エリーの要点「イーアー」(マーラー:高き知性への賛美)(Elly's Essentials; “ I - A ”)

●Elly's Essentials; “ I - A ”

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音声が出ます)

●エリー・アーメリングの言葉の大意

「人類は自然の上位にあるわけではなく自然の一部です。
私たちは種として滅亡の危機にあるのではないでしょうか。
私たちは自然の頂点に立たせてくれた脳を放棄し、人工知能(AI)に置き換えようとしています。
その止め方を誰か知っていますか?」

●演奏

エリー・アーメリング(S)
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
ズデニェク・マーカル(C)
1972年、オランダ音楽祭
(※2008年1月7日にオランダのNPO Radio4で放送されたものと同一音源ならば、1972年7月8日、De Doelen, Rotterdamのライヴ録音)

Elly Ameling, soprano
Rotterdam Philharmonic
Zdeněk Mácal, conductor
Holland Festival 1972

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Gustav Mahler: Lob des hohen Verstandes
 グスタフ・マーラー:高き知性への賛美

Einstmals in einem tiefen Tal
Kukuk und Nachtigall
Täten ein Wett' anschlagen:
Zu singen um das Meisterstück,
Gewinn' es Kunst, gewinn' es Glück:
Dank soll er davon tragen.
 昔、ある深い谷で
 カッコウとサヨナキドリが
 賭けをすることになった、
 どちらが立派な歌を歌うか、
 芸を手に入れようが、運を手に入れようが
 勝者は謝礼をもらうことになる。

Der Kukuk sprach: "So dir's gefällt,
Hab' ich den Richter wählt",
Und tät gleich den Esel ernennen.
"Denn weil er hat zwei Ohren groß,
So kann er hören desto bos
Und, was recht ist, kennen!"
 カッコウは言った「君さえ良ければ
 審査員を選んでおいたよ」
 そしてすぐにロバを任命した。
 「だってロバは2つの大きな耳があるから
 その分欠点も聞こえて
 何が正しいか分かるだろう。」

Sie flogen vor den Richter bald.
Wie dem die Sache ward erzählt,
Schuf er, sie sollten singen.
Die Nachtigall sang lieblich aus!
Der Esel sprach: "Du machst mir's kraus!
Du machst mir's kraus! I-ja! I-ja!
Ich kann's in Kopf nicht bringen!"
 彼らはすぐにこの審査員の前まで飛んで行った。
 事の次第を話すと
 ロバは仕事を始め、彼らに歌うように言った。
 サヨナキドリは愛らしく歌った!
 ロバは言った「君の歌はよく分からない!
 君の歌はよく分からんよ!イーヤー!イーヤー!
 私の頭に入ってこない!」

Der Kukuk drauf fing an geschwind
Sein Sang durch Terz und Quart und Quint.
Dem Esel g'fiels, er sprach nur
"Wart! Wart! Wart! Dein Urteil will ich sprechen,
Wohl sungen hast du, Nachtigall!
Aber Kukuk, singst gut Choral!
 続いてカッコウが急いで歌い始めた、
 3度、4度、5度音程の歌を。
 ロバは気に入り、ただこう言った、
 「待て!待て!待て!判定を言い渡そう。
 君もよく歌ったよ、サヨナキドリさん!
 でもカッコウさん、君は上手にコラールを歌ったな。

Und hältst den Takt fein innen!
Das sprech' ich nach mein' hoh'n Verstand!
Und kost' es gleich ein ganzes Land,
So laß ich's dich gewinnen!"
 それから拍子もうまく守っていた!
 これは私の高き知性にかけて述べるものだ!
 この歌はまるまる一国に値する、
 それゆえ君の勝ちとする!」

詩:from Volkslieder (Folksongs) , appears in Des Knaben Wunderhorn

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP

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故コンラート・リヒター(Konrad Richter)について

日本を代表する共演ピアニストの平島誠也氏のブログ「落語ときどきピアノ」の記事で、平島氏の師のお一人だったコンラート・リヒター(Konrad Richter: 1935.12.2-2024.4.8)の逝去を知りました。
リヒターの実演に接する機会は残念ながらなく、もっぱら若い頃に聞いていたFMラジオやCDのみで接していたので、人物像などは全く知らず、歌曲演奏の他にウルマンの作品紹介に積極的だったことぐらいしか知りませんでした。平島氏のブログにそのあたりのことも含めて思い出が書かれていて、とても興味深いので、ぜひご覧ください。

リヒターといえばヘルマン・プライとのヴォルフ『アイヒェンドルフ歌曲集』ライヴによるバラード集(ヴォルフ「火の騎士」等)の録音が第一に思い浮かびますが、その他にもロベルト・ホルと複数の録音を残しています。

Musikvereinのアーカイヴで検索すると、1967年1月12日~1969年10月4日までヘルマン・プライと4回、1975年2月19日・23日にヴォルフの同一プログラムでハンス・ホッターと2回だけ(ホッターがスタジオ録音していない"Trunken müssen wir alle sein"も含まれていますが、ピアノパートがとても華やかな作品です)、1976年1月13日~1988年12月5日までロベルト・ホルとなんと17回にもわたって共演しています。ほとんどが小ホールのブラームス・ホール(Brahms-Saal)ですが、1986年5月17日の1回だけホルと大ホール(Großer Saal)で演奏しています。そういえばホルはホッターの弟子で、その関係でリヒターがホルと共演するようになったのでしょうか?ちなみにこのアーカイヴではリヒターのソロはありませんでした。

オーストリア西部で毎年催されるSchubertiadeのアーカイヴで検索すると、1978年6月20日から1989年6月19日まで(最初と最後はホルとの共演)39件もヒットしますが、興味深いことに歌曲の夕べ(Liederabend)だけでなく、13回にもわたるマスタークラス(Meisterkurs)やコンサートで演奏する曲目に関する講演会(Einführungsvortrag)なども含まれています。ここでもリヒターが共演するほとんどはロベルト・ホルですが、平島氏のブログでも触れられていますが、ハンス・ホッターと2夜にわたる『冬の旅』のコンサートに出演しています(1982年6月24日・26日)。そして、このシューベルティアーデではリヒターは2回にわたりソロ演奏を披露しています。1回目はレナード・ホカンソン、アーウィン・ゲイジと3人で分担してシューベルトのピアノ独奏曲を演奏するという、歌曲ピアニスト好きにとっては夢のようなコンサートが1981年6月17日に催されています。曲目はリンク先を見ていただくことにして、リヒターは晩年のハ短調のソナタD958を演奏しています。なんとなくですが、それぞれのピアニストの特質に合わせた選曲になっているような気がして微笑ましいです。そして2回目のソロコンサートは1984年6月1日に催され、モーツァルトの幻想曲ハ短調KV475(よく14番のソナタの前に演奏される曲)で始まり、あとはすべてシューベルトのピアノ曲です。締めは1981年にも披露していたソナタ19番ハ短調D958です。
それにしてもロベルト・ホルとの共演の多さが目につきます。ホルはリヒター以外のピアニストとも多く録音を残していますが、実演ではリヒターが共演しやすかったのかなと想像します。

