを言っていたが、幸いそれが実現するのである。
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コメント
どうも、ご無沙汰しております。
このシリーズ、楽しみにしていましたが、とうとう今回で終りですね。それにしても、資料の宝庫ですね、これは。自分のようなにわかファンには目もくらむような。
ところで、前の記事にアーメリングによるビリティスの歌の録音があると書かれていましたが、なんという名前のレコードでしょうか。お知らせいただければ幸いです。
投稿: sbiaco | 2006年7月10日 (月曜日) 23時11分
sbiaco様、こんばんは。
いつもコメントを有難うございます。
このシリーズ、実はこれが最後ではなく、もう1回あるのです。引退コンサートのアンコールとして、上記以外の2都市で催されました。それも近く投稿したいと思っています。
ご質問のレコードですが、「アメリング・ドビュッシー、フォーレを歌う」と題されたCBS SONYから出たLPレコード(25AC 1171)で、1979年11月録音です。「忘れられた歌」「ビリティスの歌」(以上ドビュッシー)と「優しい歌」(フォーレ)が収められており、ピアニストはボールドウィンです。CD化は望めそうもないので、図書館か中古屋を探すしかなさそうです。ebayやMikrokosmosなどのサイトをこまめに見ていると出品されるかもしれません。
投稿: フランツ | 2006年7月11日 (火曜日) 01時02分
ご回答ありがとうございます。
どうもEMIの全集の(アーメリング版)落穂拾いみたいな感じですね。こんなのがあったとは驚きです。CD化されそうもないというのは残念としかいいようがありません。
投稿: sbiaco | 2006年7月13日 (木曜日) 23時18分