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ヴォルフ歌曲全曲演奏会Ⅷ、Ⅸ(2006年4月19日 浜離宮朝日ホール)

ヴォルフ歌曲全曲演奏会Ⅷ(ライニク歌曲集・スペイン歌曲集《宗教編》)

2004年4月19日(水)19時開演 浜離宮朝日ホール

井坂惠(MS) 福井敬(T) 松川儒(P)

○ライニク歌曲集

夏の子守歌(MS)/冬の子守歌(MS)/セレナーデ(T)/愛の使い(T)/いとしいひと、きみはどこに?(T)/このよろこびをどこへ(MS)/夜の挨拶(MS)/春のつりがね草(MS)/職人の歌(T)/宴席の歌(T)/たのしい知らせ(T)/朝の気分(T)

~休憩~

○スペイン歌曲集《宗教編》

今こそわたしはあなたのもの(MS)/さあ、歩くのだよ、マリア(T)/神を生みたもうたあなた(T)/棕櫚の樹をめぐって飛ぶものたち(MS)/御子よ、ベツレヘムへお導きください!(T)/ああ、幼な児の瞳は(MS)/ああ、心のまどろみの長かったこと!(T)/主よ、この地にはなにが芽生えるのでしょう(T)/愛する方、あなたは傷を負われて(MS)/罪を背負い、辛苦の果てにわたしは来ました(MS)

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ヴォルフ歌曲全曲演奏会Ⅸ(スペイン歌曲集《世俗編》)

2006年4月23日(日)16時開演 浜離宮朝日ホール

釜洞祐子(S) 永田峰雄(T) 松川儒(P)

○スペイン歌曲集《世俗編》

緑の窓から(T)/愛を信じたらだめよ(S)/すべてのものは、心よ、憩っている(T)/愛がわたしの心に(S)/苦しい歓喜と歓喜の苦しみ(S)/おまえが花苑へ行くのなら(T)/わたしの髪のかげで(S)/恋を取り逃がす男など(T)/いかに恋人がそう誓っても(S)/フアーナは変な娘だ(T)/燃える心に苦しむのも(T)/だれがきみのあんよを傷つけた?(S)/口さのない人たちにはいつも(S)/わたしの恋人を誘惑した人は(S)/恋人をすきなだけからかうんだね(T)/ああ、お母さん、頼んでちょうだい(S)/心よ、落胆するのはまだはやい(T)

~休憩~

あれはあなただったのね、御立派なお方(S)/眼あきのめくら(T)/おつむよ、おつむよ、うめくんじゃないの(S)/かわいい恋人よ、おまえの母は(T)/進軍のラッパが鳴っている(S)/泣くんじゃない、お目々さん!(S)/ああ、それは五月のことだった(T)/心深くに苦しみを秘めていても(T)/わたしを花でつつんでね(S)/いつの日かぼくの思いは(T)/海を行こうと(T)/ひびけ、ひびけ、わたしのパンデーロ(S)/憎々しげな眼つきでぼくを見ようと(S)/あの人にわたしのところへ来てと言って(S)/恋人よ、まだ眠っているのなら(T)/来たれ、おお、死よ(T)/さあ、もう行くときよ、わたしの恋人!(S)

井坂惠(いさか・めぐみ):メゾソプラノ歌手。武蔵野音大大学院修了後、カールスルーエ音大、ザルツブルク音大で研鑚を続ける。二期会「フィガロの結婚」(ケルビーノ)、「ばらの騎士」(オクタヴィアン)などに出演のほか、オラトリオ、歌曲の分野でも活躍する。グリーグの歌曲集「山の娘」を1999年10月に歌うが、これが原語での日本初演だったとのこと、北欧歌曲は層が薄いのだろうか。この分野での彼女の今後の活動が期待される。私は今回、初めて彼女の歌声に接したが(「ゲーテ歌曲集」の時は、朗読で出演された)、その落ち着いて安定した美声はとても心地よく、また核心に向かっていこうとする彫りの深い歌唱を特に「スペイン歌曲集」の宗教編で感じた。とりわけ最後に置かれた「罪を背負い、辛苦の果てにわたしは来ました」の深い声と解釈は感動的だった。前半「ライニク歌曲集」と後半「スペイン歌曲集」とで衣装を変え、後半の赤い衣装はスペインの情熱と同時に、受難したキリストの血を暗示しているようにも感じられた。

