東京春祭 歌曲シリーズ vol.39:コンスタンティン・クリンメル(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)(2024年4月12日(金) ライブ配信席)

東京春祭 歌曲シリーズ vol.39
コンスタンティン・クリンメル(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)

2024年4月12日(金) 19:00開演(18:30開場)
東京文化会館 小ホール(※私はライブ配信で聞きました)

バリトン:コンスタンティン・クリンメル
ピアノ:ダニエル・ハイデ

シューベルト:《美しき水車屋の娘》D795

 第1曲 さすらい
 第2曲 どこへ?
 第3曲 止まれ!
 第4曲 小川への言葉
 第5曲 仕事を終えた宵の集いで
 第6曲 知りたがる男
 第7曲 苛立ち
 第8曲 朝の挨拶
 第9曲 水車職人の花
 第10曲 涙の雨
 第11曲 僕のもの
 第12曲 休み
 第13曲 緑色のリュートのリボンを手に
 第14曲 狩人
 第15曲 嫉妬と誇り
 第16曲 好きな色
 第17曲 邪悪な色
 第18曲 凋んだ花
 第19曲 水車職人と小川
 第20曲 小川の子守歌

※休憩なし

[アンコール]

シューベルト:月に寄せてD193
畑中良輔 (杉浦伊作:作詞):花林(まるめろ)
シューベルト:歓迎と別れD767


Tokyo-HARUSAI Lieder Series vol.39
Konstantin Krimmel(Baritone)& Daniel Heide(Piano)

2024/4/12 [Fri] 19:00 Start [ Streaming start from 18:30 ]
Tokyo Bunka Kaikan, Recital Hall

Baritone:Konstantin Krimmel
Piano:Daniel Heide

Schubert(1797-1828):"Die schöne Müllerin" D795

 I. Das Wandern
 II. Wohin?
 III. Halt!
 IV. Danksagung an den Bach
 V. Am Feierabend

 VI. Der Neugierige
 VII. Ungeduld
 VIII. Morgengruß
 IX. Des Müllers Blumen
 X. Tränenregen
 XI. Mein!
 XII. Pause
 XIII. Mit dem grünen Lautenbande
 XV. Eifersucht und Stolz
 XIV. Der Jäger
 XVI. Die liebe Farbe
 XVII. Die böse Farbe
 XVIII. Trockne Blumen
 XIX. Der Müller und der Bach
 XX. Des Baches Wiegenlied

※There is no intermission.

[Encore]

Schubert: An den Mond, D.296
Ryôsuke Hatanaka (Isaku Sugiura: Lyrics): Marumero
Schubert: Willkommen und Abschied, D.767

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「東京春祭 歌曲シリーズ」のライヴ配信に味を占めた私は、今売り出し中の若いバリトンと歌曲ピアニストのコンビ、コンスタンティン・クリンメル(バリトン)&ダニエル・ハイデ(ピアノ)の《美しき水車屋の娘》を自宅で味わいました。

コンスタンティン・クリンメルはルーマニア系ドイツ人で、まだ31歳とのこと。リートの録音もいくつかリリースしていて、今後の活躍が楽しみなバリトンです。ダニエル・ハイデはすでに多くの歌手たちと共演しているピアニストで、歌曲だけでなく、室内楽やソロも取り組んでいるオールラウンダーです。二人とも今回が初来日というのが意外ですが、これからますます活躍することと思います。

ところで、この二人のコンビ、すでに《美しき水車屋の娘》の録音をリリースしていて、事前に聞いてみたのですが、それを踏まえたうえで、今回のライヴ配信堪能しました。

まずクリンメルの爽やかで美しいハイバリトンの声と巧みなディクションに引きつけられました。特に高声から低声までよどみなくまろやかな美声を保っているので、とても聞いていて心地よいです。特に高音が本当に美しいです。そして、時にテンポを大胆に伸縮させて詩の世界を表現しようとする意欲も感じられました。

クリンメルの描いた人物像は、これから職人になる為の修行に出て、様々な経験を積み、新しい世界に飛び込んでいこうという若者らしい希望と不安のないまぜになった感覚が表現されていたと思います。彼自身の放つキャラクターや声質なども等身大の若者像を表現するのに今がベストなタイミングだと感じました。

《美しき水車屋の娘》の録音を聞いて分かっていたことですが、クリンメルは例えばクリストフ・プレガルディアンが多くの公演や録音で聞かせていたような装飾やメロディーの変奏を加えて歌っていました。それがその場の即興的なものというよりは、すでに彼の中で練られたメロディーとして披露していたように想像します。有節歌曲で最初にオリジナルのメロディーを歌い、繰り返す時に変更を加えるということが多かったように思いますが、そうでないケースもあったように思います。シューベルト存命中の習慣に倣ったこの一種の変奏は、すでに奇抜と思われていた時代は過ぎ、今後はオリジナル通りの歌唱を歌う人と、装飾を加える人が共存していくことになるのでしょう。興味深いのが、クリンメルは《美しき水車屋の娘》では程度の差こそあれ、ほぼすべての曲で装飾を加えていたのに対して、アンコールで歌われたシューベルトの歌曲2曲では私の記憶している限りオリジナルのまま歌っていました。歌いこんでいる曲は装飾を加え、そうでない作品はまずはオリジナルの通りで始め、徐々に装飾を加えていくということなのかなと想像しました。

第1曲「さすらい」の第4節(重い石臼でさえもっと速く踊ろうとすると歌われる)などかなり大胆なメロディーの変更がされて驚かされますが、こういう変更の意外性に出会うこともリートを聞く楽しみの一つになりつつあると思います。第3曲「止まれ!」の最後の"War es also gemeint(そういう意味だったのか)?"は何度も繰り返されるので、装飾が特に新鮮に響きます。

例えばプレガルディアンの共演者ミヒャエル・ゲースなどもそうでしたが、今回のダニエル・ハイデもかなりピアノパートに変更を加えていました。ピアニストのオリジナルの変更は私の記憶ではジェラルド・ムーアがすでに行っていて、F=ディースカウやプライなどとのライヴ録音を聞くと快活な曲の終わりの和音を威勢よく弾く時に音を加えて厚くしたり、オクターブ下げたりしていました。確か来日したムーアの「詩人の恋」を聞いた畑中良輔さんが、ある和音(終曲の冒頭だったか?)がオリジナルと違うと指摘していましたが、当時はオリジナル至上主義だったので今とはとらえ方も違ったのでしょう。私のおぼろげな記憶ではヘルムート・ドイチュだったかと思うのですが、第9曲「水車職人の花」を1オクターブあげて演奏したりしていました(すべての節ではなく、特定の節だけだったと思います)。今回のダニエル・ハイデも1オクターブあげるのは何か所かでやっていましたが、意外性が強かったのは第11曲「僕のもの」でした。中間部の分散和音をハイデは連打していました。これは新しい響きで印象に残っています。シューベルトっぽいかというとちょっと違う気もしますが、その時代に合った手法で変奏しても多分シューベルトは怒らないでしょう。