東京文化会館のアーカイブでは12件ヒットしました。1980年のソロリサイタルから2006年の庄司祐美さんとの歌曲とピアノソロのコンサートまでこちらはかなりバラエティに富んだ内容でした。日本の錚々たる歌手たちだけでなく、浦川宜也さんとのブラームス:ヴァイオリンソナタ全曲というのもありました。

それにしてもクラシックを聴き始めて間もない頃からコンラート・リヒターという名前をなぜか知っていたのですが、きっかけが思い出せないのです。おそらくFMか何かで聞いたのだと思うのですが、誰との演奏だったのか、そのうちカセットテープを整理したら分かるかもしれません。

コンラート・リヒター氏の録音を聞いて偲びたいと思います。

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(参考)

落語ときどきピアノ~リヒター先生の思い出 遊俳・夏号より

Konrad Richter (Musiker) - Wikipedia

Facebook

Musikverein

Schubertiade

東京文化会館のアーカイブ

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ノーマン・シェトラー(Norman Shetler)を偲んで

ドイツ歌曲の好きな方ならば録音や実演で馴染みの方がいらっしゃると思いますが、ピアニストのノーマン・シェトラー(Norman Shetler: 1931.6.16-2024.6.25)が亡くなりました。93歳の誕生日を迎えて数日後のことで、ご家族に見守られながら安らかに旅立たれたとのことです。天寿を全うされたと言えると思いますが、やはり馴染みのある演奏家の訃報は寂しいですね。

OTS (ドイツ語)

MSN (ドイツ語)

Dreh Punkt Kultur (ドイツ語)

Mozarteum University (ドイツ語)

Facebook (ご遺族の報告)(英語)

ORF (三角の再生ボタンを押すと、ドイツ語の音声で訃報を伝えます)

私は、シェトラーの実演は幸い一度だけ聞くことが出来ました。ソプラノの中村智子さんとテノールのウーヴェ・ハイルマンご夫妻のリサイタルにシェトラーがピアニストとして出演した時で、場所は神楽坂の音楽の友ホールでした。
前半は中村さんの独唱でプフィッツナーの歌曲とドヴォジャークの歌曲集『ジプシーの歌』、後半はハイルマンの独唱でシューマンの歌曲集『詩人の恋』だったと記憶しています。アンコールではハイルマンさんが最近知ったと語った後に楽譜を見ながらシューベルトの二重唱曲「光と愛」を歌いました。
音楽の友ホールは音楽之友社の建物の中にある小ホールで、歌曲を聞くのにはうってつけのこじんまりとした空間です。シェトラーは我先にと自己主張するタイプではなく、歌と一体になることを目指した演奏だったように記憶しています。小さなホールの場合、音量のコントロールが大変ではないかと想像するのですが、そこはさすがベテランのシェトラーのこと、違和感のない響きを聞かせてくれたと記憶しています。

東京文化会館のアーカイブで検索すると、1979年5月に間隔を5日あけてソロ(小ホール)と、シュライアーの共演者(大ホール)として演奏していたようです。
 こちら

シェトラーは、アメリカのアイオワ州ダビューク(Debuque, Iowa)というところに生まれ、1955年にヴィーンに来て音楽学校を4年後に卒業しました。
その後、ヨーロッパを本拠地として演奏活動を行い、独奏者としての活動の他に、ペーター・シュライアー、アンネリーゼ・ローテンベルガー、テオ・アーダム、ズィークフリート・ローレンツなどの名歌手から、イェルク・デームス、ナタン・ミルシテイン、ハインリヒ・シフ、ギドン・クレーメルなどの楽器奏者まで、引く手あまたの共演者として世界中で活動しました。とりわけシュライアーの信頼は厚く、彼の自伝で唯一名前を挙げて賞賛していたピアニストがシェトラーでした(他のピアニストがちょっと可哀そうですが...)。
彼はイェルク・デームスとモーツァルト、ベートーヴェンの連弾作品などを録音したり、モーツァルトの複数のピアノのための協奏曲を演奏したりして結びつきが強かったようです。
日本にもしばしば来て、日本人歌手と共演したり、マスタークラスを開いたりしていたようです。もう少しアンテナをはって、1回だけでなくいろいろ聞きに行きたかったなと後悔しています。

録音ではそれこそいろいろと聞かせていただきました。特にシュライアーとのシューマン歌曲集とローレンツとの一連のドイツリート(特にシューベルト歌曲集)は忘れられません。それからもう一つ、彼のピアニズムに衝撃を受けた録音があるのですが、今書いている最中の歌曲聞き比べの記事の為にあえてここでは書かないでおきます(ちなみに共演者はクヴァストホフです)。シェトラーは確かな安定した音楽で共演者と隙なく一体になる演奏をしているところに魅力を感じます。歌とピアノが丁々発止と渡り合うという演奏とは対極にある、どこまでも音楽にまっすぐな姿勢で、変幻自在に共演者の個性に合わせつつ、しっとりとした自然な味わいを醸し出すシェトラーの演奏は、これからも録音の形で聞き継がれていくことと思います。

彼の訃報を知ったのは昨日(6/28)だったのですが、ここのところたまたまシェトラーの演奏を沢山聞いていたので不思議な気持ちです。2週間ぐらい前からズィークフリート・ローレンツ&シェトラーのシューベルトの録音に再度はまって立て続けに聞いたり、次にブログに投稿しようと思っている聞き比べの曲で、素晴らしいのでぜひ紹介したいと思っていた演奏について下書きしたりしていました。

シェトラーには、ピアニスト、教育者の他にもう一つの顔があって、人形使いというのでしょうか、音楽劇を人形を使ってエンターテイメントとして披露する(Musikalisches Puppencabarett)ということをしていたようです。人形に「糸を紡ぐグレートヒェン」や「シルヴィアに」などを歌わせていた(つまりシェトラーが歌っていた)ようです。ローテンベルガーとロッスィーニの猫の二重唱を歌った動画がありますが、ゲストも交えてこんな形でやったのでしょうか。

●Katzenduett
Norman Shetler and Anneliese Rothenberger performing Rossini's Katzenduett (Cat Duet)

Channel名:herrprofessor31 (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

2022年7月19日ヴィーンのシューベルト教会(Schubertkirche in Wien)で行われた演奏会がシェトラーの最後のリサイタルだったそうで、幸い動画サイトにアップされていました。

