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クレール・クロワザ

20世紀前半のフランス歌曲の歌姫といえば、ニノン・ヴァラン、マドレーヌ・グレーなどの名が挙がると思うが、とりわけメゾソプラノのクレール・クロワザ(Claire Croiza:1882.9.14, Paris-1946.5.27, Paris)の名を外すことは出来ないだろう。往年のフランス歌曲歌いの代名詞のような感もあるが、彼女の父はアイルランド人、母はイタリア人で、正式な姓は"Conelly"というらしい。両親がフランス人ではないものの、パリで生まれ、フランス国内を活動の拠点にした彼女をフランス人と呼んでもさしつかえないだろう。彼女の門下にはジャニーヌ・ミショー、カミーユ・モラーヌ、ジェラール・スゼー、古澤淑子などがいる。紺色のジャケットで統一された往年の名演奏家のSP録音を復刻したLPがかつて出ていたものだが、90年代にジャケットのレイアウトを変えずにCD復刻がされている。「クレール・クロワザ/フランス歌曲集」と題された23曲の録音は、何故かSP時代を知らない私にも不思議な懐かしさを感じさせる針音と共に特有の香りが発散されているのを感じずにはいられない(今は残念ながら入手困難のようだ)。彼女の声は細身で、黙って聞かされればソプラノ歌手かと思ってしまうが、よく聞くと低声の厚みは確かに感じられる気がする。歌の技術をうんぬんする知識はないのだが、彼女の歌は技術的な安定感よりも、語りと歌のちょうどいい融合を感じさせられる。明暗やその中間の色を声で絶妙に使い分け、美しいフランス語の発音で過剰を排した節度をもって聴き手に伝達している。「夢の後に」は真摯で突き刺すような歌に胸を打たれた。プランクの歌曲集「動物詩集」は短い曲ばかりだが、洒落ていて面白い。この録音ではプランク、ブレヴィル、ルセル、オネゲルといった近代歌曲の代表者たちの自作自演を楽しむことも出来る。

共演者

・ジョージ・リーヴズ(George Reeves:1893.8.9-1960.7.1)

・フランシス・プランク(Francis Poulenc:1899.1.7-1963.1.30)

・ピエール・ド・ブレヴィル(Pierre de Bréville:1861.2.21-1949.9.23)

・アルベール・ルセル(Albert Roussel:1869.4.5-1937.8.23)

・アルテュール・オネゲル(Arthur Honegger:1892.3.10-1955.11.27)

1)ちまたに雨の降るごとく(ドビュッシー):ジョージ・リーヴズ(P)(フランシス・プランクが弾いているという説もあり)(1928年6月録音)

2)噴水(ドビュッシー):ジョージ・リーヴズ(P)(1930年7月頃録音)

3)歌劇「ペレアスとメリザンド」~ジュヌヴィエーヴの手紙の場(ドビュッシー):ジョルジュ・トゥリュック(指揮)管弦楽(1927年3月録音)

4)悲しき歌(デュパルク):ジョージ・リーヴズ(P)(1930年7月頃録音)

5)嘆き(デュパルク):ジョージ・リーヴズ(P)(1930年7月頃録音)

6)旅への誘い(デュパルク):フランシス・プランク(P)(1928年5月頃録音)

7)乙女は語る(ブレヴィル):ピエール・ド・ブレヴィル(P)(1928年11月頃録音)

8)わたしの可愛い人形は眠ろうとしない(セヴラック):ジョージ・リーヴズ(P)(1930年7月頃録音)

9)光(ルセル):アルベール・ルセル(P)(1928年12月頃録音)

10)サラバンド(ルセル):アルベール・ルセル(P)(1928年11月頃録音)

11)アンヴォカシオン(ルセル):アルベール・ルセル(P)(1928年12月頃録音)

12)夜のジャズ(ルセル):アルベール・ルセル(P)(1930年7月頃録音)

13)さかれた恋人(ルセル):アルベール・ルセル(P)(1928年11月頃録音)

14)夕暮れ(フォレ):ジョージ・リーヴズ(P)(1930年7月頃録音)

15)夢の後に(フォレ):ジョージ・リーヴズ(P)(1930年7月頃録音)

16)~21)「動物詩集」全6曲(らくだ/チベットの山羊/いなご/いるか/ざりがに/鯉)(プランク):フランシス・プランク(P)(1928年4月録音)

22)シレーヌの歌(オネゲル):アルテュール・オネゲル(P)(1928年11月頃録音)

23)シレーヌの子守唄(オネゲル):アルテュール・オネゲル(P)(1928年11月頃録音)

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