ハイデは基本的には歌手の方向性に合わせ、ここぞという所ではがっちりした立体的な響きも聞かせ、彩り豊かな音色で魅了してくれました。

クリンメルもハイデも最後の3曲ぐらいはあまりメロディーの変更を加えずに、思いつめた主人公の行きついた心情を一人称の歌唱で素直に聞かせてくれました。

この歌曲集、聞き手はどんどん年を重ね、主人公を回顧する立場で聞くことになりがちですが、歌手やピアニストが主人公になりきって演奏してくれると、聞き手も若かりし日々に戻ったかのように錯覚させてくれて、こういう感覚も音楽を聴く醍醐味だなとあらためて感じました。

アンコールは3曲。最初と最後にシューベルトを歌い(最後に歌われた「歓迎と別れ」は特に好きな曲なので聞けて良かった!)、2曲目で恥ずかしながら初めて聞く日本歌曲を驚くほど美しい日本語で歌ってくれました。これほど癖のない日本語で歌えるのは凄いと思います。クリンメルが2曲目を歌う前に、シュトゥットガルトで吉原輝氏に師事したというような話をして、「リョウスケ・ハタナカ」という名前が出た時、まさかクリンメルの口から畑中氏の名前が出るとは想像すらしておらずびっくりしました。ドイツリートばかり聞いていて、畑中氏の歌曲をほとんど知らない自分が恥ずかしく感じられました。クリンメルの口から「マルメロ」というタイトルを聞いた時、これがなんのことなのか分かりませんでしたが、後で調べると樹木の名前なのですね。果実はかりんに似ているそうです。分散和音のピアノにのったとても美しい歌曲でした。評論、指揮、作曲など多岐に渡る活動をされた畑中氏が亡くなったのは吉田秀和氏が亡くなった2日後、そしてF=ディースカウが亡くなった6日後のことでした。あの悲しかった5月から12年も経つのかと時の流れの速さに驚かされます。

このコンビ、すでに完成された素晴らしい音楽家たちでした。これからのますますの活躍を楽しみにしたいと思います。

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フィッシャー=ディースカウ&ムーア・ユネスコ・コンサートの映像(1974年1月9日, Paris)

ジェラルド・ムーア(Gerald Moore: 1899-1987)は、1967年2月20日イギリスのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで催された告別コンサートでステージから別れを告げたと一般には言われていますが、実はその1か月後にフィッシャー=ディースカウとアメリカ演奏旅行に同行し、シューマンなどを演奏しています。その後もBBCの音楽番組に出演してビクトリア・デ・ロサンヘレスと共演しており、さらに1976年8月にシューマン「スペインの愛の歌」のグレアム・ジョンソンの連弾パートナーとしてもシークレットゲストとしてステージに出演したそうです。60年代後半から70年代前半にはF=ディースカウ、プライ、ベイカー、モッフォら複数の歌手たちとスタジオ録音を続けた後に演奏活動にピリオドを打ったと思いきや、1974年1月9日のユネスココンサートにF=ディースカウと共に出演し、シューベルトの歌曲を演奏しています(ムーアの回想録『Farewell Recital (1978)』によるとイェフディ・メニューヒンの依頼だったので断れなかったそうです)。その録画がアップされていましたのでこちらで共有させていただきます。
特に「夕映えの中で」の前奏ではムーアの手がアップになり、そのしなやかな指さばきを見ることが出来ます。
こちらは以前4曲まとめた映像でご紹介したことがありましたが、今回の映像はモノクロながらより鮮明に映っていて、曲ごとに分かれているので見やすいと思い、再度記事にしました。

●シューベルト:漁師の娘D957/10
Dietrich Fischer Dieskau Schwanengesang D 957 (10. Das Fischermädchen)

Channel名:George გიორგი (オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出ます)

●シューベルト:夕映えの中でD799
Dietrich Fischer Dieskau Im Abendrot D.799

Channel名:George გიორგი (オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出ます)

●シューベルト:孤独な男D800、ひめごとD719
Dietrich Fischer Dieskau Der Einsame D.800(, Geheimes D.719)

Channel名:George გიორგი (オリジナルのサイトはこちらのリンク先。音が出ます)

Piano: Gerald Moore
Recorded in Paris, France January 9, 1974 UNESCO concert

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東京春祭 歌曲シリーズ vol.37:レネケ・ルイテン(ソプラノ)&トム・ヤンセン(ピアノ)(2024年4月4日(木) ライブ配信席)

東京春祭 歌曲シリーズ vol.37
レネケ・ルイテン(ソプラノ)&トム・ヤンセン(ピアノ)

2024年4月4日(木) 19:00開演(18:30開場)
東京文化会館 小ホール(※私はライブ配信で聞きました)

ソプラノ:レネケ・ルイテン
ピアノ:トム・ヤンセン

シューベルト:春に D882
シューベルト:すみれ D786

シューマン:歌曲集《詩人の恋》op.48
 第1曲 いと美しき五月に
 第2曲 僕の涙から
 第3曲 ばらよ、ゆりよ、鳩よ、太陽よ
 第4曲 君の瞳を見つめると
 第5曲 僕の魂をひたそう
 第6曲 ラインの聖なる流れに
 第7曲 僕は恨まない
 第8曲 小さな花がわかってくれるなら
 第9曲 それはフルートとヴァイオリン
 第10曲 あの歌の響きを聞くと
 第11曲 若者が娘に恋をした
 第12曲 まばゆい夏の朝に
 第13曲 僕は夢の中で泣きぬれた
 第14曲 夜ごと君の夢を
 第15曲 昔話の中から
 第16曲 古い忌わしい歌

~休憩~

R.シュトラウス:歌曲集《おとめの花》op.22
 第1曲 矢車菊
 第2曲 ポピー
 第3曲 木づた
 第4曲 睡蓮

R.シュトラウス:歌曲集《4つの最後の歌》
 第1曲 春
 第2曲 九月
 第3曲 眠りにつくとき
 第4曲 夕映えの中で

[アンコール]

R.シュトラウス:明日! op.27/4
R.シュトラウス:献呈 op.10/1
R.シュトラウス:夜 op.10/3


Tokyo-HARUSAI Lieder Series vol.37
Lenneke Ruiten(Soprano)& Thom Janssen(Piano)

2024/4/4 [Thu] 19:00 Start [ Streaming start from 18:30 ]
Tokyo Bunka Kaikan, Recital Hall

Soprano:Lenneke Ruiten
Piano:Thom Janssen

Schubert: Im Frühling, D882
Schubert: Viola, D786

Schumann: Dichterliebe, Op.48

-Pause-

R.Strauss: Mädchenblumen, Op.22

R.Strauss: Vier letzte Lieder

[Zugaben]
R.Strauss: Morgen!, Op. 27/4
R.Strauss: Zueignung, Op. 10/1
R.Strauss: Die Nacht, Op. 10/3

