ウィーン・リング・アンサンブル/コンサート(2006年1月13日 紀尾井ホール)
2006年最初のコンサートは1月13日(金)紀尾井ホールでのウィーン・リング・アンサンブル(Wiener Ring Ensemble)のニューイヤーコンサートでした。これも急遽行くことになったコンサートでしたが、ウィーン・フィルの選りすぐりの名手ばかり9人もそろえた超豪華なアンサンブルです。早稲田大学創立125周年記念企画と銘打たれ、普通なら500円ぐらいしそうな冊子体のパンフレットも無料で配布されました。プログラムは以下の通りです。
モーツァルト/「後宮からの逃走」序曲
J.シュトラウス2世/皇帝円舞曲Op.437
ヨーゼフ・シュトラウス/ポルカ・マズルカ「とんぼ」Op.204
J.シュトラウス2世/ニコ・ポルカOp.228;ワルツ「南国のばら」Op.388;農夫のポルカOp.276
<休憩>
レハール/ワルツ「金と銀」Op.79
ツィーラー/ワイン畑のギャロップOp.332
ランナー/ワルツ「モーツァルト党」Op.196
J.シュトラウス2世/狂乱のポルカOp.260
ミレッカー/オペレッタ「乞食学生」メドレー
J.シュトラウス2世/ポルカ・シュネル「観光列車」Op.281
<アンコール>(1)J.シュトラウス2世/「騎士パスマン」~チャルダーシュ;(2)J.シュトラウス1世/ラデツキー行進曲;(3)菅野由弘編曲/早稲田大学校歌
演奏は、ライナー・キュッヒル(VLN)、エックハルト・ザイフェルト(VLN)、ハインリヒ・コル(VLA)、ゲルハルト・イーベラー(VLC)、アロイス・ポッシュ(CB)、ヴォルフガング・シュルツ(FL)、ペーター・シュミードル(CL)、ヨーハン・ヒントラー(CL)、ギュンター・ヘーグナー(HR)の9名。
ウィーンのニューイヤーコンサートのプログラムを思わせる気楽で肩の凝らない内容でしたが、じっくり聴いてみるとワルツやポルカにもいろいろあることが今さらながら分かり、目を開かれる思いでした。例えば前半4曲目の「ニコ・ポルカ」はこれまでの明るく楽しい曲調とは違い、哀愁を帯びた独特の雰囲気が異質に感じられたのですが、パンフレットでの白石隆生氏の解説によると、J.シュトラウスは1856年から毎年のようにロシアに演奏旅行に出かけ大成功をおさめたそうで、ロシア民謡を取り入れているそうです。後半の「狂乱のポルカ」など、そのタイトルを裏切らない刺激的で不安定な音楽がシュトラウスの音楽の幅広さを感じさせないわけにはいきません。プログラム最後の「観光列車」は、ウィーンの遊覧鉄道開通式のために作曲されたとのこと、社会や自らの人生とリンクした曲の数々を知り、「美しき青きドナウ」のような優美さばかりイメージしていた自分の不明を恥じることとなりました。
演奏については、どこそこが上手いなどという批評はもはや無意味なほど安定した熟練技で、上質なエンターテイメントをたっぷりと満喫させてくれました。前半最後の「農夫のポルカ」は途中でクラリネットのヒントラーが楽器を他の人たちの方に向けて邪魔をする仕草が楽しく、途中で弦楽奏者が合唱をはじめたりと農夫の祭りのような演出も見事でした。実際、この曲の当時の演奏会で聴衆がメロディーを覚えて一緒に歌ったそうで、それに倣った演出なのかもしれません。最終曲の「観光列車」ではフルートのシュルツが車掌さんの帽子をかぶり、警笛の音をたてながら盛り上げて予定されたプログラムを終了しました。
アンコール3曲は1曲目がシュトラウスのチャルダーシュの音楽、2曲目は聴衆の手拍子とともにラデツキー行進曲、最後は主催者への配慮からか早稲田大学の校歌が奏されました。9名全員への花束贈呈もおそらく早稲田の学生でしょう。
パンフレットを見て思ったのが、ヨーハン・シュトラウスにしても、ヨーゼフ・シュトラウスやツィーラーにしても、作品番号が大きいことに気付きました。こういう音楽は当時から需要が高かったのでしょう。ウィーンの環状道路「リング」にちなんで命名されたという「ウィーン・リング・アンサンブル」の上質の演奏で、100年以上前のダンス音楽をゆったりと楽しめた一夜でした。
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