●Klavierabend - Norman Shetler 2022 Teil 01

Channel名:Rumen Dobrev (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)
Norman Shetler - KLAVIERABEND
aus der Schubertkirche in Wien 1090
am 19.Juli 2022
Mozart - Sonate „F-Dur, KV332“
Franz Schubert - 3 Moments Musicaux aus D780
Ludwig van Beethoven - Allegro con brio aus der Sonate No. 3 in C Major, Op. 2 No. 3 mit Thomas Toppler (Percussion)

●Klavierabend - Norman Shetler 2022 Teil 02

Channel名:Rumen Dobrev (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)
Norman Shetler - KLAVIERABEND
aus der Schubertkirche in Wien 1090
am 19.Juli 2022
Schumann - "Kinderszenen op. 15"
Debussy “Children's Corner”

シェトラーは初期にソロのLPを録音しており、その中にシマノフスキーのピアノソナタ第3番があります。動画サイトで検索するとそのLPの演奏も今のところ聞けますが、同じ曲のライヴ音源もあがっていたので、そちらを掲載させていただこうと思います。

●Karol Szymanowski Sonata No. 3 op. 36

Channel名:1musikpensionaer (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)
WNCN, live performance at the Metropolitan Museum, Grace Rainey Rogers Auditorium, 1962

もう1つクヴァストホフが巧みにピアノを弾きながらジャズを歌う中、シェトラーがくつろいでダンスを踊るという貴重な動画がありましたので、こちらもぜひ!

●Thomas Quasthoff getting the Blues - Piano 4 Hands

Channel名:Matthias Eichele (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

最後にノーマン・シェトラーの共演者リストを掲載して、彼のご冥福をお祈りすると共にご遺族の方々にお悔やみ申し上げます。リンク先はコンサートで共演した記録、LP・CDで共演した情報、YouTubeにあがっている動画などです。YouTubeの場合はそれと分かるように記載していますので、音にご注意下さい。

●Soprano
Elly Ameling
Judith Blegen
Violet Chang (張縵) (YouTube: Violet Chang Recital リンク先は音が出ますので注意!)
Gudrun Elpert-Resch (YouTube: Schubert: Die Götter Griechenlands D 677 リンク先は音が出ますので注意!)
Junko Fukunaga
Dorothee Fürstenberg
Angela Gheorghiu (リンク先のSuchbegriff(e)欄に検索ワード(例えば、Norman Shetler)を入れて下さい)
Ingeborg Hallstein
Klesie Kelly (リンク先のSuchbegriff(e)欄に検索ワード(例えば、Norman Shetler)を入れて下さい)
Edith Mathis
Tomoko Nakamura (中村智子) (YouTube: Uwe Heilmann tenor Tomoko Nakamura soprano in Kioihall 1998 リンク先は音が出ますので注意!)
Margaret Price
Anneliese Rothenberger
Mitsuko Shirai (白井光子)

●Mezzosoprano
Brigitte Fassbaender
Axelle Gall
Marjana Lipovšek
Monika Piper-Albach
Eva Maria Santana (YouTube: Brahms- Zigeunerlieder リンク先は音が出ますので注意!)
Jutta Seifert
Eugenia Zareska

●Contralto
Taiko Okano (岡野泰子):CD (Schubert, Schumann & Brahms Lieder)

●Tenor
Eberhard Büchner
Niklas Engquist (YouTube: Schumann: Das ist ein Flöten und Geigen リンク先は音が出ますので注意!)
Uwe Heilmann (YouTube: Uwe Heilmann tenor Tomoko Nakamura soprano in Kioihall 1998 リンク先は音が出ますので注意!)
Josef Protschka
Peter Schreier

●Baritone
Christian Boesch
Paul Armin Edelmann (リンク先のSuchbegriff(e)欄に検索ワード(例えば、Norman Shetler)を入れて下さい)
Dietrich Fischer-Dieskau
Wolfgang Holzmair
Josef Loibl
Siegfried Lorenz
Tapio Nurkkala (YouTube: Schubert's 'Forelle' リンク先は音が出ますので注意!)
Hermann Prey
Thomas Quasthoff
Andreas Schmidt
Kazuo Tanaka (田中和男) (YouTube: Schubert: Die schone Mullerin (excerpts) リンク先は音が出ますので注意!)

●Bass-baritone
Theo Adam

●Bass
Peter Edelmann (リンク先のSuchbegriff(e)欄に検索ワード(例えば、Norman Shetler)を入れて下さい)
Matthias Hölle
Peter Lagger

●Boy soprano
Max Emanuel Cencic

●Piano
Jörg Demus
Helmut Deutsch
Markus Hinterhäuser
Rosario Marciano (リンク先のSuchbegriff(e)欄に検索ワード(例えば、Norman Shetler)を入れて下さい)
Robert Pobitschka (YouTube: Schubert f Moll Fantasie リンク先は音が出ますので注意!)
Stefan Soltesz

●Clarinet
Johann Hindler

●Violin
Emil Dekov
Robert Gerle
Thomas Goldschmidt (YouTube: Mozart: Violin Sonata No. 19 in E flat major, K. 302: I. Allegro リンク先は音が出ますので注意!)
Gidon Kremer
Luz Leskowitz
Nathan Milstein
Karen Murray

●Viola
Martin Lemberg

●Violoncello
Julius Berger
Jan Hališka (YouTube: Mozart: Andantino for cello and piano KV 374g リンク先は音が出ますので注意!)
Gerhard Iberer (リンク先のSuchbegriff(e)欄に検索ワード(例えば、Norman Shetler)を入れて下さい)
Leonard Rose (リンク先のSuchbegriff(e)欄に検索ワード(例えば、Norman Shetler)を入れて下さい)
Martin Rummel
Heinrich Schiff

●Contrabass
Franz Bauer
Ludwig Streicher

●Percussion
Thomas Toppler (YouTube: 29:00- Beethoven - Allegro con brio aus der Sonate No. 3 in C Major, Op. 2 No. 3 リンク先は音が出ますので注意!)