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「東京春祭 歌曲シリーズ」は随分長いこと継続的に続いていて、歌曲ファンにとっては注目の公演なのですが、個人的に最近コンサートに出かけるのをずっと怠っていて、ここ数年もネットでチェックはするものの実際には足を運ばず仕舞でした。今回私は東京文化会館での実際の公演を同時刻にライブ配信するネット席(アーカイブ配信はなし)で聞きました。つまり家にいながらにして鑑賞できるわけです。ステージ中央の固定映像ですが、好きな場所をアップにすることが出来、さらに日本語字幕もついて料金も1200円というリーズナブルさ、しかも音質もなかなかいいと至れり尽くせりです(回し者ではございません)。

オランダのソプラノ、レネケ・ルイテン(Lenneke Ruiten)はアーメリングの弟子としてずっと昔から知ってはいたものの、コンサートで聞く機会はありませんでした。ちなみにオランダ語の"ui"という2重母音の発音は日本語にも他の欧米の言葉にもない音らしく、彼女の姓Ruitenをアーメリングは「ラウテン」に近い音で発音していました。"ui"はアウ、アイのどちらかに聞こえることが多いようですが、最初のアはドイツ語の"ö"を発音する時の要領で「ア」に近く発音するといいのかなぁと勝手に理解しています。

今回のレネケ・ラウテン(公式サイトの表記はルイテンですが、ここからはラウテンと書かせていただきますね)のコンサートは、シューベルトの春にちなんだ2曲、特に2曲目の「すみれ」は10分以上かかる作品ですが、詩の内容がかわいそうで読むたびにしんみりしてしまいます。シューベルトもすみれに共感を寄せたとても美しい音楽を付けています。その後にシューマンの歌曲集《詩人の恋》全曲というなかなかヘビーな内容で、前半だけで1時間近くかかっていました。後半はR,シュトラウスの2つの歌曲集《おとめの花》op.22、《4つの最後の歌》ですっきりまとめています。それにしても女声歌手のリーダーアーベントでのR.シュトラウス率の高さは昔から変わりません。やはり歌手にとってR.シュトラウスの伸びやかなフレーズは歌っていて気持ちいいのかもしれません。

ピアニストのトム・ヤンセンと先日亡くなったルドルフ・ヤンセンはどちらも日本語だと「ヤンセン」ですが、ルドルフ・ヤンセンはJansen、トム・ヤンセンはJanssenなので血縁関係はなさそうですね。アーメリングの公式チャンネルの編集者でもあり、あの貴重な動画はトム・ヤンセンのおかげで見ることが出来るのだと思うと、彼への感謝の念が沸き起こります。

ラウテンとヤンセンのコンビはおそらく数十年前、アーメリングがフランスの村でマスタークラスを開いた際のDVD映像に映っていて、まだ若々しい感じでした。ジャケット写真で近影を見ると結構大人になった印象ですが、今回のコンサートでは髪をまとめ、より若々しく感じられました。

シューベルトの「春に」からラウテンのリリックで芯のある声が美しく響き、会場で聞いたらさらに良かっただろうなと思わされます。ディクションも良く、強弱のめりはりもあり、シューベルトのメロディーに生き生きと寄り添った歌唱でした。

「すみれ」も10分以上があっという間に感じられる歌唱で、彼女がオペラにも積極的に出演していることが関係しているのか、物語の展開をドラマティックに迫真の表現で聞かせてくれました。"Schneeglöcklein(まつゆきそう)"と呼びかけるメロディーが優しく慈愛に満ちていて、曲中何度もあらわれるのですが、出てくるたびにシューベルトの天才を感じていました。まつゆきそうが春の到来を告げ、目を覚ましたすみれがいそいそと花嫁の準備をしたところ、まだ他に誰も目覚めておらず、早すぎたことを知ったすみれは羞恥のあまり、物陰で泣きじゃくります。その後、とうとう春がやってきて他の花々も目覚めて宴会をしようとしたところ、最愛のすみれがいないことに気づきみんなで探しに出かけたところ、憔悴してしおれているすみれを発見したという何とも切ない内容です。その後に例の「まつゆきそう」の音楽が再びあらわれ、すみれに安らかに眠るように語りかけます。誰のせいでもなくタイミングが悪かっただけなのかもしれませんが、すみれの繊細で傷つきやすい心にシューベルトが付けた音楽が共感に満ちていて、それをラウテンとヤンセンが美しく演奏してくれました。

その後で、シューマンの《詩人の恋》全曲ですが、第1曲が「いと美しき五月に」で、ラウテンはシューベルトから季節をつなげてプログラミングしたことが分かります。
はるか昔にロッテ・レーマンがこの歌曲集を歌と朗読の2バージョンで録音して以来、久しく女声歌手はこの作品に手を出しませんでした。カナダのロイズ・マーシャルがその後歌い、さらにブリギッテ・ファスベンダーやバーバラ・ボニーが歌いだしてから、女声による《詩人の恋》もこの作品の可能性の一つとして認知されるようになってきたと思います。今回ラウテンが歌った《詩人の恋》も、聞きなれた男声の響きが女声に変わっただけで、演奏の価値はいささかも変わらないと思います。実際、配信で聞いた限りでは特に違和感なく、恋の芽吹きから失恋、思い出を沈める最後まで、恋愛の過程を素晴らしく描き出していました。

前半だけで7:55ぐらいになってしまい、その後20分間の休憩をはさみ、後半のR.シュトラウスのプログラムとなりました。ラウテンとヤンセンは最近シュトラウスのCDをリリースし、今回選曲された作品はみな含まれている為、事前に聞いていました。
最初は《おとめの花》op.22全4曲です。CDで聞いた時はちょっと声が重かったように感じたのですが、コンサートで若返った?と思うほど、きれいに響きが伝わってきます。最初の「矢車菊」「ポピー」と異なる趣の曲を鮮やかに歌ったルイテンですが、ここで家でリラックスして聞いていた私はあろうことか寝落ちしてしまいました。普段もこの時間は寝落ちしてしまうことが多く、この日は気を付けていたのですが、次に気づいた時はアンコールの「明日!」が流れていました。つまり、今回のおそらくメインだった《4つの最後の歌》の時は夢の中でした。演奏者お二人に申し訳ない気持ちでいっぱいですが、寝てしまったものは取り返せないので、気持ちを切り替えて残りのアンコールを楽しみました。

レネケ・ラウテンはおそらく今が声・表現ともに全盛期といっていいのではないかと感じました。どこをとっても素晴らしく彫琢された歌唱で、歌曲歌手の多い現代にあってもっと評価されてしかるべき歌手だったと思います。会場で聞いていないので、確かなことは言えないのですが、おそらく声量も豊かだったのではないかと想像します。

トム・ヤンセンのピアノはラウテンの歌をのせる流れを作る演奏だったと思います。細かい目配りや主張よりは曲全体の流れをとめずに先に進めていくといった方向を目指していたように感じました。

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歌曲録音の宝の山-Hyperion Recordsのサブスク解禁

