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ブリギッテ・ファスベンダー

BRIGITTE FASSBAENDER Lieder Vol. 1

EMI CLASSICS:7243 5 85303 2 2

Karl Engel(P);Erik Werba(P);Irwin Gage(P)

シューマン/ジプシーの歌ⅠOp. 79-7;ジプシーの歌ⅡOp. 79-8(エンゲル:P)

リスト(ダルベール編)/3人のジプシーS. 320(エンゲル:P)

チャイコフスキー/ジプシーの歌Op. 60-7(エンゲル:P)

ドヴォジャーク/「ジプシーのメロディー」Op. 55(全7曲)(エンゲル:P)

ブラームス/「ジプシーの歌」Op. 103(全8曲)(エンゲル:P)

ブラームス/テレーゼOp. 86-1;静かな夜に;あの下の谷底に;鍛冶屋Op. 19-4;もうあなたの許に行くまいOp. 32-2;死、それは涼しい夜Op. 96-1;荒野を越えてOp. 86-4;墓地でOp. 105-4;ナイティンゲールに寄せてOp. 46-4;郷愁Ⅱ「おお戻る道が分かればいいのだが」Op. 63-8(ヴェルバ:P)

リスト/おお!夢に来ませS. 282;マルリングの鐘S. 328;昔、トゥーレに王がいたS. 278(ゲイジ:P)

Fassbaender_lieder_vol_1

ブリギッテ・ファスベンダー(Brigitte Fassbaender:1939年7月3日Berlin生まれ)が演奏活動を退いてからすでに久しいが、彼女は現役最後の数年間、特にリートの録音、コンサートを活発に行った。私が彼女の実演を聴いたのはこれまでで一度だけ出かけたことのある海外においてであった。フェルトキルヒ(Feldkirch:現地の列車のアナウンスでは「フェルトキルフ」のように聞こえた)のシューベルティアーデという一連のシューベルトを中心としたコンサートシリーズで、ツィーザク、バンゼ、プレガルディエン、ベーア、トレーケル(ゲルネの代役)たちとのシューベルト重唱曲の夕べで、ピアニストはヤンセンとヴォルフラム・リーガーだった。ズボン役で有名なファスベンダーは予想外に小柄だったが、実際に聴いて際立っていたのがその声量の豊かさだった。ベーアと二重唱を歌った時もベーアが気の毒になるくらい、ファスベンダーの声は朗々と響き渡っていた。その1度きりの実演以外は彼女の演奏を録音で聴くしかなかったのだが(来日公演は聴き逃してしまった)、録音で聴く限り、彼女の演奏の特徴はそのおおらかな表現にあるように感じていた。あまり細かい解釈にこだわらずに、彼女の気分のおもむくままにという印象があり、良く言えば作為がなくとても自然、でも時に粗雑に感じることも否定できなかった。もちろん彼女とて事前の準備を万端に行っているのだろうが、まとまりよりは解放を感じさせるものがあった。声の質は粘りがあり、他のどのメゾソプラノ歌手とも違ったユニークな声である。そんな彼女のごく初期の録音が数年前にCDで復活している。それが最初に記したジプシーにちなんだ歌曲集である。これ以上ないぐらい絶妙なカール・エンゲルのピアノと共に彼女の演奏のベストの一つかもしれない。後年に比べるとむしろきっちりと作品に寄り添っていながら、彼女の持ち味である野性味あふれる声と表現がまさにこれらの曲の情熱と悲哀を映し出していた。冒頭のシューマンの2つのジプシーの歌など、こんなに小さな曲から深い哀感を滲ませていた。彼女特有の粘りのある声は人の情感の機微を味わい深く歌い上げるのである。

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