福井敬(ふくい・けい):テノール歌手。国立音大大学院修了後、イタリアに学び、1989年イタリア声楽コンコルソでミラノ大賞受賞。その他多数の受賞歴あり。二期会「ラ・ボエーム」(ロドルフォ)でデビュー後、「蝶々夫人」「ローエングリーン」など数多く出演する。以前、横山幸雄と「美しい水車屋の娘」の日本語訳(松本隆訳)の録音をリリースしているので(未聴だが)、てっきりドイツリートのコンサートもおこなってきていると思いきや、福井氏曰く、今回が本格的なドイツ歌曲の初めてのコンサートとのこと。よく響く、耳に快い美声で、ドイツ語もなかなかだと思ったが、「a」の音がこもり気味になるのは癖だろうか。ちょっと気になった。イタリアものが得意な人はドイツリートを敬遠する傾向があるように思うので、福井氏にはどんどんリートも歌ってほしい。爽やかなライニク歌曲集が彼の声と表現に特によく合っていた。

釜洞祐子(かまほら・ゆうこ):ソプラノ歌手。吹田市出身。神戸女学院大学卒業、東京音大オペラ研究科修了。1982年第51回日本音楽コンクール第1位。ミュンヒェンへ留学し、1986年から1992年までカッセル歌劇場で歌う。「魔笛」「ホフマン物語」「セビーリャの理髪師」「ナクソス島のアリアドネ」など、オペラの数々の出演で絶賛されるほか、コンサート、歌曲リサイタルと幅広く活動している。ヴォルフ全曲シリーズに以前出演された時も聴くことが出来、少年の声のような素直な響きをもった彼女の声がヴォルフの「ゲーテ歌曲集」をとても聴きやすいものにしていた。今回のスペイン歌曲集も師ヤンセンと共にかつて数曲CD録音していたが、喜怒哀楽を確かな技術のうえにストレートに表現して見事だった(いろいろな感情を演じ分けるのは大変だと思うが)。ただ私の席(2列目中央)からだと、楽譜たてに邪魔されて顔の表情がほとんど見えなかったのが残念だった。「あの人にわたしのところへ来てと言って」の詩を大阪弁で朗読したらどうなるかを実演してくれて(いい意味で)イメージを裏切ってくれて面白かった。

永田峰雄(ながた・みねお):テノール歌手。新潟県出身。東京芸大大学院修了。1986年第1回日本モーツァルトコンクールで優勝し、1991年アサヒビール芸術文化財団の奨学生として渡欧。ライプツィヒ、ヴュルツブルク、ミュンスターなど各地の歌劇場で歌う。ヴォルフ全曲シリーズでは過去に「ゲーテ歌曲集」に出演した時にも聴いたが、難解な多くの曲を安定した技巧とみずみずしい声で安心して聴かせてくれた。今回は、庶民の様々な感情を描き出す「スペイン歌曲集」で、静かな曲から劇的な曲まで多彩な表現を聴かせてくれて素晴らしかった。「燃える心に苦しむのも」で自分の心を競りにかけるという比喩で「ひとつ」「ふたつ」「みっつ」と木槌を打つ箇所は身振りを加えての熱演だった。

松川儒(まつかわ・まなぶ):ピアニスト。神奈川県出身。東京芸大卒業後、シュトゥットガルト国立音大大学院、カールスルーエ国立音大大学院リート科を修了。オペラ制作やコレペティトーアとしての活動の一方、ソリスト、室内楽演奏、歌曲演奏と幅広い活動をしている。第11回シューマン国際コンクール公式ピアニストも務めた。このヴォルフ歌曲全曲演奏会は彼の経歴の中でも特に輝かしいものの一つになることだろう。一人で全曲弾きこなすだけでも計り知れない労力だと思われるが、おそらく選曲や人選などにもかかわっているのだろうし、ステージ上でのトークまでこなす活躍ぶりである。演奏は一貫して曲を自分のものにしている印象を受ける。歌手を支える箇所と自ら前面で主張する箇所のどちらにも臨機応変に対応している。

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