昨年あたりから少しずつHyperion Recordsのサブスクリプションが解禁されてきましたが、とうとうHyperionの一連の歌曲シリーズが日本でも(おそらく)全面解禁されたようです(私はApple Musicを利用しているので、他のサブスクは分からないですが、おそらく同時解禁ではないかと想像します)。
グレアム・ジョンソンによるシューベルト、シューマン、ブラームス、フォレ、プランク歌曲全集、ジュリアス・ドレイクによるリスト歌曲全集、ロジャー・ヴィニョールズによるR.シュトラウス歌曲全集やいくつかのヴォルフ歌曲集、その他1枚ものの名盤など、歌曲録音の充実ぶりは目を見張るほどです。
幸いなことにHyperion RecordsのWebサイトからCDに付属しているブックレットがそのままダウンロードできるようになっています。
興味深いのは、G.ジョンソンがシューベルト歌曲全集を完成して間もなく、シューベルトの友人や同時代人の歌曲をまとめた3枚組のCDが、シューベルト全集のBOXにおまけで付いていたのですが、それもサブスク解禁されていることです。
シューベルトの歌曲「期待(Die Erwartung)」はツムシュテークの同テキストの歌曲の影響を受けていると文献では読んでいたものの、とうとうこのCDで実際に音として聞けるわけです。
アーメリング・ファンの立場としては、ジョンソンとのシューベルト全集第7巻、ヤンセンとのブラームス歌曲集、ヴォルフ歌曲集を聞くことが出来ます。特にシューベルトとブラームスはアーメリングの円熟の境地にいたった最高の名唱を満喫できるので強くお勧めします。
イギリスは歌曲ピアニストが主導して全集を作るという伝統があるようで、このレーベルでそれが脈々と受け継がれているのを感じます。珍しい歌曲もサブスクを検索すると見つかるかもしれません。便利な世の中になりました。もちろんCDというパッケージ商品も並行して販売しているようですので、サブスクや配信はあまり聞かないという方はCDで聴くのもいいかと思います。

グレアム・ジョンソンのApple Musicで聴けるアルバム(シューベルト、シューマン、ブラームス、フォレ、プランク歌曲全集、シューベルトの友人・同時代人の歌曲集を含む)

ジュリアス・ドレイクのApple Musicで聴けるアルバム(リスト歌曲全集を含む)

ロジャー・ヴィニョールズのApple Musicで聴けるアルバム(R.シュトラウス歌曲全集やいくつかのヴォルフ歌曲集を含む)

グレアム・ジョンソン:シューベルト歌曲全集より
シューベルト:イーダより
Schubert: Von Ida, D228
Elly Ameling(S), Graham Johnson(P)

グレアム・ジョンソン:シューマン歌曲全集より
シューマン:釣り人
Schumann: Der Fischer, RSW Anh. M2.6
Mark Padmore(T), Christopher Maltman(BR), Graham Johnson(P)

グレアム・ジョンソン:ブラームス歌曲全集より
ブラームス:春の歌
Brahms: 6 Lieder, Op. 85: No. 5, Frühlingslied
Harriet Burns(S), Graham Johnson(P)

グレアム・ジョンソン:プランク歌曲全集より
プランク:歌曲集『こんな日こんな夜』~私達は夜を創った
Poulenc: Tel jour, telle nuit, FP 86: No. 9, Nous avons fait la nuit
Sarah Fox(S), Graham Johnson(P)

ジュリアス・ドレイクによるリスト歌曲全集より
リスト:シラーのヴィルヘルム・テルからの歌曲:アルプスの狩人
Liszt: Lieder aus Schillers Wilhelm Tell, S. 292b: III. Der Alpenjäger
Julia Kleiter(S), Julius Drake(P)

ロジャー・ヴィニョールズによるR.シュトラウス歌曲全集より
R.シュトラウス:歌曲集『商人の鑑』~おお吸血鬼の一団よ、おお商人業界よ
R. Strauss: Krämerspiegel, Op. 66: No. 12, O Schröpferschwarm, o Händlerkreis
Elizabeth Watts(S), Roger Vignoles(P)

エリー・アーメリング&ルドルフ・ヤンセンのブラームス歌曲集より
ブラームス:夢にさまよう者
Brahms: Nachtwandler, Op. 86/3
Elly Ameling(S), Rudolf Jansen(P)

アーリーン・オジェー&アーウィン・ゲイジのヴォルフ:ゲーテ&メーリケ歌曲集より
ヴォルフ:つれない娘
Wolf: Goethe-Lieder: No. 26, Die Spröde
Arleen Augér(S), Irwin Gage(P)

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ルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)の動画・録音

オランダの名ピアニスト、ルドルフ・ヤンセンを偲んで、彼の演奏をいくつかまとめておきます。特に最初の動画は2012年にロベルト・ホルと共演したライヴ映像でシューベルト8曲とシューマン6曲をたっぷり聞くことが出来ます。一番最後のクリスタ・プファイラーはヤンセンの奥様です。

●ロベルト・ホル(BSBR)&ルドルフ・ヤンセン(P):シューベルト&シューマン・コンサート・ライヴ映像(2012年8月3日, Museum Het Prinsenhof in Delft)
Robert Holl(BSBR), Rudolf Jansen(P)
Openingsconcert Delfts Chamber Music Festival 2012 (deel 1)
Schubert Liederen
Schumann Liederen

17:24- Eintritt(入場)
18:14- Schubert: Der Wanderer an den Mond, D 870(さすらい人が月に寄せて)
21:11- Schubert: Das Heimweh, D 851(郷愁)
29:34- Schubert: Der Kreuzzug, D 932(十字軍)
33:22- Schubert: Der Wanderer, D 493(さすらい人)
39:01- Schubert: Am Strome, D 539(川辺で)
41:50- Schubert: Auf der Donau, D 553(ドナウ川の上で)
45:47- Schubert: Gondelfahrer, D 808(ゴンドラ漕ぎ)
48:46- Schubert: Nachthymne, D 687(夜の讃歌)

57:45- Eintritt(入場)
59:21- Schumann: Mein Wagen rollet langsam(私の馬車はゆっくりと進む)
1:02:43- Schumann: Freisinn, Op. 25/2(自由な心)
1:04:18- Schumann: Lied eines Schmiedes, Op. 90/1(鍛冶屋の歌)
1:06:05- Schumann: Die beiden Grenadiere, Op. 49/1(二人の擲弾兵)
1:10:37- Schumann: Wanderlied, Op. 35/3(旅の歌)
1:14:22- Schumann: Nachtlied, Op. 96/1(夜の歌)

●Elly Ameling(S), Rudolf Jansen(P)
Elly Ameling 1987 Gretchen am Spinnrade

●Robert Holl(BSBR), Rudolf Jansen(P)
Schubert - Der Wanderer an den Mond (Robert Holl and Rudolf Jansen)

●Robert Holl(BSBR), Rudolf Jansen(P)
Robert Holl sings Schubert Beim Winde (live 1995)

●Marc Pantus(BSBR), Rudolf Jansen(P)
Franz Schubert "Im Dorfe" - Marc Pantus / Rudolf Jansen - november 2015

●Hansung Yoo(BR), Rudolf Jansen(P)
Hansung Yoo & Rudolf Jansen - R. Schumann/ From: Dichterliebe: Im wunderschönen Monat Mai

●Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Netherlands Chamber Choir, Rudolf Jansen(P)
[Liszt:] Es War Einmal Ein König, S.73

●Andreas Schmidt(BR), Rudolf Jansen(P)
Die schöne Müllerin, Op. 25, D. 795: Mein!