●Chorus
St. Florianer Sängerknaben (Franz Farnberger: chorus master)

●Ensemble
The Juilliard String Quartet
Paracelsusquartett
Trio Stradivarius
Wiener Bläserensemble

●Orchestra
Niederösterreichisches Tonkünstlerorchester
Wiener Bachsolisten
Wiener Symphoniker

●Conductors
Josef Krips
Gert Meditz
Carl Melles
Karl Österreicher
Ernst Wedam

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(参考:ノーマン・シェトラーのコンサートアーカイブ等)

Musikverein in Wien

Salzburger Festspiele

Schubertiade Schwarzenberg, Hohenems

Wiener Konzerthaus
(検索結果のURLが表示されない為、上記のURLにアクセスしたらSuchbegriff(e)欄に検索ワード(例えば、Norman Shetler)を入れて下さい)

Norman Shetler (Wikipedia:英語)

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ブラームス「夕闇が上方から垂れ込め(Dämmrung senkte sich von oben, Op. 59, No. 1)」を聴く

Dämmrung senkte sich von oben, Op. 59, No. 1
 夕闇が上方から垂れ込め

Dämmrung senkte sich von oben,
Schon ist alle Nähe fern;
Doch zuerst emporgehoben
Holden Lichts der Abendstern!
Alles schwankt in's Ungewisse,
Nebel schleichen in die Höh';
Schwarzvertiefte Finsternisse
Widerspiegelnd ruht der See.
 夕闇が上方から垂れ込め
 近くにあったあらゆるものがすでに遠い。
 だが最初に空に上がるのは
 夕星の優しい光!
 すべてが定かならぬ中にゆらめき
 霧は丘へとそっとのぼる、
 濃い暗闇を映して
 湖は静止している。

[Nun]1 [am]2 östlichen Bereiche
Ahn' ich Mondenglanz und Gluth,
Schlanker Weiden Haargezweige
Scherzen auf der nächsten Fluth.
Durch bewegter Schatten Spiele
Zittert Luna's Zauberschein,
Und durch's Auge [schleicht]3 die Kühle
Sänftigend in's Herz hinein.
 今や東方に
 月の赤い輝きをほのかに感じる。
 ほっそりとした柳の、毛のごとき細枝は
 近くの大河の上でじゃれている。
 動く影の戯れによって
 月の魅惑的な明かりが震え、
 目を通って冷気が
 慰撫しながら心に忍び込む。

1 Diepenbrock: "Dort,"
2 some recent editions of Goethe's work have "im"
3 Grimm: "zieht"

詩:Johann Wolfgang von Goethe (1749-1832), no title, appears in Chinesisch-deutsche Jahres- und Tageszeiten, no. 8

曲:Johannes Brahms (1833-1897), "Dämmrung senkte sich von oben", op. 59 (Acht Lieder und Gesänge) no. 1 (1871), published 1880 [ low voice and piano ], Leipzig, Rieter-Biedermann

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ゲーテは1827年にヴァイマル近郊の別荘で1ヵ月近く過ごし、その際に「中国風ドイツ歴(Chinesisch-deutsche Jahres- und Tageszeiten)」という14編からなる連詩の多くを書きます。その8番目に置かれたのが、この「夕闇が上方から垂れ込め(Dämmrung senkte sich von oben)」です。

主人公は木々の茂る湖のほとりにいて、日が落ちるにつれ、これまではっきり見えていたものが徐々にぼんやりとし始めます。夜霧も立ち込め、湖に目をやると星の光がゆらゆらと揺れます。月が姿をあらわし、柳の枝が湖面に触れて戯れている間からその月の光が差し込み、夜の冷たい空気が主人公の目に心地よい慰めをもたらし、心にしみわたるという内容です。

1_20240615183401 

ブラームスは3/8拍子で作曲しました。ゲーテの詩が各行、強弱強弱...と規則的に繰り返していく為、ブラームスも詩のリズムに合わせて、基本的には強音節を4分音符、もしくは8分音符2つ分にあてて、弱音節を8分音符にしています。テキストの区切り(例えば第1節の第4行、第8行)の最後の3音節は音価を2倍にしてフレーズがいったん終わることを印象付けます。

ピアノ前奏は右手の8分音符2つ+8分休符と左手のバス音で、静かに夕闇が帳を下すさまを描いているかのようです。歌が始まってもしばらくはこの音型が続きますが、第3行で星の光が出てくるくだりで右手がシンコペーションのリズムになり、左手のリズムと交互に刻むことで静謐な中に動きが感じられます。

第1節の前半4行が終わるとピアノの右手が十六分音符の旋律的な音型を奏で、左手と交代しながら歌の対旋律のような響きとなります。ここは霧の中を手探りで歩いているようなイメージでしょうか。
その後、再び、右手と左手のリズムのずれる音型で第1節を締めます。

第2連への橋渡しとなる間奏は前奏の音楽が再び使われますが、間奏の締めくくりで短2度(ト(g)と変イ(as))の不協和な響きがあらわれ、聞き手を驚かせます。

2_20240615183401 

第1節では歌声部は不安定な逡巡を感じさせる進行が多かったのですが、第2節の最初の2行、月が出るくだりでは上行していきます。
その後再び第1節のような逡巡するような上下の動きに戻りますが、5行目で調号がこれまでのフラット2つからシャープ1つになり、ト長調の響きに代わります。ここから最後まで、夜の冷気が主人公を癒すというテキストを反映するかのように穏やかさを保ったまま曲を締めくくります。

最後の"Herz hinein"は2種類の旋律があり、1回目の"Herz hinein"の進行から考慮すると、低く下がっていく方の旋律がブラームスの本来の意図に近いのかもしれません。低いト音(g)は高声歌手にはきついというブラームスの思いやりでおそらく上行して1オクターブ上のト音に向かうヴァリアントが追加されたものと想像されます。ただ、個人的な意見ですが、ここは上行していく旋律の方が聞いていて魅力的に感じられました。シューマンの楽譜などではヴァリアントは小さい音符で書かれていたりしますが、このブラームスの旧全集では音符の大きさの違いがなく、ブラームスはどちらでもいいよと言っているのかもしれません。

3_20240615183701  

3/8拍子
ト短調(g-moll)
Langsam(ゆっくりと)

●詩の朗読(ユルゲン・ゴスラー)
JOHANN WOLFGANG VON GOETHE - DÄMMRUNG SENKTE SICH VON OBEN (Rezitation: Jürgen Goslar)

速めの朗読で若干追いにくいかもしれませんが、朗読者の息遣いや表現を味わうのも興味深いと思います。

●エリー・アーメリング(S), ルドルフ・ヤンセン(P)
Elly Ameling(S), Rudolf Jansen(P)

私はこの曲をアーメリング&ヤンセンの津田ホールでのリサイタルで初めて聞き、その後Hyperionに録音されたCDで繰り返し聞いて、渋さの中の魅力を教えてもらった思い出の演奏です。どの言葉も音もなおざりにすることない細やかなアーメリングの歌唱とヤンセンのどこまでも彼女の意図とぴったり一致したピアノに感銘を受けます。

●マルリス・ペーターゼン(S), シュテファン・マティアス・ラーデマン(P)
Marlis Petersen(S), Stephan Matthias Lademann(P)

ペーターゼンのアンニュイな響きが魅力的です。ラーデマンのピアノも歌と一体になって情景を描いていました。

●ロベルト・ホル(BSBR), ルドルフ・ヤンセン(P)
Robert Holl(BSBR), Rudolf Jansen(P)

