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アーメリング日本公演曲目1980年

第4回来日:1980年

11月30日(日)18:30 群馬音楽センター(リサイタルA)
12月3日(水)19:00 毎日ホール(大阪)(リサイタルA)
12月6日(土)18:30 福島県文化センター(リサイタルB)
12月8日(月)18:30 電力ホール(仙台)(リサイタルA)
12月10日(水)18:30 神奈川県立音楽堂(リサイタルA)
12月13日(土)19:00 東京文化会館(リサイタルB)
12月16日(火)18:45 東京文化会館(東京交響楽団第266回定期演奏会)

●リサイタルA 共演:ダルトン・ボールドウィン(P)

シューベルト(Schubert)/春にD882;春の信仰D686;春の神D448;シルヴィアにD891;ちょうちょうD633

シューベルト/秘めたる恋D922;夜のすみれD752;月に寄すD296;わたしを愛していないD756;見よ、白き月D688-2;若い尼D828

~休憩~

シューベルト/エレンの歌Ⅰ(兵士よ、憩え)D837;エレンの歌Ⅱ(狩人よ、憩え)D838;エレンの歌Ⅲ(アヴェ・マリア)D839

シューベルト/笑いと涙D777;恋人のそばにD162;千変万化の恋人D558;糸を紡ぐグレートヒェンD118;セレナーデ(聞け、聞け、ひばりを)D889

●リサイタルB 共演:ダルトン・ボールドウィン(P)

シューマン(Schumann)/「リーダークライス」Op.39(異郷にて;間奏曲;森の語らい;静けさ;月の夜;美しき異郷;城の上で;異郷にて;憂い;たそがれ;森で;春の夜)

~休憩~

ショーソン(Chausson)/ナニーOp. 2-1;ちょうちょうOp. 2-3;はちすずめOp. 2-7

プーランク(Poulenc)/「くじびき」(おねむ;不思議な出来事;ハートのクィーン;バ、ブ、ビ、ボ、ビュ・・・・・・;天使の音楽家;赤ちゃん水差し;4月の月)

グラナドス(Granados)/控え目なだて男

グァスタビーノ(Guastavino)/バラと柳

トゥリーナ(Turina)/カンターレス;恋に夢中

●東京交響楽団第266回定期演奏会 共演:東京交響楽団;秋山和慶(C)

ラヴェル(Ravel)/「シェエラザード」(アジア;魅惑の笛;つれない人)

モーツァルト(Mozart)/モテット「踊れ喜べ、幸いなる魂よ」K. 165(158a)

~休憩~

ベルリオーズ(Berlioz)/幻想交響曲Op. 14

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アーメリング4回目の来日公演は2種類のリサイタルと共に、はじめての日本のオーケストラとの共演が含まれる。彼女は過去3回の来日のいずれでも必ずシューベルトを歌ってきたが、今回も2回目の来日に続きオール・シューベルト・プログラムがある。彼女のシューベルト・プログラミングにはどうやら一定の傾向があるようだ。明るい軽快な曲主体の中に悲痛な曲を1、2曲入れてアクセントにしていること、春の歌や同シリーズの曲(「エレンの歌」「ズライカ」「ミニョンの歌」など)をまとめて歌うこと、最後に歌ってもおかしくない「糸車に向かうグレートヒェン(糸を紡ぐグレートヒェン)」を最後から2番目に置き、最後は明るい曲(例えば「至福」)で締めくくることなどが挙げられる。今回のシューベルト・プログラムではこれまで歌っていない曲も多く含まれるが、「春の神」「見よ、白き月」はちょうどこの頃アーウィン・ゲイジとCBS SONYに録音しており、早速ステージでとりあげている。

リサイタルBは前半がシューマンのアイヒェンドルフの詩による12曲からなる「リーダークライス」Op. 39全曲。一方後半はショソン(ショーソン)の歌曲3曲、プランク(プーランク)晩年の「くじびき」全曲、それにグラナードス、グァスタビーノ、トゥリーナといったスペイン歌曲の初披露で締めくくっている。森や小川、月など、ロマン派の自然描写の中で詩人の情感が歌われる「リーダークライス」は1979年にデームスと録音し、新たなレパートリーの初披露となった。後半最初のショソンは「ちょうちょう」と「はちすずめ」が1972年にボールドウィンと録音(EMI)されていたが、「ナニー」はとうとうスタジオ録音されなかった。プランクの歌曲集「くじびき」はEMIのプランク全集で録音している。最後のスペイン歌曲の数々についてはトゥリーナの「カンターレス」のみ録音されなかったが、ほかはCBS SONYのオムニバス盤で録音されている。ただ情熱的な「カンターレス」は1989年の来日公演でも歌っており、お気に入りの曲なのだろう。軽快→繊細→情熱→快活といった4曲の配列がまたよく考えられていると思う。

東京交響楽団第266回定期演奏会への出演は、彼女の来日史上、最初で最後の日本のオーケストラとの共演である。ラヴェルの「シェエラザード」はこの翌年10月に録音することになるが、モーツァルトの「踊れ喜べ、幸いなる魂よ」はすでに1969年8月にスタジオ録音済みで、さらに6月のイギリス・ライヴ録音もBBC LEGENDSで聴くことが出来る。まさに彼女の伸びやかな美声が存分に発揮されたであろう「踊れ喜べ、幸いなる魂よ」に対して、当時は録音も出ていなかったオリエンタルな響きの「シェエラザード」は聴衆にとっても新鮮な選曲だったのではないだろうか。

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(5月28日追記)

リサイタルBで歌われたショソンの「ちょうちょう」と「はちすずめ」について、「詩と音楽」サイトでFujiiさんがとりあげてくださり、大変興味深いので是非ご覧ください。この2曲、それぞれゴティエとルコント・ド・リールの詩なのですが、恋人の唇の上で死にたいという同じテーマを歌っていたということを教えていただきました。

http://umekakyoku.at.webry.info/200605/article_19.html

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コメント

Franzさん今晩は。最近絶好調なようですね。興味深い記事が続いて何よりです。
しかしアメリンクのレパートリーの広さには驚くばかりです。グアスタヴィーノまで歌っていたとは...
くしくも昨日は彼女のショーソンの録音をじっくりと聴きました。幣サイトで記事をUPしましたので何かの折にでもご覧いただければ幸いです。

投稿: Fujii@歌曲会館 | 2006年5月28日 (日曜日) 22時30分

Fujiiさん、こんばんは。
「詩と音楽」のサイトもほぼ毎日更新されていて、すごいですね。
自分でブログをやってみると更新の大変さが身にしみて分かるので、Fujiiさんの更新のスピードと中身の濃さにはただただ脱帽です。
ショーソンの2曲を早速とりあげてくださり、有難うございます。アーメリング以外の演奏や詩の解釈についても知ることが出来、なにより私の疎いフランス語の訳を丁寧につけておられるのでとても重宝しています。F=ディースカウの「ベル・エポック」と題されたフランス歌曲集、実はまだ手に入れていないので、中古屋でこまめに探したいと思います。マーティン・ヒルは確かアーン歌曲集が出ていたと思いますが、ショーソンも歌っていたのですね。今度チェックしてみたいと思います。

投稿: フランツ | 2006年5月28日 (日曜日) 23時27分

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