●Yuko Kamahora(S), Rudolf Jansen(P)
[Wolf:] Ich hab' in Penna einen Liebsten wohnen

●Christa Pfeiler(MS), Rudolf Jansen(P)
Erich Wolfgang Korngold: Unvergänglichkeit (Christa Pfeiler, mezzo-soprano & Rudolf Jansen, piano)

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【エリー・アーメリング】シューマン「リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)」の第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」の分析

●Musings on Music by Elly Ameling - Schumann, In der Fremde (Liederkreis op. 39 no. 1)

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出ますので注意!)

ブラームスの「知らせ(Botschaft,op. 47 no. 1)」に続いて、エリー・アーメリングによる歌曲分析講座第2弾がアップされました。
アイヒェンドルフのテキストによるシューマンの歌曲集『リーダークライス(Liederkreis, Op. 39)』から第1曲「異郷にて(In der Fremde, Op. 39, No. 1)」です。

「この曲は、ゆっくりで、典型的にロマンティックな感情に満ちています」

「歌曲集『リーダークライス』のテキストの多くはアイヒェンドルフの小説『予感と現在(Ahnung und Gegenwart)』」から採られています」

※ちなみに第1曲「異郷にて」は小説『空騒ぎ(Viel Lärmen um nichts)』(1833年)から採られているそうです。

「この曲のテンポは「速くなく(Nicht schnell)」です」

アーメリングは数行ずつ原詩と英訳を交互に朗読します。

そして別の演奏家による速いテンポの音源が流れます。
「私の意見では、このテンポでは正しい雰囲気が損なわれていると思います」

「冒頭はpで始まり、両親はすでにいないと歌われる5小節目(第3行)はppと指示されています。そして冒頭からピアノ右手最高音に付いているアクセントが5小節目以降は付いていません」

「11,12小節のピアノ右手:5度上行する箇所でクレッシェンド→デクレッシェンドが付いていて、これは「もうすぐ(wie bald = how soon)」を表現しています」

「1回目の"Da ruhe ich auch(その時に私も休むことにしよう)"では"auch(〜も)"に最高音が当てられているが突出しないように歌われるべきです(ソプラノは最高音でボリュームを上げがちなので、ここはpppで歌うぐらいでいい)。
歌う前に考えてみましょう(Think, before you sing!)」

第2連2~3行目"und über mir rauscht die schöne Waldeinsamkeit,(そして頭上では美しい森の孤独がざわめいている)"を1ブレスで歌うことについて

「2回目の録音ではschöne(美しい)とWaldeinsamkeit(森の孤独)の間にブレスを入れてしまったのが残念(後で種明かしされますが、これはアーメリング&ヤンセンのライヴ録音です)。どうしてブレスを入れてしまったのかというと、このフレーズはどんな人にとっても非常に長いのです。ただしフィッシャー=ディースカウを除いて。彼なら何でも出来るでしょう」

1:02-3:31
1回目の録音。イェルク・デームスとのスタジオ録音(1979年4月15-21日, La Chaux-de-Fonds録音)→アーメリングは動画後半で1973年録音と言っているがおそらく誤り。「女の愛と生涯」のスタジオ録音(ボールドウィンのピアノ)が1973年なのでそれと混同した可能性あり

11:38-(抜粋) Wie bald ...
13:06-(抜粋) und über mir rauscht die schöne Waldeinsamkeit,
2回目の録音。ルドルフ・ヤンセンとのライヴ録音(1980年5月2日録音と思われます。全曲はこちらで聞けます)→アーメリングは1979年と言っているがおそらく誤り

15:00-
冒頭に流されたイェルク・デームスとのスタジオ録音(1979年録音)を再度全部流します。

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In der Fremde, Op. 39, No. 1
 異郷にて

Aus der Heimat hinter den Blitzen rot
Da kommen die Wolken her,
Aber Vater und Mutter sind lange tot,
Es kennt mich dort keiner mehr.
 赤い稲光の向こうにある故郷から
 雲がこちらに流れてくる、
 だが父母はずっと前に亡く
 あそこで私を知る者はもういない。

Wie bald, wie bald kommt die stille Zeit,
Da ruhe ich auch, und über mir
[Rauscht]1 die schöne Waldeinsamkeit,
Und keiner [kennt mich mehr]2 hier.
 もうすぐ、もうすぐ静かな時がやってくる、
 その時に私も休むことにしよう、そして頭上では
 美しい森の孤独がざわめいている、
 そしてここでも私を知る者はもういない。

1 Eichendorff: "Rauschet"
2 Eichendorff: "mehr kennt mich auch"

詩:Joseph Karl Benedikt, Freiherr von Eichendorff (1788-1857), "In der Fremde", appears in Gedichte, in 5. Totenopfer, first appeared in the novella "Viel Lärmen um nichts" (1833)
曲:Robert Schumann (1810-1856), "In der Fremde", op. 39 no. 1 (1840), published 1842 [voice and piano], from Liederkreis von Joseph Freiherr von Eichendorff, no. 1, Wien, Haslinger

このシリーズの次回は同じく『リーダークライス』Op. 39から第8曲(曲目も第1曲と全く同じ"In der Fremde")とのことです。楽しみですね。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ (Wikipedia)

Joseph von Eichendorff (Wikipedia)(独語)

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【備忘録】1993年6月のオーストリア・コンサート

部屋を整理していたら、私の唯一のオーストリア旅行時に聞いたコンサートのパンフレットが出てきたので、備忘録として内容を記載しておきます。
最初の2つはヴィーン・コンツェルトハウスで当日券で聞いたもの、後半の3つはフェルトキルヒのシューベルティアーデ・コンサートを事前に予約したチケットで聞いたものです。
ちなみにヴィーン・コンツェルトハウスもシューベルティアーデも過去公演のアーカイヴをWebサイトで閲覧可能です。後者はコンサートに直接飛ぶリンクを貼っておきました。
前者はコンサートの検索結果画面を開いてもURLが変わらないので、こちらのリンク先から適宜検索ワードを入力すると閲覧できます(例えば演奏家の名前など)。

・1993/6/9 マリヤーナ・リポヴシェク&チャールズ・スペンサー歌曲の夕べ(ヴィーン・コンツェルトハウス、モーツァルトザール)

・1993/6/13 アンドラーシュ・シフ・ピアノリサイタル(ヴィーン・コンツェルトハウス、大ホール)

・1993/6/20 アンドレアス・シュミット&ルドルフ・ヤンセン「冬の旅」(フェルトキルヒ、音楽院ホール)