ホッターの弟子でもあったホルは深々とした響きで、黄昏時の雰囲気を見事に表現していました。

●スィルヴィア・シュリューター(CA), ルドルフ・ヤンセン(P)
Sylvia Schlüter(CA), Rudolf Jansen(P)

シュリューターのコントラルトの響きが日の沈む時間帯の様子を落ち着いて表現していました。上記のアーメリングとホルの音源でもピアノを弾いているルドルフ・ヤンセンの、それぞれのオランダ人歌手に応じた優れた表現を聞き比べてみるのも一興かと思います。

●ハンス・ホッター(BSBR), ミヒャエル・ラウハイゼン(P)
Hans Hotter(BSBR), Michael Raucheisen(P)

30代のホッターはすでに深みもありますが、声の艶が美しいですね。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), ダニエル・バレンボイム(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Daniel Barenboim(P)

渋みを増した時期のF=ディースカウの歌唱と、バレンボイムの二重奏のようによく歌うアンサンブルは、この作品の魅力を見事に引き出していたと思います。

●ファニー・ヘンゼル・メンデルスゾーン作曲による「夕闇が上方から垂れ込め」
[Fanny Mendelssohn-Hensel]: Dammrung senkte sich von oben (Dusk Sinks from Above)
Christina Hogman(S), Roland Pöntinen(P)

メンデルスゾーンの姉ファニーは優れた歌曲を書いています。この作品も静謐な響きが美しいです。

●オットマー・シェック作曲による「夕闇が上方から垂れ込め」
Schoeck: 8 Lieder nach Gedichten von Goethe, Op. 19a - No. 2, Dämmrung senkte sich von oben
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Margrit Weber(P)

スイスの作曲家シェックによる作品です。ピアノの細かい音型は星や月がちらちら輝いているさまをあらわしているのでしょうか。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

ゲーテ全集 2 詩集 新装普及版(1980年初版、2003年新装普及版発行 潮出版社)松本道介他9名訳(※「Dämmrung senkte sich von oben(夕やみがおりてきた)」の訳は内藤道雄)

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フィッシャー=ディースカウ&アーウィン・ゲイジのヘルシンキ・フェスティヴァル・ライヴ(1972年)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau)は150人以上のピアニストと組んだとかつて述懐していましたが、その中でスタジオ録音では共演していないピアニストも沢山います。その一人がアーウィン・ゲイジ(Irwin Gage)です。ゲイジの追悼放送でフィッシャー=ディースカウとのシューベルト「魔王」のライヴ音源が流れたことがありましたが、今回アンナ・アマーリア、ブゾーニ、レーガー、ライヒャルト、R.シュトラウス、ツェルターのゲーテ歌曲のヘルシンキ・ライヴ音源がアップされているサイトを見つけました。プログラミングはORFEOレーベルのカール・エンゲルとのライヴCDと同じと思われます。

こちら(mp)

1972, Helsinki Festival

Dietrich Fischer-Dieskau, baritone
Irwin Gage, piano

Anna Amalia von Sachsen-Weimar: Auf dem Land und in der Stadt

Johann Friedrich Reichardt: Beherzigung "Feiger Gedanken"

Carl Friedrich Zelter: Gleich und gleich

Richard Strauss: Gefunden, Op. 56,1

Max Reger: Einsamkeit, Op. 75,18

Ferruccio Busoni: Zigeunerlied

ディースカウとゲイジはお互いにあまり良好な関係ではなかったようで、1972年の4都市のツアー以降は再び共演することはなかったようです(こちらの記事参照)。ただ、貴重な記録であることは間違いなく、ファンにとってはお宝音源ですので、じっくり楽しみたいと思います。このサイト、何人かの音楽家のライヴ音源が他にも聞けるようで、ディースカウについては、ムーアとの1962年ロンドンでのブゾーニ歌曲や、コダーイ作品の作曲家自身の指揮との1960年共演録音もアップされていました。これから徐々に増えていくことを期待したいと思います。

(参考CD)カール・エンゲルとのゲーテ歌曲集(ORFEO)

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エリーの要点「なぜ歌の特徴にほとんど言及しないのか」(Elly's Essentials; “Why so few particular features”)

●Elly's Essentials; “Why so few particular features”

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音声が出ます。)

なぜ私がいつも歌の特徴にあまり言及しないのだろうと不思議に思った方もいるでしょう。

残念ながらどんな歌曲でも20分以上費やすのは困難です。

でももっと重要なことは、私のこの短いビデオから触発されて、学生、教師や他のすべての視聴者がより多くの特徴を自ら探して見つけることを望んでいるのです。

芸術歌曲と詩は無限の広さをもっていると同時にとても細やかなものです。

ヨハネス・ブラームスの歌曲「Wie Melodien zieht es mir leise durch den Sinn(メロディーのようにそれはわが心にそっと触れます)」

Brahms: Wie Melodien zieht es, Op. 105/1
 ブラームス:メロディーのように 作品105/1

Wie Melodien zieht es
Mir leise durch den Sinn,
Wie Frühlingsblumen blüht es,
Und schwebt wie Duft dahin.
 メロディーのようにそれは
 私の感覚をそっと通り抜けます、
 春の花々のようにそれは花咲き
 香りのように漂うのです。

Doch kommt das Wort und faßt es
Und führt es vor das Aug',
Wie Nebelgrau erblaßt es
Und schwindet wie ein Hauch.
 しかし言葉が来て、それをつかみ、 
 目の前にもってくるやいなや、
 かすんだ霧のようにそれは青ざめ
 吐息のように消えてしまうのです。

Und dennoch ruht im Reime
Verborgen wohl ein Duft,
Den mild aus stillem Keime
Ein feuchtes Auge ruft.
 それでも韻律の中に
 ひそかに香りは残り、
 それを静かな芽から穏やかに
 濡れた瞳が呼び起こすのです。

詩:クラウス・グロート(Klaus Groth: 1819-1899)

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エリー・アーメリング(Elly Ameling)の「Musings on Music」シリーズ:ラヴェル-歌曲集『シェエラザード(Shéhérazade)』~2.「魅惑の笛(La flûte enchantée)」

●Musings on Music by Elly Ameling - Ravel, Shéhérazade - La Flute Enchantee

Channel名:Elly Ameling (オリジナルのサイトはこちらのリンク先です)

アーメリングによる説明
メロディー(mélodie)はフランスの作曲家による歌曲、もしくはフランス語のテキストによる歌曲を指します。
これまでの動画ではリート(Lied)、つまりドイツ歌曲を扱いました。
今回、この「Musings on Music」シリーズではじめてフランス歌曲を扱います。

私が選んだのはモリス・ラヴェルの歌曲集『シェエラザード』からの1曲です。シェエラザードは『千夜一夜物語』のヒロインかつナレーターです。もともと1000もの東洋のおとぎ話の歴史的コレクションでした。

