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仮面舞踏会

これぞエスプリの極致と分かったような口をききたくなるのが、無条件に楽しいプーランク(Francis Poulenc:1899−1963)の「仮面舞踏会(Le Bal masqué)」。マックス・ジャコブ(Max Jacob:1876−1944)の詩は意味があって無いようなもの。言葉の「意味」ではなく「響き」に触発されたと想像されるプーランクの6曲からなる歌曲集は、2曲(ほかに最終曲は半分器楽曲と言える)の器楽曲を含み、ピアノとアンサンブルが歌とついたり離れたりしながら陽気にはしゃぎまわる。なかでもパーカッションの活躍ぶりは際立っている。曲は次の6曲。

(1)序曲と華やかな歌(Préambule et Air de bravoure)

(2)間奏曲(Intermède)(器楽曲)

(3)マルヴィナ(Malvina)

(4)バガテル(Bagatelle)(器楽曲)

(5)盲目の婦人(La dame aveugle)

(6)フィナーレ(Finale)

録音は

1)ヨセ・ファン・ダム(BR)アラン・プラネス(P)リヨン歌劇場管弦楽団;ケント・ナガノ(C)[1990年10月31日〜11月3日、Auditorium Maurice Ravel, Lyon録音]

2)フランソワ・ル・ルー(BR)パスカル・ロジェ(P)フランス国立管弦楽団員;シャルル・デュトワ(C)[1995年12月16〜19日、Salle Wagram, Paris録音]

がすぐに見つかったが、ベルナック&プーランク・コンビや、ホルツマイア&斎藤記念オーケストラのCDも所有している。ダムはどっしりした男性的なアプローチで巧まずしてユーモアを滲み出させるタイプの歌唱で、テンポをかなり自在に動かして意外性で楽しませてくれる。ル・ルーは1961年生まれというから録音当時34歳。若く羽毛のような優しい声で懸命に演じている。大胆に声色を変えてなかなか魅力的である。ピアノのロジェを筆頭にアンサンブル陣の巧さには舌を巻く。ベルナック&プーランクはかつて聴いた印象ではさすがに声の演技力がずばぬけていたように記憶する。プーランク自身のピアノは完璧を目指すよりは楽しんで弾いていたように感じた。ホルツマイアは言葉さばきは巧みだがユーモアや皮肉表現という点でもう少し何か欲しい感じはした。以前F=ディースカウ&サヴァリッシュの演奏(1975年、Berlin録音)がCD化されたことがあるが、図書館からLPを借りて聴いた時に、フランス人とは明らかに異なる雰囲気ながら「F=ディースカウのプーランク」として聴いた時、その言葉の扱いやユーモア、皮肉表現は余人の追随を許さないすごさがあり、感動したのを覚えている(F=ディースカウが録音したプーランクは「仮面舞踏会」だけである。「村人の歌」なども歌ってほしかったが残念)。スゼー&ボールドウィンのLP(1972年3月6〜24日、Salle Wagram, Paris録音)はまだCD化されていないのが残念だが、さすがに、歌もピアノも非の打ちどころがない。スゼーのフランス語は素人の私が聴いても本当に美しい。

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