・1993/6/21 ペーター・シュライアー&アンドラーシュ・シフ「シューベルト:ゲーテ&リュッケルト歌曲集」(フェルトキルヒ、モントフォルトハウス)

・1993/6/22 バンゼ、ツィーザク、ファスベンダー、プレガルディアン、マルクス・シェーファー、ベーア、トレーケル、ヤンセン、リーガー、スヴェーテ「シューベルト:重唱曲コンサート」(フェルトキルヒ、モントフォルトハウス)※本来出演予定だったマティアス・ゲルネがウイルスに感染した為、トレーケルが代役として出演しました。当日配布されたプログラムにはすでにトレーケルの写真・プロフィールが掲載されていた為、かなり早めに変更が決まっていたものと思われます。


●Mittwoch, 9. Juni 1993, 19.30 Uhr, Mozart-Saal, Wiener Konzerthaus

Marjana Lipovšek, Mezzosopran
Charles Spencer, Klavier

Arnold Schönberg (1874-1951)
Vier Lieder op. 2 (1899)
 Erwartung
 Schenk mir deinen goldenen Kamm
 Erhebung
 Waldsonne

Lucijan Marija Skerjanc (1900-1973)
Beli oblaki - Weiße Wolken (1919)
Pred ogledalom - Vor dem Spiegel (1919)
Večerna impresija - Abendstimmung (1919)
Vizija - Vision (1918)

Anton Lajovic (1878-1960)
Kaj bi le gledal! - Soll er nur schauen!
Mesec v izbi - Der Mond in der Kammer
Romanca - Romanze

*** Pause ***

Hector Berlioz (1803-1869)
Vier Lieder aus «Les Nuits d'été» op. 7 (1834)
 Villanelle op. 7/1
 Le Spectre de la Rose op. 7/2
 Sur les Lagunes op. 7/3
 L'île inconnue op. 7/6

Johannes Brahms (1833-1897)
Acht «Zigeunerlieder» op. 103 (1889)
 He, Zigeuner, greife in die Saiten ein!
 Hochgetürmte Rimaflut
 Wisst ihr, wann mein Kindchen am allerschönsten ist?
 Lieber Gott, du weißt, wie oft bereut ich hab
 Brauner Bursche führt zum Tanze
 Röslein dreie in der Reihe blühn so rot
 Kommt dir manchmal in den Sinn
 Rote Abendwolken ziehn am Firmament

●Sonntag, 13. Juni 1993, 19.30 Uhr, Grosser Saal, Wiener Konzerthaus

András Schiff, Klavier

Ludwig van Beethoven (1770-1827)
Sonate D-Dur op. 28 »Pastorale« (1801)
 Allegro
 Andante
 Scherzo. Allegro assai
 Rondo. Allegro ma non troppo

Leoš Janáček (1854-1928)
»Auf verwachsenen Pfaden« Band 1 (1901/08)
 Nr. 1 Unsere Abende
 Nr. 2 Ein verwehtes Blatt
 Nr. 3 Kommt mit!
 Nr. 4 Die Friedeker Muttergottes
 Nr. 5 Sie schwatzten wie die Schwalben
 Nr. 6 Es stockt das Wort!
 Nr. 7 Gute Nacht!
 Nr. 8 So namenlos bange
 Nr. 9 In Tränen
 Nr. 10 Das Käuzchen ist nicht fortgeflogen

*** Pause ***

Leoš Janáček (1854-1928)
Sonate 1. X. 1905 (1905)
 Vorahnung
 Tod

Robert Schumann (1810-1856)
Davidsbündlertänze op. 6 (1837)
 Lebhaft
 Innig
 Mit Humor
 Ungeduldig
 Einfach
 Sehr rasch
 Nicht schnell
 Frisch
 Lebhaft
 Balladenmäßig
 Einfach
 Mit Humor
 Wild lustig
 Zart und singend
 Frisch
 Mit gutem Humor
 Wie aus der Ferne
 Nicht schnell

Sonntag, 20. Juni 1993, 20 Uhr, Konservatoriumssaal, Feldkirch

Liederabend

Andreas Schmidt, Bariton
Rudolf Jansen, Klavier

Franz Schubert (1797–1828)

"Winterreise"

Liederzyklus nach Gedichten von Wilhelm Müller
D 911, op. 89 (1827)

Gute Nacht
Die Wetterfahne
Gefrorne Tränen
Erstarrung
Der Lindenbaum
Wasserflut
Auf dem Flusse
Rückblick
Irrlicht
Rast
Frühlingstraum
Einsamkeit
Die Post
Der greise Kopf
Die Krähe
Letzte Hoffnung
Im Dorfe
Der stürmische Morgen
Täuschung
Der Wegweiser
Das Wirtshaus
Mut
Die Nebensonnen
Der Leiermann


Montag, 21. Juni 1993, 20 Uhr, Montforthaus, Feldkirch

Liederabend

Peter Schreier, Tenor
András Schiff, Klavier

Franz Schubert (1797–1828)

Lieder nach Gedichten von Johann Wolfgang von Goethe
Rastlose Liebe, D 138
Nähe des Geliebten, D 162
Der Fischer, D 225
Erster Verlust, D 226
Gesänge des Harfners, D 478
 "Wer sich der Einsamkeit ergibt"
 "Wer nie sein Brot mit Tränen aß"
 "An die Türen will ich schleichen"
Wandrers Nachtlied II, D 768 "Über allen Gipfeln ist Ruh"

– Pause –

Lieder nach Gedichten von Friedrich Rückert
Sei mir gegrüßt, D 741
Daß sie hier gewesen, D 775
Lachen und Weinen, D 777
Du bist die Ruh, D 776

Lieder nach Gedichten von Johann Wolfgang von Goethe
Auf dem See, D 543
Ganymed, D 544
Schäfers Klagelied, D 121
Meeres Stille, D 216
Jägers Abendlied, D 368
Geheimes, D 719
Der Musensohn, D 764


Dienstag, 22. Juni 1993, 20 Uhr, Montforthaus, Feldkirch

Liederabend

Juliane Banse, Sopran
Ruth Ziesak, Sopran
Brigitte Fassbaender, Alt
Christoph Prégardien, Tenor
Markus Schäfer, Tenor
Olaf Bär, Bariton
Roman Trekel, Bariton *
Rudolf Jansen, Klavier
Wolfram Rieger, Klavier
Alexander Swete, Gitarre

* Herr Matthi[a]s Görne ist leider an einer Virusinfektion erkrankt. Freundlicherweise konnte dessen Aufgabe beim heutigen Liederabend kurzfristig Herr Roman Trekel übernehmen.