20世紀初頭にトリスタン・クリングゾルがオリジナルの東洋の話をもとにした詩を出版しました。ラヴェルはクリングゾルの詩の中から3篇を選びました。
私は今回第2曲の「魅惑の笛 (La flûte enchantée)」を扱います。若い女性の使用人が歌う設定です。

1:55-4:49 「魅惑の笛」の音源が楽譜付きで流れる。演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏(アーメリング、サンフランシスコ交響楽団、エド・ドゥ・ヴァールト指揮)

詩と英訳の朗読

前奏はピアニッシモで、とてもゆっくり(Très lent)です。
弦は弱音器を付けてトレモロを刻む一方、フルート独奏が3小節続き、特に3小節目の9連符のフレーズは自由に流れているように聞こえなければなりません。

7:06- 前奏(演奏はオケ伴奏、楽譜もオケ伴奏)

この後歌が柔らかく(très doux)始まります。
なぜなら歌詞がこう言っているから「影は心地よく、わが主人は眠っている」

7:43- 前奏から歌の最初の3行まで(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

ここで主人の鼻、帽子、ひげについて述べられます。
おそらく口髭(moustache)でしょう。

次に、ここで音符に示された通りに演奏しているか聞いてみましょう。また、いかにこのソプラノがそれぞれの小節で言葉を完璧に分けているか。

詩人のクリングゾルはこの詩をラヴェルに語って聞かせました。
彼が韻律(つまりリズム、アクセント、イントネーション)を把握できるように。
ディテールを理解して、ラヴェルはリズム、メロディー、ハーモニーを作り上げました。

10:12-10:48 前奏から(演奏はオケ伴奏、楽譜もオケ伴奏)(シュザンヌ・ダンコ(S)、スイス・ロマンド管弦楽団、エルネスト・アンセルメ(C))

この演奏は50数年前私が「シェエラザード」を勉強した時に触発された演奏でした。

少女が「私は起きていて、愛する人のフルートを聞いている」と言ったとき、フルートがいかに生き生きと演奏するかに注目して聞いてみてください。

11:26-12:12 歌の3行目から7行目まで(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

そして興奮は突然止まり、音楽はゆっくりのテンポに戻ります。

少女はフルートを吹く男性と引き離されていることを悟っているようです。
彼女が窓のそばに近づき、フルートから聞こえた音はミステリアスなキスのようだと感じます。

12:45-13:59 8行目から最後まで(ダンコの歌唱)

後奏最後の3小節は前奏ですでに聞いたものです。

この詩と音楽の核心は愛の神秘だと思います。

今は自身の個性を演奏に反映しすぎてはならないのです。

神秘(Mystery)というものは私たち自身よりも大きいのではないでしょうか。

14:50- 全部の演奏(アーメリングの歌唱)(演奏はオケ伴奏、楽譜はピアノ伴奏)

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ルドルフ・ヤンセン「デュオピアニスト」(Rudolf Jansen ‘Duo pianist’)(オランダネットラジオ局concertzender)

オランダネットラジオ局concertzenderでは、歌曲の特集など1時間様々な音楽を流してくれます。以前にはアーメリングの特集なども放送されて、今でも聞くことが出来るようになっています。歌曲ファンにとっては貴重で良質なラジオ局だと思います。

そんな中、5月26日に放送されて、こちらのリンク先で聞けるようになっているのが、今年2月に84歳で亡くなったルドルフ・ヤンセン(Rudolf Jansen)の特集です。あまたの歌曲ピアニストの中でも、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカなどのピアニストは注目を浴びることも多くニュースにもなりやすいのでしょうが、オランダが生んだヤンセンについてはオランダ国外ではほとんど報道されず(日本の音楽メディアだけでなく、アメリカのメディアでさえ!)、寂しい思いをしていましたが、さすがお国のラジオ局は静かに特集を組んでくれて遠い国のファンの渇望を癒してくれました。
このラジオ局は期間限定ではなく、いつでも聞けるので、よろしければお時間のある時に聞いてみてください。アナウンスはオランダ語ですが、様々な歌手と共演したヤンセンの驚異的に幅広い対応力をもった演奏を楽しめると思います。ちなみに46分頃にはヤンセンのピアノ独奏も聞けます(バスバリトンのロベルト・ホルの作曲した間奏曲Ⅰ)。

1.ドビュッシー/それは物憂い恍惚(歌曲集『忘れられた小歌』より)(ルドルフ・ヤンセン(P), マルフレート・ホーニフ(S))

2.ディーペンブロック/旅への誘い(ルドルフ・ヤンセン(P), クリスタ・プファイラー(MS))

3.ブラームス/使いOp.47/1(ルドルフ・ヤンセン(P), エリー・アーメリング(S))

4.コズマ/枯葉;ブラームス/メロディーのようにOp.105/1;憩え、かわしい恋人よOp.33/9(歌曲集『美しいマゲローネからのロマンス』より);甲斐なきセレナーデOp.84/4;私たちは歩き回ったOp.96/2(ルドルフ・ヤンセン(P), エリー・アーメリング(S))

5.シューベルト/巡礼の歌D789(ルドルフ・ヤンセン(P), ロベルト・ホル(BSBR))

6.ロベルト・ホル/間奏曲Ⅰ(歌曲集『春の旅』より)(ピアノ独奏)(ルドルフ・ヤンセン(P))

7.プフィッツナー/別れOp.9/5(ルドルフ・ヤンセン(P), アンドレアス・シュミット(BR))

8.シューベルト/水の上で歌うD774(ルドルフ・ヤンセン(P), ハンス・ペーター・ブロホヴィツ(T))

9.グリーグ/海を見ればEG 121(ルドルフ・ヤンセン(P), クリスタ・プファイラー(MS))

10.シューマン/今あなたは私にはじめて苦痛を与えました(後奏のみ)(歌曲集『女の愛と生涯』より)(ルドルフ・ヤンセン(P)と思われる(サイトに記載なし))

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リリ・ブランジェ((Lili Boulanger):歌曲集『空の晴れ間(Clairières dans le ciel)』

