アーメリング日本公演曲目1972年
エリー・アーメリング(Elly Ameling:1933.2.8-)は歌手として1972年2月から1997年5月まで12回来日公演を行っている。私がはじめて彼女の実演に接したのは1987年11月の神奈川県民ホール(小)だったが、東京文化会館の資料室には過去のプログラムが整理保管されており、アーメリングの初来日以降のプログラムも確認することが出来た。これから彼女の過去の演目を少しずつ公開していきたい。彼女の最後の来日時に、この演目表をご本人にお送りしたが、彼女自身もこのような記録を付けていなかったそうで喜んでくださった。
第1回来日:1972年
2月26日(土)19:00 日比谷公会堂(リサイタル)
2月29日(火)19:00 日比谷公会堂(バッハ・プロA)
3月1日(水)19:00 東京文化会館(バッハ・プロB)
3月2日(木)19:00 愛知県勤労会館(バッハ・プロC)
3月3日(金)19:00 大阪フェスティバルホール(バッハ・プロD)
3月4日(土)18:30 岡山市民会館(バッハ・プロC)
●リサイタル 共演:小林道夫(Michio Kobayashi)(P)
ドビュッシー(Debussy)/「はなやかなうたげ」第1集(Fêtes galantes, I Série)(ひそやかに;あやつり人形;月の光)
ルーセル(Roussel)/夜のジャズ(Jazz dans la nuit)Op. 38;若い紳士へ(Á un jeune gentilhomme)Op. 12-1;貞淑な妻の答え(Réponse d'une épouse sage)Op. 35-2;炎(Flammes)Op. 10;危険に瀕した心(Cœur en péril)Op. 50-2
カプレ(Caplet)/「ラ・フォンテーヌの三つの寓話(Trois Fables de Jean de la Fontaine)」(からすときつね;せみとあり;おおかみと小羊)
~休憩~
シューベルト(Schubert)/ガニメードD544;春のおもいD686;水の上で歌うD774;しげみD646;春にD882;秘めたる恋D922;糸を紡ぐグレートヒェンD118;ズライカⅠ(このひそやかなものの気配は)D720;幸福D433
●バッハ・プログラムA 共演:ドイツ・バッハ・ゾリステン(Deutsche Bachsolisten);ヘルムート・ヴィンシャーマン(Helmut Winschermann)(C、OB)
悲しみを知らぬ者BWV209;ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051;われはわが幸いに心満ちたりBWV84;オーボエ協奏曲ヘ長調BWV1053
●バッハ・プログラムB 共演:ドイツ・バッハ・ゾリステン;ヘルムート・ヴィンシャーマン(C、OB)
ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048;わが心は血にまみれBWV199;フルート、ヴァイオリン、チェンバロのための協奏曲イ短調BWV1044;結婚カンタータ「いまぞ去れ、悲しみの影よ」BWV202
●バッハ・プログラムC 共演:ドイツ・バッハ・ゾリステン;ヘルムート・ヴィンシャーマン(C、OB)
ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048;結婚カンタータ「いまぞ去れ、悲しみの影よ」BWV202;ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051;フルート、オーボエ、ヴァイオリンのための協奏曲ニ長調BWV1064
●バッハ・プログラムD 共演:ドイツ・バッハ・ゾリステン;ヘルムート・ヴィンシャーマン(C、OB)
悲しみを知らぬ者BWV209;ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048;ヴァイオリン協奏曲イ短調BWV1041;結婚カンタータ「いまぞ去れ、悲しみの影よ」BWV202
日程を見ると、リサイタルとバッハ・プロAの間に2日空きがある以外は毎日歌っていたことになる。当時、世界中で売れっ子だった彼女だけにこうするしかなかったのかもしれないが、声に影響はなかったのだろうか。
リサイタルの演目はかなり意欲的で、前半をドビュッシー、ルーセル、カプレのフランスものでまとめ、後半はシューベルト9曲を歌い、彼女の仏独両面の歌唱を堪能できる選曲だったと言えるだろう。なお、彼女はドビュッシーの「はなやかなうたげ」第1集をEMIの全集で録音しているが、ルーセル、カプレの曲はここで歌った中のそれぞれ1曲ずつしか録音していない(ルーセル「貞淑な妻の答え」とカプレ「からすときつね」)。
過去のブログでも書いたが、初来日公演最終日の2週間後にロンドンで歌った「マタイ」抜粋のライヴがBBC LEGENDSからCD化されているので、当時の声がどのようなものだったかを知るには格好の録音だろう。
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コメント
72年といえば、ほぼ30年前ですね。ずいぶん前のことのようでもあり、ほんの最近のことのようでもあるのは、自分が60年代に生まれたせいかもしれません。
当時はルーセルやカプレなどもよく聴かれていたのでしょうか。いまではこのあたりのものを聴こうとしても、なかなかCDが手に入りませんね。カプレはともかく、ルーセルはちょっと聴いてみたいと思っています。マディ・メスプレのEMIのベスト盤で何曲か聴いたかぎりでは、非常にいい曲を書くひとだという気がします。
ドビュッシーといえば、彼女の魅力にはじめてふれたのが「艶なる宴」の、ことに「操り人形」の、それも最後の部分でした。あの「アアアー」を何度も聴くうち、このひとはほかの歌手とは違う、という確信みたいなものが生まれたのでした。いまからほぼ3年前のことです。
それまではクラシックの声楽など一生縁がないだろうと思っていたのに、たまたま中古屋で手に取ったCDがその後の好みを一変してしまったのですから、出会いとはふしぎなものだという気がします。
どうも本題とあまり関係のないコメントになってしまい恐縮です。それもいつのまにか己れを語り始めていて、まったく恥ずかしいったらありはしません。でも、続けざまにいくつもの記事を書いてくださったのですから、嬉しくなってつい書きこんでしまいます。フォーレの記事にもコメントしたかったのですが、あまり自分ばかり書いていると、ほかのひとが敬遠しそうなのでやめておきます。
投稿: sbiaco | 2006年5月14日 (日曜日) 20時18分
sbiaco様、こんばんは。
ルーセルはかつてEMIから歌曲全集が出ていました(今も入手できるか分からないですが)。昔も今もそれほど注目を浴びる作曲家ではないのかもしれません。「夜のジャズ」など曲調はジャズを意識しているのでしょうが、あまりジャズっぽくないのに何故か惹かれるものがあり、往年の歌手クロワザはルーセル自身のピアノでこの曲を録音しています。
メスプレはEMIに歌曲集成があるようですが、彼女の声を聴くと、ドイツの昔のソプラノ、エルナ・ベルガーを思い出します。コロラトゥーラなのにリリカルな歌曲も多数歌い、ユニークな魅力を放っているところも共通しているように思います。
「操り人形」のアーメリングも確かに素敵ですね。「ラララ」の箇所もコケティッシュで、しかも言葉がしっかりリズムに乗っているのがすごいと思います。同時に「艶やかな宴」の他の2曲(ひそやかに/月の光)も同様に素晴らしい歌唱だと思います(相互リンクをさせていただいている「詩と音楽」のサイトで「艶やかな宴」について最近取り上げられましたのでぜひご覧になってみてください)。
http://umekakyoku.at.webry.info/200605/article_10.html
sbiacoさんのお話、とても興味深かったです。何が縁になるか本当にわからないものですね。これからもよろしくお願いします。
投稿: フランツ | 2006年5月15日 (月曜日) 00時29分