岩城宏之の「冬の旅」
指揮者、岩城宏之氏(いわきひろゆき:1932年9月6日-2006年6月12日)の著書を学生時代に図書館で拾い読みしたことがある(書名は失念してしまった)。あけっぴろげな文章が印象的だったように記憶する。彼は数々の病魔と闘いながら、今年も車椅子で舞台に立っていたそうだ。そんな彼の「冬の旅」の録音が残っている。音楽監督を務めるオーケストラ・アンサンブル金沢を振って、ヘルマン・プライ(Hermann Prey)が歌ったものである。このコンビでかつてDGにシューベルトのオーケストラ編曲歌曲集を録音した際、「冬の旅」からの数曲を鈴木行一(すずきゆきかず)が編曲したものをプライが気に入り、全曲の編曲を鈴木が担当することになったそうだ。プライ最晩年の歌であり、前のめりになりがちな彼特有のリズムに動じることもなく、岩城率いるオケの演奏は落ち着いたくすんだような響きでオリジナルのイメージを保ったまま安定した演奏を聴かせている(OEK自主制作:OEK-1001:1997年10月7日、MünchenのPrinzregententheaterでのライヴ録音)。鈴木の編曲はピアノパートで歌の対旋律を響かせる箇所など管楽器を使うことが多いようだが、変に浮き立たず、原曲の響きを裏切ることはない。「おやすみ(Gute Nacht)」のスタッカート気味のぽつぽつした連打は主人公の失意の歩みと同時に変わることなく降りつづける雪までイメージされる。「宿(Das Wirtshaus)」など弦の響きに強く引き込まれる。
ルーマニア生まれのハンガリー人作曲家、ジェルジ・リゲティ(György Sándor Ligeti:1923年5月28日-2006年6月12日)にも歌曲があるそうだ。「梅丘歌曲会館 詩と音楽」で藤井さんが投稿されているのでぜひご覧になってください。
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