ここ数年、いろいろな歌曲のリサイタル映像などでよく取り上げられる曲の中に、フランシス・ジャム(Francis Jammes: 1868-1938)のテキストにリリ・ブランジェ(Lili Boulanger: 1893-1918)が作曲した13曲からなる歌曲集『空の晴れ間(Clairières dans le ciel)』という作品が挙げられます(抜粋で演奏されることが多いようですが全曲でも演奏されます)。
ちなみに「clairière」というフランス語は森林の空き地を意味するようで、空にあてはめると「どんよりとした雲がそこのところだけ切れて抜けるような青空が広がっている」という藤井宏行氏の説も納得できますし(「詩と音楽」の藤井宏行氏の解説)、「神のうちに(En Dieu)」という詩の元のタイトルでもあることから「天の入り口が開く」という斉諧生氏の説も説得力があります(「斉諧生音盤志」中の「空のひらけたところ」訳詞)。
いずれにしても先が見通せない雲の中からすっぽりと開けたスペースのことを指しているようですね。それが神様のもとへ向かう空間なのか、雲の晴れ間なのかは読む人の解釈によるのでしょう。ブランジェは『空の晴れ間(Clairières dans le ciel)』という詩集の中の「悲しみ」という連詩から抜粋して作曲したそうで、恋する女性との思い出と別れた後の心情が描かれています。
藤井氏、斉諧生氏(手塚伸一氏の訳)それぞれのサイトに掲載された訳詞のリンクを貼っておきます。

「詩と音楽」空の広がり(藤井宏行氏訳・解説)

「斉諧生音盤志」「空のひらけたところ」訳詞(斉諧生氏解説、手塚伸一氏訳)

リリ・ブランジェは有名な教育者ナディア・ブランジェ(ドルトン・ボールドウィンもナディアに師事しました)の妹で、幼少期から病弱で24歳の若さで早世するのですが、音楽の才能は群を抜いていたようで、ローマ大賞を受賞し、ヴィエルヌやフォレに師事しています。

歌曲集『空の晴れ間』は亡くなる5年前に着手され、4年前に完成しました。この歌曲集は男性からの恋する女性への思いを描いていますが、女声によって歌われるとより官能的な趣が増すように感じられます。ドビュッシーの優れた歌曲に勝るとも劣らない魅力的な歌曲集だと思います。

●リリ・ブランジェ:歌曲集『空の晴れ間』
Lili Boulanger - Clairières dans le ciel (1914)
Heidi Grant Murphy, soprano
Kevin Murphy, piano

Channel名:Cmaj7(オリジナルのサイトはこちらのリンク先です。音が出ますので要注意!)

00:00 1. Elle était descendue au bas de la prairie
02:11 2. Elle est gravement gaie
04:08 3. Parfois, je suis triste
07:57 4. Un poète disait
10:04 5. Au pied de mon lit
12:41 6. Si tout ceci n'est qu'un pauvre rêve
15:32 7. Nous nous aimerons tant
18:39 8. Vous m'avez regardé avec toute votre âme
20:13 9. Les lilas qui avaient fleuri
23:14 10. Deux Ancolies
25:05 11. Par ce que j'ai souffert
28:22 12. Je garde une médaille d'elle
30:31 13. Demain fera un an

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(参考)

Clairières dans le ciel (Wikipedia:仏語)

リリ・ブーランジェ (Wikipedia:日本語)

Lili Boulanger (Wikipedia:仏語)

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シューベルト/「春の憧れ」(Schubert: Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3)を聞く

Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3
 春の憧れ

1.
Säuselnde Lüfte
Wehend so mild,
Blumiger Düfte
Athmend erfüllt!
Wie haucht Ihr mich wonnig begrüßend an!
Wie habt Ihr dem pochenden Herzen gethan?
Es möchte Euch folgen auf luftiger Bahn!
Wohin?
 ざわめく風が
 穏やかに吹き
 花の香りが
 放たれ いっぱいになる!
 きみは僕に喜んで挨拶をし、息を吐きかける!
 きみはこのどきどきする心に何をしたんだい?
 風の道を通ってきみに付いて行きたい!
 でもどこへ?

2.
Bächlein, so munter
Rauschend zumal,
[Wollen]1 hinunter
Silbern in's Thal.
Die schwebende Welle, dort eilt sie dahin!
Tief spiegeln sich Fluren und Himmel darin.
Was ziehst Du mich, sehnend verlangender Sinn,
Hinab?
 小川は、こんなに元気に
 いっせいに音を立てながら
 谷へと
 銀色に輝き下ろうとする。
 漂う波、それはあちらへと急いで行きたいのだ!
 野原や空が水底深くに映っている。
 どうやってきみは僕を引っ張っていくのか、切望して、欲しがる気持ちよ、
 向こうへ下りながら?

3.
Grüßender Sonne
Spielendes Gold,
Hoffende Wonne
Bringest Du hold.
Wie labt mich Dein selig begrüßendes Bild!
Es lächelt am tiefblauen Himmel so mild,
Und hat mir das Auge mit Thränen gefüllt! -
Warum?
 挨拶する太陽が
 金色にゆらめく、
 望みをもつことの喜びを
 きみは優しくもたらしてくれる。
 きみが幸せに満ちて迎えてくれる姿がどれほど僕を元気づけることか!
 藍色の空はとても穏やかに微笑み、
 僕の目は涙でいっぱいになった!
 でもどうして?

4.
Grünend umkränzet
Wälder und Höh'!
Schimmernd erglänzet
Blüthenschnee!
So dränget sich Alles zum bräutlichen Licht;
Es schwellen die Keime, die Knospe bricht;
Sie haben gefunden was ihnen gebricht:
Und Du?
 周囲を緑に飾るのは
 森や丘!
 きらきら輝くのは
 雪のように舞う花々!
 あらゆるものが花嫁の放つ光へと突き進む、
 芽はふくらみ、蕾は開き、
 彼らに足りなかったものを見つけたのだ、
 ではきみはどうなんだ?

5.
Rastloses Sehnen!
Wünschendes Herz,
Immer nur Thränen,
Klage und Schmerz?
Auch ich bin mir schwellender Triebe bewußt!
Wer stillet mir endlich die drängende Lust?
Nur Du [befreist]2 den Lenz in der Brust,
Nur Du!
 絶え間ない憧れ!
 欲する心、
 常に涙、
 嘆き、苦しみばかりなのか?
 僕だって衝動が膨らんでくるのを自覚している!
 僕の急き立てられた欲望をようやく鎮めてくれるのは誰なのか?
 きみだけが胸の中に春を解き放ってくれる、
 きみだけなのだ!