Franz Schubert (1797–1828)

Die Geselligkeit (Unger), D 609 (Alle Sänger, Rieger)
Die Advokaten (Engelhart), D 37 (Prégardien, Schäfer, Bär, Jansen)
Klage um Ali Bey (Claudius), D 140 (Banse, Ziesak, Fassbaender, Rieger)
Zur Namensfeier meines Vaters (Schubert), D 80 (Prégardien, Schäfer, Trekel, Swete)
Das Abendrot (Kosegarten), D 236 (Banse, Ziesak, Trekel, Jansen)
Gesang der Geister über den Wassern (Goethe), D 538 (Prégardien, Schäfer, Bär, Trekel)
Mignon und der Harfner (Goethe), D 877/1 (Fassbaender, Bär, Jansen)
Erlkönig (Goethe), D 328 (Prégardien (Erzähler), Bär (Vater), Banse (Kind), Schäfer (Erlkönig), Jansen)
Szene im Dom aus »Faust« (Goethe), D 126b (Ziesak (Gretchen), Trekel (Böser Geist), Banse, Fassbaender, Prégardien, Schäfer, Bär (Chor), Rieger)

– Pause –

Der Tanz (Schnitzer), D 826 (Alle Sänger, Rieger)
Licht und Liebe (M. v. Collin), D 352 (Ziesak, Prégardien, Jansen)
Das Leben (Wannovius), D 269 (Banse, Ziesak, Fassbaender, Prégardien, Bär, Trekel, Rieger)
Des Tages Weihe (Dichter unbekannt), D 763 (Banse, Fassbaender, Schäfer, Trekel, Jansen)
Das Dörfchen (Bürger), D 598 (Prégardien, Schäfer, Bär, Trekel, Swete)
Der Hochzeitsbraten (Schober), D 930 (Ziesak, Schäfer, Bär, Jansen)
Ständchen (Grillparzer), D 920a (Fassbaender, Prégardien, Schäfer, Bär, Trekel, Rieger)
Kantate für Irene Kiesewetter (Dichter unbekannt), D 936 (Alle Sänger, Jansen, Rieger)

Konzerthaus

Feldkirch

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エリー・アーメリング&ルドルフ・ヤンセン/シューマン:歌曲集『女の愛と生涯』Op. 42

Elly Ameling - Rudolf Jansen; Frauenliebe und -leben op. 42 - Schumann

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちら。リンク先は音が出るので注意!)

Elly Ameling
Rudolf Jansen - Piano
Avro Radio Feb. 3, 1983

00:00 Seit ich ihn gesehen
03:04 Er, der Herrlichste von allen
06:38 Ich kann’s nicht fassen, nicht glauben
08:52 Du Ring an meinem Finger
11:54 Helft mir, ihr Schwestern
13:58 Süßer Freund, du blickest
19:35 An meinem Herzen, an meiner Brust
21:04 Nun hast du mir den ersten Schmerz getan

エリー・アーメリングのYouTube公式チャンネルに、シューマン作曲、歌曲集『女の愛と生涯(Frauenliebe und -leben, Op. 42)』全曲がアップされました。音源は5枚組放送録音集"80 jaar"のCD2枚目に収録されたものと同日のもので、CDには録音場所も記載されています(AVRO 03-02-1983, Muziekcentrum Vredenburg, Utrecht)。

上述の組物CDは廃盤になっている可能性があるので、ここで楽譜を見ながら優れた演奏を聴けるのは有難いことだと思います。
この歌曲集はシャミッソーという男性詩人の目線から理想とした女性像を描いたものと思われ、現代の視点からは古さを感じざるを得ませんが、シューマンは一途にパートナーを愛し抜いたこの詩の女性の人生にクラーラを見ていたことは間違いないでしょう。
歌曲を歌う女性歌手のほとんどがこの歌曲集をレパートリーに持つと言っても過言ではないぐらい多くの録音が残され、アーメリングもこのライヴ録音以前に、ボールドウィンとすでにスタジオ録音を残していますが、このヤンセンとのライヴは50歳をもうすぐ迎えようとする時期の成熟した女性の歌唱として貴重な記録です。

演奏と一緒に楽譜も映してくれるので、シューマンがどのようにこの曲を作っていったのか視覚からも確認することが出来ます。また傑出したアーティスト2人がシューマンの楽譜をどのように読み解釈しているのかという観点からも楽しめると思います。

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エリーザベト・シュヴァルツコプフ&ヘルマン・ロイター/ヴォルフ:ミニョン「あの国を御存知ですか」映像(+インタビュー)

●Elisabeth Schwarzkopf: Meine Lieblingsrolle | Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn ... ?

Channel名:Johann Auens Weltanschauung(オリジナルのリンク先はこちら。音が出ますので注意!)
Bayerischer Rundfunk, 1959
im Gespräch mit Walter Panofsky

シュヴァルツコプフがバイエルンの放送局で収録したインタビューと演奏の映像がありました。ピアニストは作曲家でもあるヘルマン・ロイターです。このコンビはライヴ録音はあったものの映像で共演を見ることがこれまでなかったので興味深かったです。往年のバリトン、中山悌一氏は、かつて実演で聞いたディースカウのリサイタルで共演した時のロイターを褒めていました。この映像では自分で譜めくりもしている為、いくつかの音を飛ばしているのは残念ですが、演奏はさすがでした。シュヴァルツコプフの歌うヴォルフはやはり聴きごたえありますね。前半のインタビューでは、彼女のお気に入りのオペラの役柄としてマルシャリンとフィオルディリージを挙げていました。

11:25-
Elisabeth Schwarzkopf, soprano
Hermann Reutther, piano

Hugo Wolf: Mignon "Kennst du das Land"

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シューベルト/「ウルフルが釣りをするさま」(Schubert: Wie Ulfru fischt, D 525)を聞く

Wie Ulfru fischt, D 525
 ウルフルが釣りをするさま

[Der]1 Angel zuckt, die Ruthe bebt,
Doch leicht fährt sie heraus.
Ihr eigensinn'gen Nixen gebt
Dem Fischer keinen Schmaus!
Was frommet ihm sein kluger Sinn,
Die [Fische]2 baumeln spottend hin -
Er steht am Ufer fest gebannt,
Kann nicht in's Wasser, ihn hält das Land.
 [Er steht am Ufer fest gebannt,
 Kann nicht in's Wasser, ihn hält das Land.]
 釣り針がぴくっと動き、釣り竿が震えるが、
 容易に逃げられてしまう。
 おまえたち頑固な水の精は
 釣り人にご馳走をくれてやろうとはしない!
 釣り人の賢さなど何の役に立つものか、
 魚たちはばたばたと音を立てて嘲る。
 彼は岸辺で呪縛されたようにじっと立ちすくみ、
 水に入れず陸にとどまるのみ。

Die glatte Fläche kräuselt sich,
Vom Schuppenvolk bewegt,
Das seine Glieder wonniglich
In sichern Fluthen regt.
Forellen zappeln hin und her,
Doch bleibt des Fischers Angel leer,
Sie fühlen, was die Freiheit ist,
Fruchtlos ist Fischers alte List.
 [Sie fühlen, was die Freiheit ist,
 Fruchtlos ist Fischers alte List.]
 滑らかな水面は波立つ、
 鱗の群れに揺らされて、
 男の身体はうきうきと
 安全な水の中へと移動する。
 ますはあちらこちらと跳ね動くが
 釣り人の竿は何もかからないまま、
 あいつらは自由というものを実感していて
 釣り人の古い悪だくみなど実ることがない。

Die Erde ist gewaltig schön,
Doch sicher ist sie nicht!
 [Die Erde ist gewaltig schön,
 Doch sicher ist sie nicht!]
Es senden Stürme Eiseshöh'n;
Der Hagel und der Frost zerbricht
Mit einem Schlage, einem Druck,
Das gold'ne Korn, der Rosen Schmuck -
Den Fischlein [unterm weichen]3 Dach,
Kein Sturm folgt ihnen vom Lande nach.
 地上は非常に美しいが
 安全ではない!
 凍った丘は嵐を送りつけ、
 ひょうや寒気は
 一撃で、一握りで
 黄金色の穀物や薔薇の飾りを壊してしまう。
 柔らかい屋根の下にいる魚たちの後を
 嵐が陸から追うことはないのだ。

1 Schubert (Peters Edition only): "Die"
2 Mayrhofer: "Fischlein"
3 Mayrhofer: "unter's weiche"

詩:Johann Baptist Mayrhofer (1787-1836), "Wie Ulfru fischt"
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Wie Ulfru fischt", op. 21 (Drei Lieder) no. 3, D 525 (1817), published 1823 [voice, piano], Sauer & Leidesdorf, VN 276, Wien

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シューベルトの友人で同居したこともあるヨーハン・マイアーホーファーの詩による1817年1月作曲の「ウルフルが釣りをするさま(Wie Ulfru fischt, D 525)」を聞きたいと思います。
シューベルトは、3連からなる詩をリピート記号で繰り返す完全な有節歌曲として作曲しました。

内容は釣りをする男ウルフルの様子が描かれ、一見有名な「ます(Die Forelle, D 550)」のテキストが思い浮かびますが、「ます」が男には気をつけなさいという女性への警告詩(警告した連をシューベルトはばっさり省略したわけですが...)であるのに対して、こちらの詩では陸は危険が多く、水中は安全というのがテーマのようです。嵐が起きようが水の中は安全だからますは釣り人の悪だくみにおびやかされることなく自由を謳歌しています。それぞれの住処にいれば安全なのだから、生活圏でないところに進出しても無駄だという意味合いもこめているのかもしれませんね。
シューベルトは歌声部をヘ音譜表で記しました。彼はこのテキストから低声歌手をイメージしたのでしょう。実際録音された音源はいずれも男声歌手のものばかりでしたが、テノール歌手も移調して歌っています。途中で長調になりますが、基本はニ短調です。ピアノパートは左手の各拍後半に八分休符を挿入して跳ねるような雰囲気を演出する一方、右手はせわしなく畳みかけるようにジグザグに動き続け、弱拍につけられたアクセントも相まってどことなくコミカルな味わいがあります。何かに常にせかされているような主人公の焦燥感を描いているかのようです(私はモーツァルトの歌曲「自由の歌(Lied der Freiheit, KV 506)」と共通する雰囲気を感じました)。

この曲には2つの稿がありますが、第1稿は私の調べた範囲では録音されていないようです(基本的にはほぼ同じです)。

【冒頭部分】
Photo_20240302163301 

【歌声部】
1_20240302163301 
2_20240302163301 
3_20240302163301 

アッラ・ブレーヴェ記号(2/2拍子)
ニ短調(d-moll)
Etwas bewegt (1st version)
Mässig (2nd version)

●テキストの朗読(Susanna Proskura)
Schubert, Wie Ulfru fischt, pronunciation

Channel名:Susanna Proskura (オリジナルのサイトはこちら。音が出るので注意!)
ソプラノ歌手プロスクラさんが詩を朗読しています。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ジェラルド・ムーア(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Gerald Moore(P)

かつて喜多尾道冬氏がディースカウのシューベルト歌曲全集での歌いぶりを「一筆書きのよう」と評しましたが、この歌唱を聞いてその言葉を思い出しました。ムーアのめりはりのついたピアノも素晴らしかったです。

●マティアス・ゲルネ(BR), エリック・シュナイダー(P)
Matthias Goerne(BR), Eric Schneider(P)

ゲルネは重量感のある声ですが、軽快に歌っています。

●ズィークフリート・ローレンツ(BR), ノーマン・シェトラー(P)
Siegfried Lorenz(BR), Norman Shetler(P)

ローレンツはハイバリトンの爽やかな美声で歌い、ディクションも美しいです。シェトラーが生き生きと演奏していて良かったです。

●クルト・モル(BS), コート・ガルベン(P)
Kurt Moll(BS), Cord Garben(P)

シューベルトが低声を想定した歌にふさわしい深みのある声でモルが歌っています。速めのテンポ設定はモルの解釈なのでしょうか。付点八分音符と十六分音符の組み合わせをどちらも八分音符で歌うなど若干リズムにこだわっていない感じですが(速すぎて小回りがきかないのかも)、魅力的な歌で個人的には好きな演奏です。ガルベンはパリパリ弾いて効果的でした。

●コルネーリウス・ハウプトマン(BS), シュテファン・ラウクス(P)
Cornelius Hauptmann(BS), Stefan Laux(P)

同じバス歌手でもモルと比べるともっとバリトンのような穏やかさが感じられる歌でした。

●ヤスパー・シュヴェッペ(BR), フクダ・リコ(Fortepiano)
Jasper Schweppe(BR), Riko Fukuda(Fortepiano)

シュヴェッペは節が進むたびに旋律に装飾を加えていたのが興味深かったです。フクダさんのフォルテピアノも味わい深いです。

●クリストフ・プレガルディアン(T), アンドレアス・シュタイアー(Fortepiano)
Christoh Prégardien(T), Andreas Staier(Fortepiano)

低声用の曲といってもそれほど極端に低い音が出てくるわけではないので、移調すればテノールでも問題ないですね。プレガルディアンは珍しく装飾を全く入れずに楽譜通りに生き生きと歌っていました。冒頭のAngel(釣り針)をマイアホーファーのオリジナルの男性名詞として歌っていました(冠詞をdieではなくderで歌っています)。他の歌手たちは女性名詞として扱ってdie Angelと歌っていることが多いようです。

●イアン・ボストリッジ(T), ジュリアス・ドレイク(P)
Ian Bostridge(T), Julius Drake(P)

やはりボストリッジのようなテノールによって歌われると清涼感が増しますね。ドレイクが基本的にスタッカート気味に弾むように演奏して、曲の面白みが増した感じがしました。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Schubertlied.de (Wie Ulfru fischt, D 525)→※サーバーの不具合なのか、たまに接続できないことがあります。

Graham JohnsonによるWie Ulfru fischt, D 525の解説 (Hyperion Records)

Johann Mayrhofer: Gedichte: 1824 (p. 42)

Wikipedia - Johann Mayrhofer (Dichter) (ドイツ語)

Wikipedia - Johann Mayrhofer (英語)

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