1 Rellstab: "Wallen"
2 Rellstab: "befreiest"

詩:Ludwig Rellstab (1799-1860), "Frühlings-Sehnsucht"
曲:Franz Peter Schubert (1797-1828), "Frühlingssehnsucht", D 957 no. 3 (1828), published 1829 [voice and piano], from Schwanengesang, no. 3, Tobias Haslinger, VN 5370, Wien

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シューベルトの死後『白鳥の歌 D957』として出版された歌曲集の第3曲に置かれた「春の憧れ」は、その名の通り、春がやってくる期待感、いてもたってもいられない焦燥感をこれ以上ないぐらい見事に描いた作品です。
シューベルトは亡くなる直前にルートヴィヒ・レルシュタープの詩にまとめて作曲しています。それらは兵士の孤独感、甘美な恋の歌、疎外感でいっぱいの心情、慣れ親しんだものからの別れ等多岐にわたり、それぞれが晩年(というにはあまりにも若すぎますが)のシューベルトの熟した技法で作曲されています。

この第3曲の詩を見ると春の到来と同時に、第4連にあるように「足りなかったもの(was ihnen gebricht)」つまり伴侶を見つけるということが主人公にとっての春であることが分かります。風や花や小川や太陽が主人公の心の中の衝動を引き起こそうとします。最終連で主人公は僕にも衝動が膨らんできて、それを鎮めてくれるのは「きみだけ(nur du)」なんだと気づきます。春が恋する気持ちを呼び覚ます、なんともロマンティックな詩ですね。

シューベルトはこの春に「突き動かされる」心情に焦点を当てて速いスピードで表現しています。歌声部は、詩のリズムに合わせた「♩♪♪」のリズムが印象的です。ちなみに第1連から第4連は有節形式で、詩句の音節の数に応じた多少の音価の違いがあるのみです(ちなみに旧全集の楽譜ではリピート記号で第1~4連を繰り返していますが、初版ではすべての節を記載していました)。最終連(第5連)でこれまでの変ロ長調(B-dur)から変ロ短調(b-moll)に転調して、主人公が憧れて満たされないあまりに、泣いたり嘆いたり苦しんだりするだけなのかとこぼす箇所の辛さを表現します。その後、もう一度同じ個所を繰り返す時には変ニ長調(Des-dur)に転調して、主人公の一瞬の気持ちの陰りも衝動の力によってポジティブに変わっていくことを示しているように思います。その後、もとの変ロ長調に戻りますが、歌の最後"Nur Du!"の"Du"をソの音で終わらせて、「きみ」に呼びかけているような効果を感じさせます。ピアノ後奏も変ロ長調のまま進みますが、最後の主和音の一つ前のIVの和音の第3音をフラットで半音下げてちょっとした陰りを加えるところなど「きみ」への一抹の不安が表現されていて、心憎い締めくくりとなっています。

●冒頭部分:初版(Vienna: Tobias Haslinger, n.d.[1829])
Fruhlingssehnsucht-first-edition 

2/4拍子
変ロ長調 (B-dur)
Geschwind (速く)

●ヘルマン・プライ(BR), ヴァルター・クリーン(P)
Hermann Prey(BR), Walter Klein(P)

「春の憧れ」は7:26からです。プライは数回『白鳥の歌』を録音していますが、第1回目のこの録音は忘れられない名盤です。若かりしプライは勢いをつけて威勢よく歌っています。他の時期にはない全霊を込めた熱唱でただただその熱気に引き込まれます。クリーンもプライの熱気を生かした雄弁な演奏です。

●ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), アルフレート・ブレンデル(P)
Dietrich Fischer-Dieskau(BR), Alfred Brendel(P)

年を重ねた人にももちろん平等に春はやってきます。円熟期のディースカウが若い頃に劣らず春への期待感をめりはりつけて歌っているところに感銘を受けます。ブレンデルの雄弁なリズム感も素晴らしいです。

●ハンス・ホッター(BSBR), ジェラルド・ムーア(P)
Hans Hotter(BSBR), Gerald Moore(P)

温かみのある歌とピアノのコンビです。最後の「きみだけなのだ!(Nur du!)」に込められた寂寥感が印象的です。

●ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)
Peter Schreier(T), Walter Olbertz(P)

シュライアーの爽やかな美声と、涼風が吹き渡るような軽快なオルベルツのピアノが素晴らしいです!

●マティアス・ゲルネ(BR), クリストフ・エッシェンバハ(P)
Matthias Goerne(BR), Christoph Eschenbach(P)

ゲルネはこういう軽快な曲にも違和感なく対応できるのが凄いです。

●ジェラール・スゼー(BR), ドルトン・ボールドウィン(P)
Gérard Souzay(BR), Dalton Baldwin(P)

スゼーの歌は気品のある優しい響きがこの曲のもつ爽やかさとぴったり合致していて魅力的でした。ボールドウィンのピアノが押し寄せる焦燥感を素晴らしく表現していました。3,4節を省略していたのがもったいないぐらい、もっと聞いていたい演奏でした。

●クリストフ・プレガルディアン(T), アンドレアス・シュタイアー(Fortepiano)
Christoh Prégardien(T), Andreas Staier(Fortepiano)

さすがプレガルディアン!第2節以降、かなり装飾・変更をしています。もちろんシュタイアーも第3節以降、同様に変更を加えています。ぼーっと聞いていても、急に聞きなれない音が聞こえるので、一瞬で目が覚めます。最初の4節は完全な有節形式なので、こういう変更は他のアーティストもやりやすいのでは。

●アンドレ・シュエン(BR), ダニエル・ハイデ(P)
Andrè Schuen(BR), Daniel Heide(P)

新世代のリート歌手シュエンが力強さと丁寧さを両立させた歌を聞かせています。ハイデも丁寧な演奏でした。

●エリー・アーメリング(S), ドルトン・ボールドウィン(P)
Elly Ameling(S), Dalton Baldwin(P)

アーメリングは各節最終行の2音節(Wohin?など)の陰りを帯びた表情が絶妙です。

●ヤン・コボウ(T), クリスティアン・ベザイデンホウト(Fortepiano)
Jan Kobow(T), Kristian Bezuidenhout(Fortepiano)

古楽を得意とするコボウらしく新鮮な歌唱でした。ベザイデンホウトのフォルテピアノはいろいろ仕掛けていて新しい側面を引き出していたように感じました。

※有名な「白鳥の歌」の中の1曲なので、他にも沢山の録音があります。皆さんのお気に入りを探してみるのもいいかもしれません。

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(参考)

The LiederNet Archive

IMSLP (楽譜)

Schubertlied.de (Frühlingssehnsucht, D 957, No. 3)

Wikipedia - ルートヴィヒ・レルシュタープ

Wikipedia - Ludwig Rellstab (Dichter) (ドイツ語)

Wikipedia - Ludwig Rellstab (英語)

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(CD)

ヘルマン・プライ(BR), ヴァルター・クリーン(P)

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(BR), アルフレート・ブレンデル(P)

ハンス・ホッター(BSBR), ジェラルド・ムーア(P)

ペーター・シュライアー(T), ヴァルター・オルベルツ(P)

マティアス・ゲルネ(BR), クリストフ・エッシェンバハ(P)

クリストフ・プレガルディアン(T), アンドレアス・シュタイアー(Fortepiano)

アンドレ・シュエン(BR), ダニエル・ハイデ(P)

エリー・アーメリング(S), ドルトン・ボールドウィン(P)

ヤン・コボウ(T), クリスティアン・ベザイデンホウト(Fortepiano)

ジェラール・スゼー(BR), ドルトン・ボールドウィン(P)

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